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プロローグ

「世の中に不思議な力があるのか?」

 俺はそう聞かれたら、非常に残念だが、YESと答えなければならない。それは何故か、簡単な話だ。俺自身、そんな力を使えてしまうからである。


 さて、不思議な力、と聞いたら、主人公が危機的状況に陥って、急に力が目覚めた――なんて、よくあるお話を想像するやつも多いだろう。結論から言おう。そんなことは、不可能だ。想像するやつの気が知れない。そんなほいほい、異能が使えれば世の中そんなやつだらけだ。

 じゃあ、俺は真面目にこつこつ修行して、立派な師についたりしたのか、いや、実はそうでは無かったりする。

 ま、楽しくない考えはこれぐらいにしておいて、今の状況をどうにかする術を見つけねばならない。


 目の前には、不思議な力代表――と言わんばかりの黒い影が歩行している。しかも、二足歩行。こういうのは、でかい犬とか、巨大昆虫とかが鉄板だと思うんだがな。

 数は三人、いや、人間では無いから三匹にしよう。夜の町、妙に人気の無いオフィス街。虎視眈々と俺を殺すつもりなのか、足を上げずに滑るように接近してくる。滑走といった感じだ。気味が悪いが、別に恐怖を感じることも無い。慣れているのだ、この程度のものは。

『Connect――深淵の鍵はわが手にあり、鍵は祖の元から(もたら)される。貫く意志よ、汝が力を示せ!』


 いつもの決まり文句。わざわざ言う必要も無いが、言ったほうが雰囲気でるだろ。それに、こうやって呪文を唱えたほうが安定して魔力を具現化することができる。ただ、カッコつけてるだけではないのだ。

 体から何かが飛んでいく感じ。薬やってるやつは常時こんな気分を味わっているんだろうか。俺はごめんだね。と、なんてことを考える。魔力とは生命力。もちろん枯渇すれば死ぬ。だからといって、寿命が縮む、何てことではないらしい。あくまでも受け売りだけど。

 手に、光が集まる。夜の闇に不釣合いなほど輝くそれは、少しずつ、しかし早く、形を織り成していく。生み出されたのは一握りの短刀。明るい光から生まれたはずだが、刃は漆黒。夜の闇に溶け込む、いや、夜が刃に溶け込む錯覚を起こさせるほど、底抜けの黒。

 最も近い敵から、3〜4メートルの距離。短刀では攻撃できる間合いではない。だが、敵は違った。


「腕が伸びた……おいおい、冗談じゃねーぞ」

 振り上げられた手が、地面に振り下ろされる。コンクリートが砕かれ、巻き上げられる。とんでもない威力だ。

 しかし、懐にもぐりこむのは容易い。線で見切れる攻撃など脅威になりはしない。

「ん? 誰かいるのか」

 人の視線を感じる。もちろん目の前で大暴れしているこいつらのではない。背後から、しかもこいつは普通の人間じゃない。俺と同じ魔術師とか、それに順ずるものだ。まあ、いい。それよりも優先すべきはこいつらをどうすべきかだろう。


『貫く意志』

 その一言で、俺の周りには数多の刃が浮遊する。光でできた、澄んだ刃。手にある短刀とは正反対だ。

 すこししゃがみこみ、爆発的に加速する。迫り来る腕に、展開しておいた刃を射出して対抗する。

 懐に飛び込み、短刀を振るう。吸い込まれるように胴を切り裂くと、そのまま闇に溶けていった。

 二匹目も同様、腕を振るった隙をつく。そう連続で振るうことはできないらしい。右下から斜めに切り上げる。斬った感触がしないのは不気味だが、結果として相手は消滅しているので気にしないでおこう。

「貫け!」

 三匹目は残った刃をすべて射出して撃破。他愛も無い。圧勝だぜ、俺。


 さて、家に帰りたいのだが、どうやら帰らせてはくれないらしい。ビルの隙間から、コンクリートの地面から、自動販売機の影から――あらゆるところから、倒したはずの影がわいて出てくる。

 明日学校だぜ、俺。

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