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Level.112 ワンミスが命取りな戦場へ


 バニースーツ案が撤廃されたとなれば、急いで次の衣装を決めなければならない。そんなわけで、場所は昼休みの統苑会執務室。


 集まった九名でサクっと衣装を決める事になったのだが──。


「あたしもバニースーツ着てみたかったのに、残念ね~」


 と言う越智の台詞を聞いた時、その場に居た全員が安堵していた。


「あ、あなた、バニースーツを着るつもりでしたの?」


「Non、桜花ちゃん。あたしの事はリョウちゃ──」


「そんな事より早く決めますよ。私と庶務橘は暇ではないんです」


「私は! 何でも大丈夫です! でも、出来れば可愛いお洋服が良いです!」


「あ、僕も、その、別に何でも、着ろと言われたものをだけ着るんで……ははは……」


 執務室は元々統苑会の九名全員で仕事が出来る広さが確保されているので、九人集まった所で物理的な狭さは全くなく、皆が好きな場所で昼食を取っても全く手狭にはならない。


 とは言え、統苑会に所属する者は存在感がデカイので、精神的には窮屈に感じてしまう者は居るかもしれない。


 近衛の執務机の近くに座って大人しくおにぎりを食べている橘のように、終始無言な者もいる。


「何でもよい。誰か意見があればさっさと言え、俺の昼休みは読書の時間と決まっている」


「副会長もうご飯食べちゃったんですねー。あ、紅茶貰いますね! ありがとうございますー」


「でしたら私も頂きますわ」


「おい」


「あたしはお茶の方が好みね~、会長さんのお茶を頂こうかしら」


「どうぞ。構いませんよ、リョウちゃんさん」


「あらありがとお~」


「私も! お茶がいいです! 私も鹿謳院会長のお茶を頂いても宜しいでしょうか!!」


「どうぞ、構いませんよ」


「レンレン紅茶でしょー?」


「え? あ、えっと……?」


「はあ……。構わん、好きに飲め橘」


「鈴木君は! もちろん! お茶ですよね! お茶っぽい顔してます!」


「あ、じゃあ、お茶で。ははは……」


「お茶っぽい顔ってなんですの」


「さあ~、なにかしら」


 超お金持ちな者も多数いるわけだが、統苑会の面々は全員がお弁当派。


 学食もリーズナブルで人気が高いのだが、自分達が行けばどうなるのかを知っているだけに基本的に足を運ぶ事は無い。


 それに全員普段からやる事が多々あるので、色んな場所に足を運ぶ彼らが何処でも食べられるお弁当に落ち着くのは自然な流れとも言える。


 もちろん、お重箱で作られた弁当と言う事も無く、市販されている普通の弁当箱に普通におかずとご飯が詰め込まれただけの普通のお弁当。


 食材は拘り抜いたものばかりで、調理の手間もえげつない程にかかっていたりするけど、ぱっと見は普通のお弁当となっている。


「それにしても、九人で集まってお弁当なんて久しぶりですねー。レンレンが入学した直後は何度か食べたけどそれっきりですよね」


「そうね~。でもでも~、夏休みの定例会議の後にお昼ご飯食べたわよね~。や~ん、皆仲良しさんだわ~」


「執務室も悪くはありませんが、どうせ昼食を取るのでしたらいずれかの庭園が良いですわ」


「この時期は暑いので普通に嫌ですね。エアコンと言う文明の利器があるのですから、わざわざ暑い場所に赴く必要はありません」


「流石議長! 文明人です!」


「それではわたくしが野蛮人みたいに聞こえるではありませんか」


 氷の会長と鉄の副会長が纏め上げる、氷鉄の統苑会。


 学園全体が鹿謳院派と近衛派に別れてバッチバチに争ったと言う成り立ちもあってか、外から見れば緊張感が漂っていると勘繰ってしまう者が多い。


 だが、全校生徒から畏怖される統苑会も、内部を見れば関係は非常に良好で穏やか。


 執務室で昼食を食べる姿は普通の高校生となんら変わりはない。


「飯を食うのも結構だが、誰か意見はないのか」


 そんな執務室の状況に呆れながらも、左手に本を持った近衛が口を開いた。


 今日の一冊は『うさぎがピョン!』と言う謎の本。


「私は! 何でも大丈夫です! でも、出来れば可愛いお洋──」


「それは先程聞いた。……ふむ。一度決定した衣装案を撤廃したのは鹿謳院だろう。何か大体となる衣装案はないのか」


「そうですね。とは言いましても、撤廃したのはバニースーツのみです。男性陣のディーラー衣装がそのままであるとするなら、女性陣もそちらに合わせるのが妥当かと」


「そうですわね。やや面白みには欠けますが、妥当な所でしょうか」


「そうね~。後は構図をどうするかと言った所かしら~」


「その辺が無難なんですかねー? どうですかねー」


「私は! ディーラーを──」


 鹿謳院に話を振った近衛は本から視線を持ち上げると、執務室に集まった統苑会メンバーの会話を黙って聞きながら、ぐるりと全体を見渡した。


「(ダリちゃんには、カジノに訪れる客としてフォーマルな衣装を着用してはどうだろうかと言うセレナの希望は伝えたが、そこまでは鹿謳院に伝えなかったか。……いや、セレナの中の者からドレス案を引き出させる為に、敢えて鹿謳院には伝えなかった可能性もある。巧妙だな、ダリちゃん)」


「(やはり、この程度の罠に引っかかりませんか。出来る事ならセレナの希望は全て聞き入れて差し上げたいのですが、私としてもやられっぱなしは性に合いませんからね。バニースーツの撤廃までは動きましたが、ここから先は貴女が動いて下さいませ、セレナ)」


 お互いに大きな一歩を踏み出した特定合戦。


 探り合いは加速していき、鹿謳院と近衛は今後益々、会話の中により多くの罠を張り巡らせるように。


 どちらが優勢ともどちらが劣勢とも取れない盤面は、一進一退の攻防を繰り広げていた。

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