その退職ちょっと待って!
毎年、桜が散って暖かさが強くなってくると、花粉症の終わりとともに、新年度の新入社員さん情報が報道されてきます。新社会人の30%が3年以内に転職や退職を選択されるそうです。この数字はここ数十年それほど大差がないと聞いています。私は最初の紳士服販売の会社は10年でしたから、そこそこ長く働いた方なんでしょうね。
面白いもので、3年以内に転職や退職をする人が30%で、新卒から定年まで同じ会社という方も30%くらいというデータがあります。(諸説あり)ただ、私の周りなんかを見ていると、定年まで働いた方って公務員か、超が付くくらい大きな会社の方、あとはそこそこの企業で創業から関わっていましたという方くらいしかいらっしゃいません。ひどい会社だと、定年させる気ないんだろうなと感じる会社もあります。
理想としては、卒業して初めて就職した会社で定年まで働けるのが、一番昇給もしますし、退職金も出ますし理想なのかもしれません。ただ、キャリアアップなどを含め転職が当たり前になっている時代ですし、起業される方もいらっしゃるでしょう。生涯雇用、年功序列が崩れてきた今、なかなか定年まで同じ会社に勤めるというのはレアなケースになってきたと感じます。
これは私の剣道の師の言葉ですが、『心技体』このうちの『技』のお話です。時間をかけて鍛錬すれば、その分技術は身についていく。まさにその通りで、どんなにだらだらやっていたって、個人差はあれどその会社での仕事は覚えていきますし、技術も身についていきます。私も何度も転職していますが、同じ業界での転職はそれまでの経験値が活かせるので入り込みやすいですが、異業種への転職は大変でした。仕事のこと、業界のことをイチから学んでいかなければいけないからです。また、人間関係も作り直さなければいけなくなりますので、気苦労も増えます。ですので、転職には少なからずリスクが伴うということは常に念頭に置いておいた方がいいですね。
話がそれましたが早期退職についてです。就職活動で苦労し、希望をもってやっとの思いで入社した会社。でも、希望する部署と違った。思っていたのと違った。空気が合わない。そう思ってすぐに退職する方。私は『ちょっと待って!』と言いたいです。
肌に合わないこと、苦痛なことを続けていくのはつらいと思います。ただ、ちょっと希望していたことと違ったり、思っていたことと違ったからと言って、1週間とか1ヵ月で退職するのはもったいないです。昔のように『石の上にも3年』じゃないですが、3年もやってみろとは言いませんが、せめて半年くらいは頑張ってみてもいいと思います。ましてや、1日とか数日で退職してしまうなんてもってのほかです。
即日退職を決めていいというケースがあるとすれば、あまりにも事前の雇用条件と現実がかけ離れていた場合、例えば、給与の額がまるで違うとか、残業はないと言っていたのに実は毎月80時間あるとか、年間休日120日以上のはずが、実際には週に1日休めるかどうかだった。あるいは、初日から各種ハラスメントが当たり前のように横行しているとか、そういう場合のみだと思います。
退職をするということは、当然次のお仕事を探すことになると思いますが、短期であればあるほど、次の企業は必ず『身構え』ます。この人はどうしてこんな短期で退職したんだろう。うちでもすぐに辞めちゃうんじゃないか。そんなところからスタートしますので、メディアは第二新卒とかいろいろな『おいしそうな表現』をしますが、人事経験上は『マイナススタート』だと思って面接していると考えてください。
かくいう私も偉そうなことを言っていますが、過去には7ヵ月で退職した営業会社と、今の会社の前は4ヵ月で退職しています。それでも再就職がいつもうまくいっていたのは、『退職理由』の明確化と『今後どうしていきたいか』がまとまっていたからだと思います。7ヵ月で辞めた営業会社は素直に自分には通用しなかったとお伝えしています。飛び込み営業ってのは本当にきつかったですね。4ヵ月で退職した警備会社は、業界でも上位に入る大手でしたが、サービス残業は当たり前でしたし、休みが少ない。公休日に2時間だけ研修ぶち込んでくるとかザラにあり、24時間休めるのは月に2.3日。それでも何とかしようと思ったのですが、10歳年下の現場上司のパワハラがすごい事すごい事、あっという間にメンタル病んだと思ったら、父の認知症が進んだため介護も必要になり、未練もなかったのですぐに退職しました。
そういったことも踏まえて、恨み節にならず、自分に何が足りずに退職に至ったのかをしっかり分析し、それを面接で説明できれば、大きなマイナスににはならないと思います。ただ、やはり1日で退職したとか、入社したら雰囲気が合わなかったとか、そういう理由での退職はなかなか解決が難しく、次の会社でも同じことを繰り返すリスクが出ます。
イメージと違っていたからと言ってすぐに退職の選択をせず、本当にその選択で自分の経歴に傷がつかないかどうか、辞めずに済む方法はないかどうか、よくよく考えてから決断するようにしてくださいね。『後悔先に立たず』です。