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神々の選んだ錬金術師  作者: すいな
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動土の狼

途端、一瞬にしてその場に重い空気が立ち込めた。学園では決して感じることのない、死がすぐ隣にある気配。

固まって戦えるわけがない。一度気配を消し、態勢を万全にして挑む!

「散開!」

俺が叫ぶとほぼ同時に、ソルド、アシーナ、イシュハは森の中へと消えた。


それを尻目に、俺は二匹に斬りかかる。振り下ろした刃を、彼らは二手に分かれて躱す。

その勢いのまま、ヒュプノの首を狙い、横向きに刀を振る。

残像の残る刃を、彼女は軽々と飛び上がって避けた。

その隙に、ピロテスが俺の足に向かって牙をむいた。白い歯が的確に大動脈を狙う。

地を蹴って飛びずさり、彼の顎に向かって刀を突き下ろす。

顔を横にずらし、それを躱される。わずかに掠った刃は、彼の毛を少し削り取ったに過ぎなかった。

それを追撃しようとしたとき、上空に影が落ちる。首筋に悪寒。

見るより前に体が動く。刀を振り上げ、弧を描くように切り裂く。

僅かな手ごたえ。グルル…という低い唸り声が響いた。

刀を下ろし、構えなおした瞬間、ガラリと音をたてて足元が崩れ落ちた。

間一髪で避け、無事な地面に着地する。

立ちふさがるように、ピロテスとヒュプノが俺の正面を取る。間髪入れず、再び足元が崩れた。それと同時に、ピロテスが俺に迫る。

刀で牙を防ぎ、その刀を捨てると同時に飛び上がる。嫌な音をたて、牙を防いだ刀が真っ二つに折れた。

虚空を錬成、刀を創り出す。右手でがっしりとそれを掴み、落下の勢いそのままに、彼らに向かって振り下ろした。

傷を負い、僅かに動きの遅れたヒュプノの体に、再び刃が入る。切り裂かれた脇腹から、血が滴り落ちる。

その場で立ち止まったヒュプノの背後から、硬質な光が差し込んだ。

ソルドの剣は、正確にヒュプノの首筋を狙う。

それに割り込むように、ピロテスの声が響いた。

「させぬ!」


次の瞬間、ソルドが立っていた場所が一瞬にして崩れ去った。瞬きする間もなく、高い土の壁が俺たちを囲む。

それに呆気に取られていた隙に、ピロテスの爪が寸分違わず俺の首に迫った。

紙一重のところでのけぞり、躱す。首の皮が薄く切れ、じわりと血が滲むのを感じた。

息をつく間も無く、ピロテスの猛攻が続く。刀と牙、爪がぶつかり合う甲高い音が絶え間なく響く。

それに必死になり、俺は徐々に崩されていく足元に気づかなかった。


突然、地面が陥没した。右足を取られ、一瞬姿勢を崩す。その隙を狙い、ピロテスの牙が喉笛に迫る。その奥で、ヒュプノが薄く笑うのがチラリと見えた。

構え直した刀で、ギリギリのところでそれを抑え込む。

次の瞬間、俺の足元が一気に崩れた。背後の高い土壁に遮られ、逃げ場はない。一瞬力が緩んだその瞬間、パキンと高い音とともに、刀が折れた。

抵抗の術はもうない。彼の牙が俺の喉に噛みつこうと、大きく開いた。その時。


バシン! という大きな音が響き、土の壁も、陥没した地面も、一度に元に戻った。

それに驚いたのか、ピロテスの力が一瞬弱まる。その背中に、光の球が勢いよくぶつかった。

呻き声と共に、ピロテスがよろける。何が起きたかわからないまま、俺は飛ばずさって逃げる。それと同時に左手を地面に置き、刀を錬成する。パキン、という微かな音と共に、白く輝く刃が出現した。

キィン! と耳につく甲高い音を捉える。凄まじい速度で音が連続する。

そして、その音が一瞬止んだ。次いでサラサラと何かが流れ去る音が聞こえた。まるで砂のような。

「苦戦してるわね、ニーケ。この地面に錬成痕が残ってること、気づかなかった?」

余裕のある、優雅な声。土煙の中から現れたのは、アシーナだ。

ということは、さっきの音は、分解の音?

そして、地面が戻ったのは、錬成だろうか。

「ヒュプノはもう倒した。ピロテスが来るぞ、気をつけろ」

上空から、イシュハが俺たちに注意を促す。上を向けば、彼女は俺たちのその先を見ていた。

その言葉の刹那、ピロテスの爪が目の前に迫った。

瞬間、背後からソルドの大剣が大きく振られる。

それを避け、ピロテスは大きく飛び上がった。それを追撃し、イシュハの手から炎が飛び出す。

彼は空中で一回転し、スレスレのところを躱す。

着地したその瞬間を狙い、アシーナの刀が迫る。頭を下げて彼はそれを避け、鋭い攻撃を繰り出した。足を正確に狙った攻撃。彼女は間一髪でそれを躱す。

ピロテスの体勢が僅かに崩れた。その隙を狙い、俺は刀を真っ直ぐに突き下ろした。

それを躱し切れなかった彼の目を、突き下された刃が切り裂いた。

ギャー! という苦悶の声が響く。

潰れた片目のまま、彼は乱れた筋で、しかし凄まじい速度で攻撃を繰り出した。最後の足掻きだろうか。

予測不可能な狂爪が、俺の腹を切り裂く。血が飛び散り、俺は思わずその場に立ち止まった。

刹那、ひやりという感覚と共に、首筋にピロテスの牙が触れた。

死の気配が、ぴたりと俺に張り付く。俺は思わず、目を閉じた。


次の瞬間、ドサッという音を立て、彼の体は地に倒れていた。切り裂かれた首筋から、血が溢れ出す。

その血が地面を赤く染めていく。

「…終わった?」

あまりに実感の薄い戦闘終了。

だが、その言葉に、三人はゆっくりと頷いた。

「討伐、完了よ」

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