ローレの秘密 (25/05/03追加)
ご覧いただきありがとうございます。
ローレッタの秘密に関するエピソードを追加しました。
「♪~」
夜。
入浴を済ませた私は、濡れた髪を柔らかなタオルで拭きながら上機嫌で洗面台の前に立った。そして。
「は?なに?これ?」
鏡に映った自分の姿に目を疑った。
「えぇ〜!!なにこれ~?!?!色が変になっちゃったよぉ!!ど、ど、ど、どうしよう!?」
私はすぐに洗面台の上のカラーリムーバー引っ掴むとバスルーム舞い戻った。
テルース王国人の髪色は茶色が多い。ブロンドやシルバーの人も見かけるがほとんどはヘアカラーだ。
シュヴァルベ様のように生まれながらのプラチナブロンドは非常に珍しいのである。
かく言う私の髪色も大多数の王国人と同じく茶色い色をしている・・・。
「ふう、元に戻った~。」
と周囲の人たちには思われているが、実は私の髪色は茶色ではない。私の本当の髪色は白。
なぜか私は生まれた時から真っ白なのだ。お父様もお母様もお姉様達も髪色は茶色なのにである。
だから、私はこの髪色のせいで周りから変な目で見られることが多かった。両親姉妹と全然違うのだから当然だ。
それもあって、この白い髪を嫌ったお母様はまだ幼かった私に自分たちと同じ茶色にするように命じた。それ以来、私の髪色は白ではなく茶色になったのである。
月日が経ち学園に入学してからも髪を染めていたのだが、先日領地からたくさん持参したカラーがなくなってしまった。
でも、すぐに買いに行くことはしなかった。
だって、田舎の雑貨店で手に入るカラーなんて、都会の雑貨店なら同じものが簡単に手に入ると思っていたからだ。
数日経ち、そろそろヘアカラーをしないとまずいと思った私はカラーを切らしていることを思い出した。だから、慌てて学園帰りに雑貨屋に買いに走ったのだ。
しかし、私の予想に反して同じカラーは手に入らなかった。
でも、ヘアカラーをしないわけにいかない私は仕方なく色が同じ感じで一番安い物をかったのだが。
「色がぜんっぜん違ってた!どうしよう!!」
買って来たカラーは色が濃すぎたのだ。誰が見ても一目でヘアカラーだとバレてしまう。それは非常にまずい。
私は真っ白になった頭を抱えた。
「これじゃ、明日学園に行けないよぉ...。」
学園は校則でヘアカラーを固く禁止している。それも軍立の学園だけあって校則を破った場合の罰則は厳しめだ。
罰を受けるのは一向に構わない。規則を破っているのだから当然だ。
問題は罰ではなくお父様が学園に届け出ている私の髪色が茶色ということである。
私が恐れているのは学園に対して髪色を偽っていること。虚偽申請は即退学だからだ。
そうなれば、寮を追い出され家に帰ることも許されない私は露頭に迷ってしまう。それだけは何としても避けねばならない。この頭を見られるわけにはいかない。
(退学だけは、絶対にダメ!すぐになんとかしなくっちゃ!)
と思ったその時、誰かが部屋のドアをノックした。
「はひぃ!?」
びっくりした私は変な声を出しながら頭を抱えてしゃがみ込んだ。
すぐにドアの向こうから心配そうな声が聞こえてくる。
「ローレ??大丈夫?とても大きな声が聞こえたけれど。」
学園の寮は中の音が外に聞こえることはない。
しかし、驚いた私の出した声が大きかったのか、隣の部屋の子が心配して声をかけてくれたようだ。
「だだだだ、大丈夫だよ!ごめん、うるさかったよね!」
「ううん、そんな事より、何かあったの?」
(ええっと、何か言い訳を!)
「大丈夫!なんでもないよ!お、お風呂で滑って転んだの!どっしーんって!」
「えぇ!大丈夫!?医務室に行く?一緒に行ってあげるよ!?」
あわあ、逆に心配されちゃった!
「いあー!だ、大丈夫だよ!もう痛みは引いたから!」
「本当に?大丈夫?ローレ、この前もそんなこと言ってて、後で大変なことになったでしょ?だから、ちょっと心配...。」
(うぐっ!あれかぁ・・・。)
私の脳裏に先日の失敗がよみがえる。
「だだだ!大丈夫だよ!この前みたいなことはないから!」
「そぉ…?わかったわ。でも、痛むようだったらすぐに言ってね。」
「うん、ありがとね。...ふう。」
心の中で隣の部屋の子に謝罪をしつつ。ドアアイで外を確認して人影がなくなったことを確認した私は、ため息をついた。心なしか潜めた声になる。
「...でも、どうしよう。もうお店は開いていないから、これから別のカラーを買いに行くのは無理だし...」
なんとかできないかカラーの説明書をしげしげと眺めていると、とある一文が目に入った。
【魔力で調色!好みの色が簡単に!】
「あれ?このカラー調色ができるの?」
説明書には魔力を流し込むことで自由自在に色が変わる!と書かれていた。
「へぇ...よし!これでいける!早速やってみよう!」
希望が見えてきた私は意気込んで握りしめたカラーに魔力を流し込み始めた、が。
「あれ?赤くなった!赤はまずいよ...」
「あれ?今度は青だ!」
「う〜ん、少し茶色くなったけど、少し赤みが強いかな?」
「ん~、今度は少し色が薄いかなぁ?」
・・・
「えーん!思った色にならないよぉ!どうしよう!!」
しばらく頑張ったが無理だった。私は魔力のコントロールがあまり得意じゃなかった。
マーリンの記憶があるからやり方は分かっている。でも、それはあくまで知識でしかない。
本で読んだ知識をすぐに再現できないのと同じでマーリンと同じレベルのコントロールはできないのだ。
私はスマホを取り出し、商品レビューを検索した。何かコツが書かれていると思ったのである。
すると。
「調色をもう少し簡単にしてもらいたい。魔力切れで殺す気か。」
「自分で調色はするのはあきらめて、近所の人にお願いしました。」
・・・
「近所の人にお願い...」
私にそんな考え方はなかった。
どんなことでもすべて自分でしないといけないと思っていたのだ。でも、そうなんだ。
すぐにある人の顔が思い浮かんだ私は服を着て、ブランケットを頭からすっぽりと被るとそろそろと部屋を後にしたのだった。
その人の部屋を目指して。
ここまでお読みいただき有り難うございました。
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