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母への想い  作者: みいま
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~少女時代~

 昭和の戦後長崎県のとある島で美容室経営をしている両親のもと3人娘の長女として生まれたと。

 祖母が佐世保の大型マンションに住んどるけん良く遊びに行ったと。お風呂がなく近所の銭湯に行くのが楽しみやったと。

 母方の女性陣は長寿が多く祖母の母も90まで元気に暮らしていたらしい。


 学校に行く頃には氷で冷やす冷蔵庫やローラー脱水の洗濯機が家にもきて特に白黒テレビがきたときは姉妹3人で大喜びしたのを思い出すと。

 アニメが好きで番組がある日は学校が終わるのをそわそわしてたと。

 ドラマやコント番組で他の家族を見るうちに自営業ではなく、サラリーマンの父専業主婦の母、兄妹祖父祖母なんて家族が一般的だと知った。楽しそうで幸せそうだった。

 自分の家とは違う人生があるのだと知った。

 子供心にサラリーマンと結婚して専業主になり、夫の両親のおうちで子供を産んで幸せになりたいと思うようになっていた。


 中学生になってから勉強についていけなくなり、運動も苦手で友達も出来ず暗くて静かな性格になっていき、学校から早めに帰って妹たちと遊ぶことが多くなり、忙しい両親の代わりに家事をするようになり、更に勉強しなくなった。3年の2学期には進学は諦めるようになった。

 そんなある日同級生に誘われて夜の街に遊びに出掛けた。キラキラしていて大人の騒ぐ声が大きく別世界が広がっていた。夜とはいえ8時には帰宅したが、初めて外食して叱られた。

 翌朝学校へ行き早めに帰って家事をこなし寝る毎日が苦痛だった。美容学校にも入れず未来を悲観して情けなかったときふと街へ足がむいていた。


 素敵な女性が真っ赤な口紅をつけて楽しそうに歩いている中に無言で立っているのが馬鹿に思えた。

 スナックの看板に足を取られて倒れた時に声をかけられた。

 「大丈夫?」

 「…」

 「怪我してない?」

 「…ハイ」

 「よかった」と言って手を引いて起こしてくれた。

 「一人でこんなとこ歩いてたら危ないよ」

と言って焼き鳥やに連れて行ってくれた。

 初めて焼き鳥を食べた。とっても美味しかった心がほころんだ。

 「仕事でも探しとると?」と聞かれたのでうなずくと知り合いの店を紹介すると言われて【スナックミサ】へ連れて行かれた。

 ミサのママは少し地味でおとなしく自分と気が合うと思った。

 「学生さん?何年生?」

 「春に卒業です」

 「じゃあ春になったらうちで働いてくれる?」

 「…」

 頭が真っ白になった。両親に何て言えば…

 次の朝からまた同じ毎日が過ぎて行く。学校で進学か就職か聞かれたので、就職と書いた。

 そろそろ親にも伝えないと…

 結局隣街のレストランに住み込みで就職が決まったと伝えた。

 寮があるので両親は安心して送り出してくれた。十五の春だった。



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