8.カズが言う補給はそれだけではない-まぁ、半年の時間を与えちゃったから-
全44話予定です
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「じゃあ、戦闘機の話はこれでいいかな? もうここまで話したし、二人には退席せずそのまま残ってもらおう」
と言ったあと、
「続けます。先の話ですが三八FIには自我のあるサブプロセッサーを搭載予定です。パイロット候補も既にこちらで選定済みです。これで二足歩行型が、事情により七体、四足歩行型が二体の、計九体の部隊が出来上がります。そうなると次に来るのが分隊化の可能性がぐっと出てきます」
カズが言う補給はそれだけではない。
「最新鋭機、つまり三五FDIも三機、次々世代機、つまり三八FIが二機こちらに到着しています。もちろん通常の航空戦力も送ってもらっている、と聞いています。ここでも分隊化を考える必要が出てきました。当面、今回の作戦に当った人間を中心に分隊長に指名するそうです。なので三五FDIに乗っていた三名はそれぞれ戦時昇進により少尉から大尉へと格上げとなりました」
そして、カズはこれからの展望を話した。
それによると、今回の日本奪還作戦で、名称はともかく[人型]というのは多くの人間に認知された。当然帝国だけでなく共和国にもその存在を明確に示したのだ。
あれだけ渋っていた同盟連合の主要国が首を縦に振った理由。人型を晒しても日本を奪還しようとした理由。
その一つが敢えてその姿をさらし、劇的な戦績を上げる事で[同盟連合にはこんな強力な兵器があるんだ]というアピールも兼ねているのだろう。そして日本に投入された事で[戦線はアルカテイルだけではない]という意思表示にもなったと考えられる。
もちろん最新鋭機の存在も忘れてはならない。どこまで正しく情報が伝播するか分からないが、ゼロフォーたちは一対十二の戦闘を勝ち抜いたのだ。これはとりわけ帝国に対しては強力な抑止力として働くだろう。つまり、それだけの性能差がある、と。
カズたちはそれだけの戦果を持ち帰ったのだ。そして、それは政府の上層部に[部隊の分隊化]という選択肢を増やしたのである。
今回補給されたのは何も最新鋭機や次々世代機だけではない。最新鋭機、またの名を三五FDIのベース機になっている、現在の主力戦闘機の三五Fの改良型として、いつでもサブプロセッサーを乗せられるように複座化した三五FDも補給されたのだ。
この機種は、いわゆる次世代機というものなのだが、設計段階である程度、三五FDIのリンク下に入る事を想定して設計がなされている。
その最たる例が三五FDIからのリンク受信である。
コックピット正面に三次元ディスプレイが搭載されていて、ホログラムの原理で三次元に敵、味方の位置を表示、ある程度の行動予測線も出るようになっている。三五FDIがいない場合であっても地上や艦艇、あるいは陸上部隊とリンクを構築して三次元ディスプレイに敵の位置などを表示する形になっている。そう、通常機はあらかじめ最新鋭機が指揮管制をとるようにもともと設計されているのだ。
具体的には、
「目標Aを狙う」
と告げるだけで他の戦闘機はそれを標的から外すという内容がパネルに示される。だが、敵機が背後や死角に回った時はフォローするよう警告が出るようになっているのだ。これには生体コンピューターの技術の一部が使用されている。
もちろん通常機、つまり三五Fにはサブプロセッサーは搭載されていない。だが、生体コンピューターの技術が使われているのは確かなのだ。それがあるからこそ三五FDIと上手くリンクが取れるのである。
そして次々世代機、またの名を三八FIはサブプロセッサーが操縦を行う。その為コックピットには何もない状態で製造されている。サブプロセッサーが直接操縦するので計器類が一切不要なのだ。現在、同盟連合が所有している機体としては一番新しいし、まだ実験段階なのである。
だから二機以外には存在してはいない。もちろん通常戦闘機型である三八Fは製造が続いているが、これも初号機がやっとロールアウトした、というところである。それだけ政府は[無人機]に興味を示したし、それを現実可能にした研究所を高く買っている、という表れなのだろう。現に通常型より先にFIの方をロールアウトしたのだから。
「というのが概要ですが、本国は何と?」
カズが司令に尋ねると、
「分隊化までは話が言っているようだが、思案中、との事だ。これだけの戦力をどう活用しようか悩んでいるんじゃあないかな。その辺りは、もし意見があるならきみが直接話してもらっていい」
――だろうね。まぁ、半年の時間を与えちゃったから、敵さんも何か手を打っては来るだろうけど。しかし、何もして来ないのが不気味だよなぁ。
それは事実なのだろう。日本が奪還された時も、帝国は戦術核は何発か打ったがそれも威力誇示程度、カズたちが日本を発って数か月経つがあれから反転攻勢も無し、とすれば内地で何か策を練っている、という考えに帰結するのは当然であろう。
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