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第9話 徘徊する暗黒メイド

【ギルド通信、号外 徘徊する暗黒メイド】


 ファルムンドダンジョンに挑み続ける勇敢なる冒険者諸君よ、君たちはよくやっているとまずは労わせてほしい。

 そしてここに謝罪させていただく。

 すまなかった。


 ギルドで得ていた情報は断片的であり、貴公らをサポートする側の我々が勇敢なる冒険者諸君を死地に送り出していたなどと、あってはならぬことだ。すまない。すまなかった。浅はかで調査の足りなかった我々をどうか許してほしい。罵ってくれても構わない。


 ファルムンドダンジョンの大主人は我々の想定を超える力を有していたらしい。

 ここ一月の間に中級冒険者の殆どが壊滅。

 多くのものが心に深い傷を負って今は教会でカウンセリングを受ける日々だ。


 中には将来有望とされていた「炎剣の狩人」もいる。

 彼のことを知らぬものはギルド内におらぬだろうから説明は省かせてもらうが、そう、君が思い浮かべた彼だ。

 才覚に溢れ、人望にも熱い彼が「ぬるぬる」「メイドさま」としか口に出さなくなってしまった。

 極度の精神干渉魔術、もしくはそれに準ずる拷問を受けたと思われる。


 これからのギルドを担うであろう若者の心に深い傷を負わせる結果となってしまい、心から本当に申し訳なく思う。

 ギルド本部を代表してここに謝罪する。本当に、すまなかった。


 さて、すでに多くのものが一度は耳にしているとは思うが、ファルムンドダンジョンには現在、暗黒メイドと呼ばれる未確認のモンスターが出現している。


 その実態は謎だが、生存者たちの報告によると「漆黒のメイド服に身を包み」「なんらかの毒性を持った鞭で攻撃してくる」のだそうだ。


 そのようなモンスターの報告はこれまでに上がったことはない。

 数々の冒険に挑んできた勇猛果敢なる諸君ならまずはこう思うことだろう。


「それは本当にモンスターなのか? 頭のおかしくなった冒険者が他の冒険者を襲っているだけではないのか?」と。

 そうであったのならまだ我々も手の出しようがあっただろう。


 残念ながら、モンスターだ。


 それも物理攻撃無効と精神干渉耐性を兼ね備えているアンデット、もしくはスピリット、あるいはアストラル。

 曖昧な情報ですまない。

 しかし、少なくない犠牲者が出た以上、我々は警戒レベルを引き上げざるを得ないのである。


 また、十二分に警戒していただきたいのだが、その「暗黒メイド」はファルムンドの大主人ではない。

 繰り返す。

 大主人ではない。


 生存者からの証言によると「あのお方のため」だの「害虫駆除は下僕の仕事」だのと言っていたそうだ。

 つまりは暗黒メイドには仕えている主人たるモンスターが存在し、それがダンジョンのボスモンスター、現在の大主人と見て問題ないだろう。


 これから挑もうとしている諸君は用心しすぎるほどに用心して挑んでいただきたい。

 かの炎剣のような悲劇を、我々は決して望んではいないのだから。

 将来有望な青年をこのようなことで失いたくはないのである。


 ――よってここに、中級者以下の冒険者のファルムンドダンジョンへの立ち入りをしばらくの間、禁ずる。


 そして、上級冒険者諸君。

 どうかこれから君たちを追いかけるであろう、駆け出しの冒険者諸君のために今一度、力を貸してほしい。


 この度、我々ギルドは暗黒メイドの実態調査に金貨十枚。討伐に成功したものには金貨百枚の報酬を出すことに決定した。

 それに従い、すでに交付されていたファウルムドダンジョンの多主人に関する実態調査による報酬は金貨三十枚、討伐報酬は金貨三百枚に引き上げられる。


 剣聖が行方不明になっている今、我々は諸君らの健闘に期待する他ない。

 決して侮ることなく、初心を忘れずに懐かしのファルムンドダンジョンへと挑んでほしい。


 余談にはなるが、来月には私も黒睡蓮と宝玉蓮の墓参りに訪れるつもりだ。

 現地で吉報を耳にできることを、期待する。


 ――サクラミア大陸ギルド本部長、アルムンド・べナスティア


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