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Level.103 繁忙期


 聖桜祭のテーマが発表されると、学園はお祭ムード一色に。


 対して、中等部と高等部の各クラスから次々に飛んで来る要望を処理しなければならない為、統苑会とその下請け組織である聖桜生徒会がとても忙しくなる時期でもある。


 鹿謳院や近衛を始めとした統苑会役員、その下部組織である聖桜生徒会役員がそうであるように。


 高等部や中等部の卒業に必要となる修了試験を通過している者は、この時ばかりは授業を完全に無視して、聖桜祭に付きっ切りになる。


 と言う事で、テーマ発表をした翌日。


「──まあ、案の定と言うべきか」


「テーマが遊戯と運否でしたからね」


「今年も忙しくなりそうですわね」


「あらやだ。あたしも忙しくなりそうなのかしら?」


「私も! 頑張ります! たとえ指が疲労骨折しても! ……それでも!」


「誰もそこまでやれとは言っとらん」


 統苑会執務室には近衛、鹿謳院、白川、越智、乾の五人が集まっていて、それぞれがノートパソコンと睨み合いながら会話をしていた。


 統苑会執務室には会長と副会長が使う為の執務机が二つ、中央には大きめのガラステーブルが一つと四人掛けのソファーが二つ置いてある。


 鹿謳院と近衛が執務机で作業をして、他のメンバーはソファーに腰かけて作業をするのが繁忙期の流れ。


「テーマがテーマですものね。生徒側も今年はやる気十分と言った印象で──失礼」


 会話を中断した白川は、肩と頬で携帯電話を挟みながら通話をして、パソコンではメールのやり取りを始めた。聖桜祭は文界と武界に多くの権限が集中する為、とても忙しいのである。


 百万単位、千万単位、億単位の金が平然と動く聖桜祭では、統苑会と生徒会のフォローは必須。


 次々に送られてくる生徒からの要望を把握して、生徒側の要望と理想を実現する為のお手伝いをするのが統苑会のお仕事となっている。


「遊戯と運否。今年の聖桜祭の裏テーマは“ギャンブル”で決定のようねえ~。わかりやすいテーマだから、生徒側の意思決定も早いわね~」


「リョウちゃんはある程度の片が付いたら書記の仕事に移ってくれて構わん」


「や~ん。鋼鉄ちゃん優しい~」


「無論だ。書記の負担は大きいからな。乾ではないが、リョウちゃんこそ疲労骨折などしてくれるなよ」


「お任せあれよ~」


「愛理は日報作成と中間報告の徹底をして下さいね。忙しいとは思いますが、頼りにしておりますよ」


「日報と言わず! 時報作成をします! 聖桜祭まで! 私は寝ません!」


「それは寝て下さい」


「はい! 寝ます!」


 キラキラと目を輝かせた乾が元気に返事をすれば、全員が再び作業に没頭。


 時刻は午前十時過ぎ。テーマ発表は昨日行われたばかりだと言うのに、各クラスを率いるリーダー達は昨夜のうちに協議を重ねたようで、聖桜祭に向けて何をどうするのかを決定済み。


 もう既に準備に取り掛かっている。


 聖桜祭は学園全体で一つのテーマを表現するアート。


 聖桜祭は各クラスで最優秀を競い合う競技。


 聖桜祭は次代の会長に相応しい者を見つける為の選抜戦。


 聖桜の地に集う者達の中で、誰が最も優れているのか。


 それを証明する為の行事が聖桜祭なので、誰もが皆やる気に満ち満ちている。


「──ふふふ」


「どうした、白川。何やら愉快な電話をしていたが、面白い事でもあったのか」


「ええ、まあ。今年度の聖桜祭において、中等部は全学年全クラス合同で『カジノ』を展開すると言う話で纏まったようですわ」


「だろうな。申請内容を見れば凡その予想はついたが……しかし、決断が早い事に変わりはないか」


「そうですね。昨日の今日で中等部の意見を全て纏めて、率いる子が居ると言う事ですからね。非常に良い逸材です」


「そうね~。今回のテーマならこの方が盛り上がるわよね。高等部は少し遅れているようだけれど、こっちの方もカジノになるんじゃないかしら?」


「恐らくな。先程から矢継ぎ早に飛んできている申請書を見れば、高等部の考えも中等部と同じだろう」


「或いは、中等部と高等部が合同でカジノの運営をなさるかと」


「ふむ、中高共同戦線か。それも悪くはないだろうよ」


「鋼鉄ちゃんやミカちゃんが生徒側だった時は毎年やっていた事ですものね~。真似をしたがる子が多いのも納得よね~」


 聖桜祭はあくまでも、文化祭のような行事でしかない。


 その為、クラス毎に一つの出し物を提供する必要も決まりも一切ない。


 複数のクラスが合同で一つの出し物を用意する事もあれば、学年合同で巨大な催しを展開する年もある。


 もちろん、中等部で一つの出し物を用意しても良いし、中等部と高等部の全ての生徒の力を結集させてテーマを表現しても構わない。


 何をどう判断して、如何にしてテーマを表現するのか。


 全ては各クラス、各生徒の裁量に委ねられている。


「(今回のテーマは遊戯と運否。俺が生徒側だったとしても、思いつく裏テーマは『ギャンブル』一択だっただろうよ。展開が早い点に問題は無いが、今年度からは一般開放もされる故、その点に気を配る必要があるだろう)」


 そして、そんな聖桜祭には大々的に発表される表のテーマとは別に『裏テーマ』と呼ばれる、生徒全員で話し合って決定するもう一つのテーマが存在する。


 たとえば昨年のテーマが『食』であったのに対して、裏テーマが『繁華街』だったように。


 一昨年の表テーマが『劇』であったのに対して、裏テーマが『革命』だったように。


 統苑会が発表したテーマに合わせて、生徒達が全員でそれに沿った裏のテーマを決定して、それを学園全体で表現するようになっている。


 そんな訳で、今回の『遊戯』と『運否』の場合は、正直言って『ギャンブル』以外には有り得ないので、中等部と高等部は即座に裏テーマを決定してそれに向けて動き出していた。

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