7.これはいろんな可能性が出てきたな-サブプロセッサーのユニット化である-
全44話予定です
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――これはいろんな可能性が出てきたな。
カズは会話をしているうちにそんな風に考える。
それはサブプロセッサーのユニット化である。ユニットとして扱えば、例えば[アップデート]を施してゼロツーなりゼロスリーなりを三八FIのパイロットにする、なんて可能性だって考えられる。
これだけ聞くと政府の言う[無人機]の構想が本当に現実化しそうであるが、改善しなければならない点もいくつかある。それは、現在の[アップデート]ではいずれ限界が来る、という点だ。
どういう事か。
確かに[アップデート]すれば経験の共有が出来る。もちろんそれを狙って行っているのだが、いかんせんそれは自分が経験した事ではない。それに脳にだって容量に限界がある。
そこでカズは今の[アップデート]を生体コンピューター側に移植できないか、と考えているのである。外部メモリー化して、その時必要なデータをバンクから取り出して自分のものにする、これが一番いいやり方であろうとカズは予想していた。
だが現実にはそうはならなかった。
現在の生体コンピューターにはそこまでの記憶容量がないのだ。脳の方が記憶容量があるというのは少し意外であるが、現実としてそれが事実なのだ。もちろん、生体コンピューターのメモリー増設の指示は出している。だが、このまま[アップデート]を繰り返せばいずれはサブプロセッサーの記憶野にも手を入れないといけない、そんなところまで来ているのだ。
記憶野に手を入れる、つまりは記憶の消去である。
もちろんそれをしない方法が一番なのは分かっている、し記憶を消去したら人格が保てるかが問題だ。ゼロフォーの[事故]はあくまで偶発的なものであるし、彼女が立ち直れたのは人一倍頭のいい、元々が無感情であったが故であるともいえる。
だが、現実問題として記憶野に手を入れるという可能性もあるし、その可能性は現段階では高い、と言わざるを得ない。
――メモリーの件はまだそんなにせっついてはいなかったな。話がひと段落したらまたお偉いさんに話してみますかね。代わりになる[お土産話]と一緒にね。
つまりレイドライバーとパイロットの兼任という多様化の話である。
今の話は、もちろん仮定の話であって現実的ではない。現状で問題となっているのが[アップデート]の限界である。
だが、そこにもう一つの技術革新があれば? 記憶野に手を入れるという手段から解放されると同時にユニット化の可能性という、いわゆる[一粒で二度おいしい]という状況が生まれる。そしてユニット化が出来ればどの戦線にだって送れる。まだ小型化とまではいかないものの、戦闘機に乗せられるくらいには小型化出来ているのだ、そういう意味でも一度ユニット化さえしてしまえば一般整備に組み込む事だって出来るだろう。
あとの問題は些細なものである。整備士の一人ないし二人にだけ事情を明かして栄養パックの交換をさせればよいのだから。
戻って、
「という訳だ。なので現物に合わせることは出来ないが、3Dでの会話なら出来る、と言う話だよ」
とカズが言うと、
「それで充分です。オレは[彼女]に惚れたのであって、それがどんな姿であっても変わりはしません」
――うーん、ゼロフォーが知ったら何というか。でもこれはこれでちゃんとした自我が芽生えるかもしれんな。
カズはそう思いながら、
「その話は了解した、って三八FIに習熟訓練を行うのにきみたち二名と彼女の、三人でやろうと思っていたところだからね、よろしく頼むよ」
と言うと、
「了解しました!」
と元気のいいカレルヴォの声が返って来る。
だがそんな日常にカズはやはり思うのである。
――脳だけにして、躰の自由を永遠に奪ったこの行為は、殺人と何が違うのか。
彼女たちサブプロセッサーは確かに生きてはいるし、会話もインターフェースを介せば可能だ。思考もすれば場合によっては感情的にもなる。睡眠もするし、もしかしたら殺意を持つかもしれない。
だが、彼女たちにはそれを行動に移す手段がないのだ。例えば、カズが憎いからといってカズにナイフを突き立てる、その身体がないのだから。
――オレは間違いなく地獄行きだろうな。千歳は、襟坂さんはせめて……。
そう思ってしまうのである。
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