2.という訳なんだけど-こうしてみると圧巻と言うか、男冥利に尽きるというか-
全44話予定です
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そのあと、深夜にカズとクリスが到着し[司令に話すのは明日にしよう]となって昼まで仮眠をとり、
「という訳なんだけど」
と現在に至っている。
「だからどういう……。ご主人様、これを外してもらえませんか?」
トリシャがしおらしい態度に改まってそう言うと、
「そうだった、お風呂まだでしょ? ゆっくり入っておいで」
そう言ってリューズの近くに何やら金具を差し込む。するとそれは直ぐに外れて、
「ありがとう、じゃああとで」
と言ってからトリシャはしばらく席を外した。
「ちょっと雑談しててよ」
とってカズは皆を見ていた。
――こうしてみると圧巻と言うか、男冥利に尽きるというか。
トリシャがいないので七名が、七名の女性がここには存在する。
女性、と言ってもワンツーのパイロットのアニーやイリー、それにマリアーナはまだ十八を過ぎた頃である。一番年上のレイリアとクリスにしたって、まだ二十一にはなっていない。その誰もがカズの事を[ご主人様]や[マスター]と呼ぶようになったのだから。
マスターは他にも存在する。アルカテイル基地司令とエルミダス基地司令、それにクリスチャンの四人である。だからカズだけ特別にどうのという訳ではない。もちろん中にはカズに想いを寄せている娘がいないとは言い切れないが今はそんな気配は感じない。
しかし[ご主人様]と呼ぶようになったレイリア、トリシャ、クリスは別だ。自分の中心をカズに置いている。カズの言う事なら何でも聞くし何でも実行するだろう。
ではそれはマスターと何が違うのか? 答えは明確、そこにカズへの[気持ち]が存在するか否かである。[マスター]と呼ぶ娘たちはカズの命令に[調律]を受けているから逆らえないでいる。一方、カズを[ご主人様]と呼ぶ三人はカズの命令に[従うと心に誓った]から従うのである。
似ているようで、感情があるか無いかの違いは、明確な違いである。
だから極端な事を言えば、カズが[ここで頭を打ち抜け]と言って軍用拳銃を渡したら[マスター]と呼んでいた娘たちはためらうことなく引き金を引くだろう。たとえそれが理不尽だと知っていてもその命令には逆らえないのである。
では[ご主人様]と呼ぶ三人はどうか。おそらく引き金に指はかけるとは思うが、間違いなく[理由が知りたい]と言うだろう。結果引き金を引くとしてもたどったプロセスが違う。
そんな娘たちが七名、サブプロセッサーを含めれば十名以上の人間の一段上の存在にカズはなったのだ。
――これは今まで以上に気をしっかり持たないと。
そうカズが思う理由。それは誰かだけに特別な感情を抱いてはいけないという事を示している。
簡単に言えば、トリシャを含めてここにいる誰かを[好き]になってはいけないのだ。もしそこで誰かを[好き]になれば不公平が生じる。なぜあの子だけが、という感情が出て来てもおかしくはない。もちろん[調律]を受けている娘たちはそう思っても発言や行動には出ないだろう。だが、火種としてくすぶる可能性は、ゼロではない。
その意味でもカズが今、一番危惧しているのはレイリアの存在なのだ。
レイリアはカズに隷属する、と言った。それは事実である。
だがカズの側に問題がある。それはレイリアとチトセを混同しがちとでもいうべきか。あるいはレイリアに重ねている、と言ったほうが通りがいいだろう。
そして多かれ少なかれ、間違いなくカズはレイリアに千歳を重ねているのである。
――自覚は、あるよ。
自覚があるからこそ、それを止められないでいる自分にある意味驚愕しているのである。
こうしてみているとまだ幼ささえ残る娘たちだ。そのすべてにおいて自分はコントロールする側の立場にいる。それを自覚しない日は、ない。
「戻ったわ、ありがとう」
一般軍服に着替えたトリシャが戻って来るのを待ってから、カズは基地司令と、副司令兼参謀、それにサンドとカレルヴォをこの場に呼んだ。
全44話予定です




