殲滅戦
飛び出した次の瞬間、眼前に敵が迫った。
太陽の光を弾き眩く光る剣が見える。
反射的に、迫る剣をすべて叩き折り、バランスを崩した隙をいっぺんに切り裂く。
地面に叩きつけられる、べちゃッという嫌な音が複数した。
息を吐ききる間もないまま、襲い掛かってきた分厚い金属の盾を一瞬で錬成、脆くする。
金属が剥がれ落ちていくまま迫ってくる盾と、盾を持っていた魔物を数匹一度に真っ二つにする。
今度は息を吸いきる前に、四方に悪寒。
自分の動体視力が許す限りのスピードで回転、魔物を捉えて首を一閃。
バランスを立て直す間も、間合いに入る敵をすべて薙ぎ払う。
立て直した次の瞬間、空気を錬成。巨大で、恐ろしく鋭利な刃物を創り出した。
前方の敵を一度に叩き切る。
巨大なものが落ちる重々しい音。それに次いで、耳を塞ぎたくなるような呻き声と叫び声が響いた。
一瞬、魔物が慄き、態勢を崩した。
刹那、精鋭たちが俺の後ろから飛び出し、あっという間に周りを斬り伏せた。
しかし、後から後から魔物は湧いてくる。
確かに前進はしているが、敵の量が半端ではない。血路を開くのには何時間かかるだろう。
…埒が明かない。
後ろから出てきた味方が敵を着実に倒しているのをちらりと確認。
地面を強く蹴って、俺は高く宙を舞った。
先頭には、分厚い金属の盾を構えたオーク。その後ろに、クイックゴブリン。剣を持っているから、特攻担当だろう。
隊列の中央にはポイズンスコーピオンを中心とした、直接攻撃よりも相手を徐々に削っていくタイプの敵が牙を剥く。
最後尾からは、弓を構えたフルゴブリンが数十体。ずんぐりした胴には、ご立派な大剣がかかっている。こちらの士気をガンガン下げていく役目も果たしているのだろう。
これは、精鋭も殲滅を手伝った方がいいな。
そして、俺が睨んだ通り、その後ろには本陣が控えていた。
本陣にいるのは、キマイラ4頭、ワイバーン(ドラゴンより一回り小さいが、獰猛だ)1頭だけ。
…おかしい。指令を出す担当がいない。
しかし、それを悩んでいる時間はもうなさそうだ。俺の体は重力に従い、地面へと向かっていた。
右手で刀を握りなおし、左手を地面に向けた。
次の瞬間、敵の体が大きく揺れた。我先にと人間へ向かって行った魔物が、ドミノ倒しのようにどんどん倒れていく。
奴らの立っていた部分だけ、地面が陥没したのだ。
態勢を崩したこの隙を見逃すわけにはいかない。味方が鬨の声を上げ、行き詰っている魔物を次々に斬っていく。
横からも味方がどんどんやってきて、魔物側は防御が追い付いていない。
当然、本陣への道筋が開いていく。
なら俺は、最後尾を片付けるか。
驚きから回復し、弓の雨を降らせようとしたフルゴブリンの傍に着地。
不意を突かれ、動きが止まったのを見逃さず、首を一閃。
慌ててこちらへ弓を向けたフルゴブリン3頭を斬った。
しかし、着地後の衝撃を逃しきれず、体勢を立て直しきれなかった。
スピードが落ち、よろけたその刹那。
眼前には大剣が、そして頭上には無数の矢が迫った。
ほぼ反射で、自分の周囲を錬成、硬い箱で守った。
ごぅんという猛烈な衝撃音と共に箱がきしんだような音をたて、側面にひびが入った。
箱を即座に分解し、フルゴブリンを見れば、再び大きく剣を振り上げていた。
咄嗟に後ろに飛びずさる。
紙一重のところで、剣は俺に触れなかった。
体勢は立て直せた。後はこっちのもんだ。
一瞬で距離を詰め、下からフルゴブリンを切り裂いた。
吹きあがった血のせいで俺を見つけられず、右往左往している奴らを足元から切り崩し、真っ二つにする。
やはり数が多い。このままだとキリがない。
背後に迫った大剣を避け、飛び上がると、無数の刃物を錬成。
フルゴブリンの頭上に狙いを定め、勢いよく降らせた。
頭がかち割れ、俺の術の範囲で残っていたフルゴブリンは地鳴りと共に崩れ落ちた。




