≪ 素直 ≫
辛い。それは小さいけれど、確実に心を締め付ける。
でも、君の温かさには、救われる。
喜央京助。
多分同じ学年。
「喜央?アイツは最近授業出てないなぁ~」
「喜央君?見ないなぁ~どっかでサボってるんじゃない?」
「京助ならこの学校のどっかに居るだろ?」
不良もどきとは言っていたけれど、何故か皆喜央の事を不良と見ていない様だ。
やはり、普通の不良ではないのか?
「何だ?咲隼。お前も喜央の事知りたいのか?流石、生徒会長だな」
「いえ・・・」
生徒会長だからって訳じゃない・・・。
「あっ、もし見つけたら授業に出る様に言ってくれ」
「はい・・・」
少し気持ちがブルーだ。
けれども、『関わるな』とか言われると思ったが・・・。
「あれ?何だ、もう来ないと思ったのに。案外早く来たな」
今日も屋上で、菓子パンを食べながら座っている。
「先程まで、君の事を調べていた」
少し驚いた顔をしたように見えたが、直ぐに苦笑した。
「俺の事?調べても面白くなかっただろ?」
「確かに・・・君は不良と言っていたが、周りはそうは見ていない様だな」
調べても、調べても、不良らしい事は聞けなった。
「だから言ったろ?俺はもどきなんだよ。サボる口実に、不良語っただけ」
サボる為に不良になったか・・・でもなりきれてない様な気がするが・・・。
「だが、不良だからと言って、授業をサボって良い訳ではないだろう?」
そう私が言うと、また苦笑した。
「この前サボってたのは誰だよ・・・」
コイツは好きになれないタイプだ。
「私はこの前だけだ。だが、君はここ最近頻繁にサボってる様じゃないか?」
「この前だけって、今も授業中だぞ?」
「私は今、生徒会長として授業に出ない生徒を、授業に出そうと業務をこなしている。だから問題無しだ」
その発言に、半ば呆れた様な顔をした。
「何だその顔は?」
少しコイツには、下に見られているような気がしてならない。
「べ~つ~に~」
「ムカツクな、その言い方」
そう私が言うと、ケラケラと笑いながら仰向けになった。
「いや~アンタ、思った以上に面白いな!」
「なっ!?」
面白い?この私が?ありえない・・・ありえない・
「噂なんてモノは信用出来ないよ」
笑いながら、そう言う。
「噂?」
聞かなければ良いのに聞いてしまう。
「生徒会長は融通が効かなくて、堅物だって噂」
それは、仕方が無いのだ。何でもかんでもOKと言っていたら、大変な事になる。
「そんな顔するなよ」
!?顔に出てたか?油断した・・・。
直ぐに無表情になる。すると、喜央はつまらなそうな顔をした。
「何だ?」
「いや、その顔・・・似合わないなって思って」
「似合わない?普通にしているだけなのに似合わない?」
半ば怒っていた。
「笑えば良いじゃん」
そんな簡単に言うなよ・・・苦労しているんだぞ・・・。
「その顔も似合わない」
また顔に出ていた様だ・・・不覚だ。
「別に、君には関係ない」
切って捨てる様な言葉。これだから駄目なんだ・・・。
「そう言うなよ。こうやって話すのも何かの縁だろ?それに、俺の言った事は結構、的を射ているんだぞ?」
「不良もどきが、何を言っている」
駄目だな・・・私・・・。
素直になる事は、捨てた。辛いから。
素直になる事は、忘れた。辛いから。
素直になる事は、消えた。辛いから。
素直になる事は・・・・なる事は・・・。
「そんなに辛いのか?」
!?何で・・・何でコイツには・・・。
「なら何で、生徒会長になった?」
「軽はずみだ。なりたかった訳では無い。少し勉強が出来たから、推薦されただけだ。そしたら、いつの間にか生徒会長なんて、ご立派な者になっていた」
自慢の様に聞こえて、他人からしたら、頭にくるかもしれん・・・。でも、私は辛い。
「俺は、こう言う時、慰めも励ましもするつもりは無い。それは、時には人を傷つけるから、他人の優しさは時に、傲慢で心に響かないから・・・だから俺は何も言わない」
・・・・。
「でも・・・」
「何だ?」
少し間が開いた。
「いつでもここに来れば良い。つまらない事話して、退屈に空を見る。そんなで良ければ、また来れば良い・・・」
優しさ・・・なのだろうか?
少し笑みが零れた。遠過ぎて、直ぐには解らないけど、これは優しさなのだろう。
でも、今はこれだけで嬉しかった・・・。
私は喜央に背を向けた。
「帰るのか?」
後ろから声が聞こえる。
「あぁ、今日は帰る」
「そうか」
「でも・・・」
でも・・・
「でも?」
「また、来るかもしれない・・・」
顔が赤くなるのが分かる。
「だいたいここに居る」
「そうか・・・」
馬鹿にされるだろうから振り返らない。
「それじゃ・・・また」
「またな」
私はゆっくり、屋上の扉を閉めた。
くすぐったくて、不思議な気持ち・・・。
でも・・・温かいと思う。今はこれだけで救われる・・・。
何か・・・進まねぇ~・・・。
なんだろ・・・思った以上に進まない。
あれ、少しミスをしたのだろうか?
あれれ、少しどころじゃない様な・・・。
でも良いさ!咲隼可愛いから。
作者自身。少し我が強いと言うか、素直じゃない人は好きです。
・・・・変態か、俺・・・。
それにしても、咲隼は少しずつ内面的な事は解ってきたんですが、
喜央は全然ですね。何ですかアノ不思議キャラ?
少し扱うのに戸惑う。
でも、何も知らないキャラより、何でも知っている方が扱いやすいのですが、
これ普通の恋愛モノなんだけどな・・・。
それはさておき、ここまで読んでくれてありがとうございます。