5.その子にちょっと興味がありまして-きみとサンド大尉以外は-
全44話予定です
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「すまないが、今それを叶えてあげることは出来ないんだ。理由は軍事機密に当たる」
とカズは伝える。
「それは軍の中枢にいる人間、という意味でしょうか?」
と尋ねられるが、
「軍事機密なんだ、現状ではこれ以上の回答は出来ない」
と返す。
しばしの沈黙。だがその沈黙を、
「貴方の言う[こちら側]の人間になったら教えてもらえますか?」
そう尋ねてきたのである。
カズは、
「サンド大尉も一緒に聞いてくれ。オレの言う[こちら側]というのは軍事機密の事を指しているんだが、その中には常人では到底受け入れられないような内容も含まれる。非人道的な内容も。それを、聞いてから[話が違う]と反故には出来ない、そう言っているんだ。それでも付いて来てくれるなら、オレが話せる範囲で話そうと思う」
言葉を選んでカズは言う。
そのカズに、
「実はその子にちょっと興味がありまして」
とカレルヴォは言ってから、
「ここにいる人たちはみんな[こちら側]の人たちなんですか?」
実際、ここが軍隊のミーティングルームであると言われなければどこかの学校か何かと思える年齢層であるし、性別である。何せ自分たちと基地司令、副司令、カズを除けば皆が十代、いってても二十代の女性ばかりだ。実際にこの部屋も女性特有の香りがする。
――まぁ、そういう意見が出てもおかしくはないわな。
と思える程はカズもまだマトモという事か。
「そう、ここにいる人間はきみとサンド大尉以外はすべて[こちら側]の人間だ」
と言ったところで、
「さてこの状況、どうする?」
カズは改めて二人に問う。
サンドは、
「先ほどもいましたが、貴方の背中を預けて頂けるのでしたら」
こちらは問題なさそうである。
ではカレルヴォは?
「秘密を知るって言うと仰々しくて構えてしまいますが、気になった娘に会えるのだって立派な動機になりませんか?」
――そんな話になっていたなんて。
「ただし、会える保証はない、とだけ言っておく。話すことは出来るが」
少しだけ情報を小出しにする。
――食いつきそうだね。
「ただ、気になる女の子がいる、それで十分なんだと思います。一対十二の時も彼女に裸踊りを賭けてもらったんですよ。でも実際には被弾なく必要最低限の武装の消耗だけで帰って来られた。それってやっぱり彼女のお陰なんだと思います。そんな彼女に名前も聞きそびれちゃって」
そう言ってカレルヴォは少し照れる。
「ここにいる人間が[こちら側]になった動機は様々だ。きみの言っている動機が不純だとは思わないよ。ただ、それに見合うだけの成果になるかどうか。オレが心配なのはそこだ。まず名前を名乗る事は出来ない、とだけ言っておこう。それでも?」
カズの一言。だが、
「少しだけ小耳にはさんだことがあります。あの機体は脱出装置が付いていなくて後ろに乗ってるのが高性能な人の脳を使ったコンピューターだ、と。それだけでもう十分私は秘密を知ってしまっているのです。その先には色々な人体実験があるであろう事も予想が付きます。それでもまたあの娘の声が聞けたなら、そう思い志願します」
――これは少し一考しないとかなぁ。
カズはそう思ったあと、
「では二人とも[こちら側]になるという事でいいのかな?」
最後の問い。それに対しての答えは、
「イエッサー」
と軍人らしいものだ。
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