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レベル19 王様と王妃様

ブックマーク登録や評価など誠にありがとうございます。執筆の励みになっております。

 アオさんが帰っていくと、チャイムが鳴った。

 そのチャイムは授業が終わった合図だ。

 多目的室の外に生徒が集まる。


 双子モデルがいると知った生徒が、双子を見る為に集まった。

 俺とユズはここでは話ができないから、教室へ戻ることにした。


「お話の続きは、お家に帰ってからね」


 ユズはそう言って楽しみなのか、スキップをしながら、教室へ戻っていった。

 ユズはバッドエンドの話をどうして楽しみにするんだろう?


 俺だったら、結ばれない話なんて聞きたくないのに。

 泣くほど悲しい結末かもしれないのに、どうしてユズはいつも、俺の話をちゃんと聞いてくれるんだろう?



 それから放課後になり、ユズと一緒に校門を通る。

 校門を通りすぎてすぐに、俺とユズは腕を引っ張られ、車に乗せられた。


 俺が簡単に車に乗せられる訳がない。

 でも、相手は俺の弱点を知っていた。

 ユズが先に車に乗せられたんだ。


 ユズから離れてはいけないと思った俺は、仕方なく車に乗った。

 車に乗るとユズを安心させるように大丈夫だと言った。


 ユズはうんと言っていたが、不安で俺の制服の裾を握り締めていた。

 そんなユズの手を上から覆い被せるように、俺はユズの手を握った。


「シャッターチャンス!」


 そんな声が聞こえて、フラッシュが光った。

 ユズと俺はフラッシュの方を向くと、そこにはアゴヒゲを生やした怪しいおじさんがいた。


「俺達をどこに連れていくんだよ?」

「そんなの決まってるじゃない? スタジオよ」


 おじさんはオネエさんだった。

 だっておじさんから、ハートがいっぱい飛んでいるように見えた。


「スタジオって何の?」

「君達を写真に撮るのよ」

「それってアオさんとモモさんが言っていた、モデルの仕事ですか?」

「そうだよ。ちょっと乱暴に連れてきちゃったけど、良いのが撮れたから許してね」


 良いのって何だよ。

 ユズが怖がっている所の何が良いんだよ?

 俺はカメラマンを睨み付けた。


「そんなに怒らないでよ。良いのが何枚か撮れたらすぐに帰れるからね」

「その良いっていうのがすぐに撮れるほど、俺達は経験なんてないんですよ」

「君達には兄妹という長年の絆があるでしょう? それでいいのよ」

「プロのように良く見せたりしなくていいんですか?」

「いいの。あなた達の本当の姿を撮りたいの」


 俺達の本当の姿、、、。

 だけど俺達は兄妹なんだ。

 幼馴染みだなんてバレたらいけないんだ。


 ユズを見るとユズも分かっていると言うように、うなずいた。

 隠し通そう。



 それからスタジオに着き、スタイリストさんが準備をしていた服を着た。

 サイズがピッタリで驚いた。


「レン? 学ランなんて懐かしいわね?」


 ユズが俺の着ている学ランを見て言った。

 俺は中学生の時は学ランだった。

 今の制服はブレザーだから懐かしく感じる。


「ユズも懐かしいじゃん。セーラー服なんて」

「懐かしいかな? セーラー服を脱いで、まだ一年も経っていないのよ?」

「やだぁ、ユズちゃんったら、セーラー服を脱ぐなんて言い方しちゃって。おじさん恥ずかしいわぁ」

「キモイ」

「レン、そんなことを言っちゃダメよ」


 カメラマンがキモくて言葉に出てしまった俺に、ユズは苦笑いをしながら言った。

 しかし、ユズのセーラー服姿は可愛い。


 少し、スカートが短い気がするが、それは今だけだけら、我慢しよう。

 俺のユズの、白くて細い足を見せるのは今だけだからな。


「それじゃあ、ユズちゃんはこの椅子に座って机に手を置いて少しだけ頭を斜め下に向けて、レン君はユズちゃんの机に座ってユズちゃんに背中を向けてくれるかしら?」


 俺とユズは言われた通りに座った。

 すると、シャッターの音が何度か聞こえた。

 ユズの様子が気になる。


 少し後ろを向くと、カメラマンに怒鳴られた。

 オネエさんは怒ると怖い。

 でも一瞬だけユズの顔は見えた。


 緊張していて、不安そうなユズが心配になった。

 だから俺は机の上に置いてある、ユズの手を握ることはできないから、少しだけ手を動かして指に触れた。


 ユズ、大丈夫だから。

 俺がいるから。


「良いのが撮れたから、次にいこうか」

「まだあるんですか? 良いのは撮れたんですよね?」


 カメラマンに向かって俺は、嫌な顔をして言った。


「良いのは撮れたけど、もっと良いのが撮れるはずよ。しかし、レン君は良い雰囲気を出すわね。おじさん好きになっちゃうよ」

「キモイ」

「レン、またそんなことを言わないの!」


 不安そうなユズはもういなかった。

 良かった。

 ちゃんと伝わったかな?


「じゃあ次は、レン君が椅子に座って寝たフリをして、ユズちゃんはそんなレン君の顔を覗き込む仕草をしてくれるかな?」


 俺は寝たフリをして、ユズがどんな風に俺を覗き込むのか、チラッと目を開けて見た。

 するとユズは俺と目線を同じにする為に、床に両膝を付けて俺を見た。


 同じ目線でユズを見るのは初めてかもしれない。

 ユズの指が俺の指に少しだけ触れている。

 するとユズと目が合った。


 そしてユズはクスクスと笑い出した。

 オネエさんが怒るぞ。

 そう思っていたのに、シャッターの音が何度も聞こえた。


 ユズが笑っていたから、俺も笑ってしまった。

 すると、俺だけ怒鳴られた。

 何で俺はダメなんだよ?


「次は最後よ。最後だから二人が好きなようにしてくれるかしら?」

「好きなようにですか? それって一番難しいお題だと思うんですけど?」


 俺は迷惑だと言うように、カメラマンに言った。


「最初にも言ったけど、本当の姿を撮りたいの」


 本当の姿は兄妹なんかじゃない。

 それはバレたらいけないみたいだし。

 ユズも困った顔をしている。


 本当の姿の俺達って何なんだ?

 本当の姿が分からない。

 本当の俺は前世の俺?

 本当の俺は今の俺?


 それならユズだってそうだ。

 前世のユズか、今のユズか。

 本当の姿が分からない。


「レン、本当の姿はこの制服じゃないわ」


 ユズの言葉に俺は納得した。

 そうだ。

 本当の姿は今の俺、今のユズ。


 この学ランやセーラー服なんかじゃない。

 そして俺達は自分達の制服に着替えた。

 後ろ姿を撮ってもらうから大丈夫だと、ユズは言った。


 着替えた後、カメラマンに背を向けて二人で立った。

 周りには何にもない。

 俺とユズだけ。


「レン、ただここに立つだけなの?」


 ユズは、少し顔を俺に向け言った。


「いつもの俺達を見せれば満足するんだよ。あのおじさんは」

「いつもの私達?」

「そう。ユズ、俺の婚約者になってよ」

「もう! 今は兄妹なのよ?」

「それなら前世の話を聞いてよ」

「そういうことね。いつもの私達だね」


 ユズは理解したようだ。

 いつもの俺達のことを。


「この前の話の続きをしようか?」

「うん。彼女と東の国の王子様が婚約したところだったわよね?」

「そうだよ。それじゃあ話すよ」

「うん」


◆◆◆


 それからアリスは東の国の王子と結婚をした。

 アリスの言葉を信じて、僕はアリスを取り戻そうとはしなかった。


 アリスが結婚をして一年ほどが経った頃、ある噂が流れた。

 アリスが部屋に閉じ込められ、外出もできなくなっていると。


 僕はアリスが心配になった。

 助けるなと言われたが、人としての生活ができていないと知れば、誰でも助けたくなる。


 僕はギュッと拳を作って耐えた。

 アリスを信じる。

 アリスなら大丈夫。



 それからまた一年が経った頃。

 次の噂が流れた。

 アリスが嫌々、踊らされていると。


 パーティーがある度、踊らされて、パーティーがない日は部屋で、王子が満足するまで踊らされているみたいだ。


 アリスが苦しんでいる。

 僕の我慢も限界だ。

 僕は兵士を集めた。


 僕の国で強い兵士を集めた。

 その兵士と一緒に東の国へ向かうと、僕の国に残る兵士では国に何かあった時、国を守ることができないかもしれない。


 しかし、それよりもアリスを助けたかった。

 苦しんでいるアリスを助けたかった。


 兵士と一緒に東の国へ向かう日の朝。

 一人の女性が僕に会いに来た。


「私はアリスお姉様の妹です」

「アリスの妹?」


 アリスに妹がいるのは知っている。

 アリスの妹はアリスにどこか似ていた。


「アリスお姉様は元気です。王子様。どうか兵士と一緒に、東の国へ向かうのはおやめ下さい」

「アリスが元気だという証拠はあるのか?」

「ありません。でもアリスお姉様の、たった一人の血縁者である私が、ここにいるのです」

「それだとアリスはたった一人で、東の国にいるのか?」

「いいえ。東の国の王子様がいらっしゃいます」

「でも東の国の王子は、彼女をモノ扱いしていると聞いたんだが?」

「王子様。どうか信じて下さい。アリスお姉様も言っておりました」


 アリスの妹は嘘など言っていない。

 アリスの国の人間は、争いを嫌う。


「アリスは元気なのか?」

「はい。いつも元気に笑っております」


 アリスが元気ならいいんだ。

 アリスを信じるよ。

 何を聞いても我慢をするよ。



 それからアリスは足を悪くして踊ることができなくなり、王子に捨てられたと聞いた。

 王子に捨てられたアリスの居場所を、知る者はいない。


 それから少しして、東の国の王子が王様になった。

 王様は王子に王様の地位を譲ったそうだ。

 それから全ての国が変わった。


 全ての国が東の国の言葉で考えを変えた。

 全ての国は助け合うようになった。

 全ては東の国のお陰なんだ。



「お父様。東の国のお方が、お話があると言っておりますが、どうしますか?」

「東の国? 何だろう? 通してくれるかな?」

「はい」


 僕は父親になった。

 でも、僕の血縁者ではない。

 私の娘はアリスの国で拾われた子だ。


 アリスの妹がその子を育てると言った。

 彼女一人では大変だと思い、僕は彼女と結婚をして、娘を二人で育てた。


 とても良い子に育った娘は、アリスのように優しい心の持ち主だ。



 東の国の者は、僕に残酷な話をした。

 それは、アリスの命が僅かだということだ。

 僕はすぐに準備をし、東の国へ向かった。


 僕の様子を見て、心配した娘もついてきた。

 東の国のお城で、景色の良い部屋にアリスはベッドに横になり、眠っていた。


 アリスの手を握り、心配そうに見ている東の国の王様がいた。

 その光景を見て、噂の全てが嘘なんだと気付いた。


 中庭で王様と二人きりになり、全ての真相を聞いた。

 アリスと協力して、全ての国を変える計画を立てたこと。

 嘘の噂を流して王様の地位を奪うこと。


「そうだったんですね」

「あなたには本当に申し訳ないことをしました」

「全ては国の為なんですから。謝る必要はありませんよ」

「いいえ。謝らせて下さい。ワタシが王様になれば、彼女はあなたの元へ帰るはずだったんです」

「アリスが僕の所へ?」

「そうです。ですが、彼女は戻ることができないと言って、残ったんです」

「戻れない?」

「彼女はワタシとの子供を産みました。しかし産んだ時期が悪かったのです。まだワタシの父が王様だったので、男の子ではない子供を殺すように命じたのです」


 僕の国でも昔は、女の子は王様にはなれないからと、殺すか捨てるかだった。

 僕にはどちらもできない。


「それでその女の子はどうしたのですか?」

「彼女が自分の国へ置いてきたと言いました。兵に見つかり、誰かに預けることができなかったそうです。だから生きているのかさえ分かりません」

「その子の名は何というのですか?」

「その子の名は、、、」


 僕は名前を聞いてアリスの元へ走った。

 ドアを開けると、アリスは起きていた。


「お父様。アリス王妃が起きていますよ」

「アリス」


 僕はアリスに近付く。


「王子」

「僕はもう、王様だよ」

「そうですね」

「そうだ。アリスに紹介するよ。この子は僕の娘のアイリスだよ」

「アイリス、、、。とても綺麗な女の子になって、、、」


 アリスは気付いている。

 それなのに自分を母親とは名乗らな。

 アイリスを、混乱させないようにしているんだ。


「アイリス。アリスは君の母の姉なんだよ?」

「姉上なのですか? それなら同じ血が流れているのですね」


 アイリスは嬉しそうにアリスの手を握った。

 アリスも嬉しそうに笑っている。


「彼女の笑顔を久しぶりに見ました。最近は、病気で苦しんでいたので」


 王様が僕の後ろから小さな声で言った。


「アリスとアイリスをお願いします」

「えっ」

「アイリスはあなた達の娘です。アリスの最後の時まで、親子三人で過ごさせてあげて下さい。その後は、アイリスに決めさせて下さい」

「分かりました。本当にありがとう」

「少しだけアリスと二人にさせてくれませんか?」


 王様はアイリスに、城を案内すると言って部屋から連れ出した。


「アリス。会いたかったよ」

「ごめんなさい」

「いいんだよ。あんなに可愛い女の子を娘にできたんだからね」

「ずっと王子とダンスがしたかったんです」

「いいよ。最後の演出は何にするんだい?」

「そうですね。しっかり掴んで離さないで下さい」

「いいよ」


 アリスは立ち上がることさえできないほど弱っていた。

 だから最後の演出だけにした。

 アリスは僕に向かって両手を差し出す。

 僕はアリスの両手をしっかり掴む。


「王子、最後ですよ」

「うん」


 アリスの掴んでいた手を僕に引き寄せた後、手を離す。

 そしてアリスをギュッと抱き締めた。


「これが本当の最後ですね」


 アリスはそう言うと僕の胸に両手を当て、離れようとする。


「もう少しだけ」

「ダメです。離れたくなくなるので」

「えっそれって、僕のことが、、、」

「温かいので」

「そうだよね。アリスはダンスの後、いつもそう言っていたよね?」

「好きだからです」

「うん。アリスは温かいのが好きなんだよね?」

「はい」


 アリスはクスクスと笑っていた。


◆◆◆


「アリスはどうして最後に笑ったんだろう?」

「レンは気付いていないの?」


 話を終えて、俺は疑問をユズに言った。

 ユズは気付いているようだ。


「好きだからよ」


 ユズに好きだと言われてドキッとした。

 ユズの顔を見れないほど、恥ずかしくなった。


「好きって何が?」

「王子様を」

「王子様?」

「温かい王子様です」

「俺? 嫌っ、前世の俺?」

「そうよ」


 ユズはクスクスと笑った。

 アリスと同じように笑ったんだ。

 ユズはアリスの気持ちを分かっている。


「そういえば、泣いていないね?」

「だって、彼女は幸せだったんだよ? そんな彼女の幸せを、涙を流して不幸だって言いたくないもの」

「そっか。バッドエンドじゃないんだな?」

「彼女はバッドエンドにしたくなかったのよ」

「えっ」

「彼女は幸せの国のお姫様なんでしょう?」

「そうだった」

「ハッピーエンドは作れるのよ」


 ユズに言われて気付いたよ。

 どんな形でもいい。

 ユズとは必ずハッピーエンドにする。


 俺とユズのハッピーエンドを作ってやるんだ。

 ユズも俺もハッピーエンドだって思える物語を作ってやるんだ。


 だからユズが必要なんだ。

 ユズと一緒にハッピーエンドを作るんだ。


 俺はユズの顔を見たくて、ユズを覗き込んだ。

 ユズは、カメラマンさんに怒られるよと言いながら、俺の胸を優しく押した。


 ユズの髪の毛を耳にかけてあげると、ユズの顔がよく見える。

 いつものユズ。

 可愛いユズ。


 俺の好きなユズ。

 大好きだよとは言わず、俺は笑った。

 ユズは照れながら笑ってくれた。


「は~い。撮影は終了よ」


 撮影をしていることを忘れていた。

 それほどユズは魅力的なんだ。

 ユズしか見えなくなる。



 それから俺達は家まで送り届けてもらい、その数日後に俺達の写真が雑誌に載った。


「こんな二人はバレンタインから恋人になろう! だってよ」


 妹のサラが雑誌を俺に見せながら、見出しを読んだ。


「何でバレンタインから恋人なんだよ?」

「仲が良すぎて、友達から恋人へ一歩踏み出せないからよ」

「誰だって今の関係を壊したくはないだろう?」

「だから、バレンタインがあるのよ。あなたが大好きですって伝える勇気をくれる日よ」

「俺には必要ないよ。いつでも言っているんだからな」

「お兄ちゃんは分かっていないのよ」

「何を?」


「女の子の気持ちをよ」


 サラはそう言って俺に何かを投げつけてきた。


「バレンタインのチョコよ。コウちゃんに作ったその残りよ!」

「お兄ちゃんには残り物をくれるのか?」

「お兄ちゃんにはそれでいいの」


 サラはコウの所へ行くと言って出ていった。

 サラのチョコは残り物には見えないくらい、可愛くラッピングされていた。


「レン、バレンタインのチョコを持ってきたよ」


 ユズが俺の部屋に入ってきた。

 そして可愛い箱をくれた。


「開けていい?」

「うん」


 箱を開けると色んな形の生チョコが入っていた。


「ユズのチョコは毎年、可愛くて美味しいんだ」


 俺はチョコを口に入れて言った。

 ユズは嬉しそうに笑っている。


「一つ頂戴よ」


 ユズは口を小さく開けてチョコを待っている。


「いいよ」


 俺はそう言ってユズの口に入れる。

 その時、ユズの唇に指が当たった。

 柔らかい唇だった。


「美味しいね」

「うん。今年も手作りチョコをありがとう」

「いつものお礼よ」

「いつもの?」

「前世のお話のことと、、、」


 ユズは何かを言いかけてやめた。


「前世の話と何?」

「ううん。なんでもないの。レン、いつもありがとう」


 ユズは可愛い笑顔で言ったから、俺はチョコのように溶けそうになった。

 何でそんなことを言うのかというと、ユズに言われたんだ。


「ニヤニヤはやめてよ」


 ユズは恥ずかしいからそう言うんだよね?


「ユズ、婚約者になってよ」

「やっぱり、バレンタインでも言うのね」

「返事は?」

「嫌よ。バレンタインの日くらいは、言わないことってできないの?」

「好きだからね。無理だね」

「私だって好きよ」

「えっ」

「美味しそうにチョコを食べるレンをね」

「それって喜んでいいの?」

「お父さんも、美味しそうに食べてくれるから好きよ」

「おじさんと同じかよ」


 落ち込む俺を見て、ユズはニコニコしながら笑っていた。


 俺達のバレンタインは、いつもこんな感じ。

 こんなに楽しいバレンタインは、前世の俺は経験したことはない。


 ハッピーエンドに近付いているのか?

 分からない。

 でも少しだけ期待してもいいのかもしれない。


 ハッピーエンドに手が届くかもしれないと。

読んでいただき、誠にありがとうございます。

楽しくお読みいただけましたら、幸いです。

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