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Level.066 複雑な暗号文


 それと同時に、近衛と柳沢のランウェイを眺めていた観客の内から飛び出して来た女子が数名、柳沢に向かって話しかけて来たので、そちらの対応をする事にした。


「──あの! ツキちゃんですよね!」


「だよーん!」


「きゃーっ! やっぱりー!」

「一緒に写真いいですか!」


「モチモチの木よー!」


 近衛は近衛でえげつない程の注目を浴びているが、柳沢美月もまた、中高生の間ではカリスマ的な人気を誇るファッション系インフルエンサー。


 街中を普通に歩いているだけであれば気付かれる事は少なくとも、異様に目立つ近衛の腕に抱き着いて歩くような真似をすれば、気付く者は余裕で気付く。


 そんな訳で、有名インフルエンサーの『ツキ』こと柳沢美月に気が付いたファンが、話しかけてきたわけだが──。


「ってちょっとー! 先先行かないで下さいってばー」


 ファンの子に話しかけられた柳沢が一瞬動きを止めてファンサ対応をしようとするも、近衛がそんな意味不明な対応に付き合うはずが無い。


「その手を離せ、柳沢」


「なんでっ、ビクともしないんです、かっ!」


 腕にしがみ付いた柳沢が近衛を立ち止まらせようと踏ん張るも、そのままズルズルと引きずられるように移動する羽目に。


「我が覇道は誰にも阻めぬ。この俺の歩みを止めたくば4tトラックでも使って牽引する事だな」


「トラック一台で止まる覇道ならっ、今止まってくれても! いいじゃ、ないですかー!」


「俺を相手に言うようになったな。ふむ。いいだろう、許す。目的を言え」


「目的も何もないですって。ファンの子と写真撮るから待って下さいって話をしてるんじゃないですか」


「何故それで俺が待たねばならんのだ。写真を撮るなら勝手にしろ」


「……って言うか、副会長めっちゃ目立ってますけどいいんですか?」


「何を言うかと思えば。俺はただ街を歩いているだけだ。目立っているのは貴様のせいではないか」


「そんなわけないじゃないですか。夏休みになってからこの辺にとんでもないイケメンが出没するって、今ネットの一部界隈で話題になってますけど。お家の人に何か言われたりしてないんですか?」


「それこそ、そんな訳があるか。俺ただネカフェを利用しているだけだ。目立つような真似をした覚えはない」


「そんな訳ありますから。……え、て言うか、この人だかり見ておかしいとか思わないんですか?」


「何処に人だかりがある。馬鹿も休み休み言え、柳沢」


 柳沢に促された近衛が周囲を見渡せば、老若男女が自分を取り囲んでいるだけのいつも光景が広がっているだけ。


 まるでハリウッドスターが来日した時の空港のような、所々で黄色い歓声が上がっているその光景を見ても尚、近衛は柳沢の事を珍獣でも見るかのような不思議な目で見ていた。


 そんな視線を受けた柳沢は思った、そう言えばこういう人だったな、と。


「(アイドルの追っかけじゃないんですから、こんなの明らかに異常だと思うんですけど。これ、たぶん、アレだよね。周りに居る人達の事を同じ人間として認識してないとかそう言う感じだよね)」


 流石は柳沢美月、正解と言わずとも不正解とも言い切れない。


「(柳沢め、日本人口が何人いると思っている。民草の営みを見て人だかりなどと抜かすとは、少々平民の目線が足りぬのであろうな。街に人が居るのは当たり前の話だ。鹿謳院と言い、柳沢と言い、普段貸し切りの施設ばかりを利用しているせいでそのような一般常識すら持ち合わせておらぬとはな。これが義務教育の敗北と言うものか。嘆かわしい事だ)」


 近衛目線では、これを人だかりとは認識していなかった。


 街に人が多いのは当たり前だろう、くらいの認識。


 それ以上でもそれ以下でもない。


 そうして、小馬鹿にした態度で柳沢に突っ込みを入れた近衛だったのだが──。


「──なん……だと……? これが普通ではない、のか?」


 その後、この状況を普通だと思っている近衛に危機感を覚えた柳沢の説明により、異常性を理解した近衛は、翌日からは軽い変装をして外出するようになったとか、ならなかったとか。


 セレナ:ダリちゃん知ってる?

 マンダリナ:何がだ?

 セレナ:街って人が沢山いるんだよ?

 マンダリナ:うん? うん。そうだな。え、どう言う事?

 セレナ:私はね、街に沢山人が居るのは普通だって思ってたんだけどね

 マンダリナ:うん

 セレナ:思ってた以上に人がいっぱい居たんだ!

 マンダリナ:おお、なるほどな!


 何を言っているのか意味不明だけど、とりあえずセレナが言う事は全肯定するマンダリナこと鹿謳院だが──。


「何かの暗号……でしょうか?」


 ゲーム画面の前ではセレナから発せられた難解な文章に頭を悩ませていた。

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