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神々の選んだ錬金術師  作者: すいな
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レアネ

「まもなくレアネに着く。総員、戦闘準備を整えよ。繰り返す。総員、戦闘準備を整えよ」

頭の中で鳴り響いた声が、俺の意識を現実へ引き戻した。ハルの声ではなかった。もう一人の通信士が連絡してくれたらしい。

…そうか、もうレアネに着くのか。体感としてはかなり短く感じたなぁ…。

呑気にそんなことを考えながら、俺は刀を再び取り出し、刃の様子を確認した。

刃こぼれもなく、先刻血を浴びたのが嘘のように輝いている。問題ない。


隣を見れば、ハルがさっきより強張っているのが見えた。心なしか顔が青い。

初陣なのだろう。それならしょうがないが、武器等の確認はしてもらわないと困る。

軽く肩を叩くと、彼はおびえたように体を一度跳ね上げ、伏目がちに恐る恐るこちらを見た。

「ハルはなんの武器を使うんだ?そろそろ確認してもらわないと、戦闘の時に万全の状態で臨めなくなってしまうから」

できるだけいつも通りのトーンを心掛けて、俺は彼に言った。

はっとしたように彼が目を上げ、そして懐を漁りだした。

やがて出てきたのは、数種類の小さい刃物だった。


あまりなじみのない形状のものが多く、俺は思わず彼の手元を覗き込んだ。

それに気が付いたのだろう、少し嬉しそうに彼は話し出した。

「僕が使うのは、だいたい短くて小さい、投げられるサイズのものなんです。まあ、投げるとどんどん数が減っちゃうのでできれば投げたくないんですけど…。

苦無、手裏剣、あとはダガーです。大体ダガーを使うので、投げて攻撃するのはほとんど手裏剣ですね。苦無は予備ってとこです」

そう言いながら、一つずつを掲げて見せてくれる。

投げられるサイズというが、彼の体格を考えると投げるのには少し重そうだ。しかし、投げる攻撃ができると言うくらいなのだから、得意なのだろう。凄いな…

感心して眺めていると、彼は腰のベルトにそれらを挟んだ。

気が付けば、馬車が減速を始めている。

あまり遠くないところから血の匂いと死臭、武器がぶつかり合う音がする。

馬車がさらに減速し、静かに止まった。どうやらもう着いたらしい。

今度はハルの声で、指示がなだれ込んできた。

「到着した。総員馬車を下り、司令官の指示通りに動け。この声で連絡を行う。繰り返す。総員馬車を下り、司令官の指示通りに動け。この声で連絡を行う」

連絡が届いたようで、総員が静かに馬車を下りたのが見えた。


馬車が止まった場所は、ウィヨンの時と同じように築かれた、石造りの砦の裏だった。前線の正面に位置する。

すぐ近くまで魔物が迫り、刃を交えている音がする。常に血と死の匂いが届き、時折響く断末魔の悲鳴や鬨の声が耳に入る。それだけで、初陣であろう兵の顔は青くなっていた。

本当なら大きな声で彼らを鼓舞したいところだが、魔物にこちらの存在がばれて増援を呼ばれたら面倒臭い。

俺は逐一ハルに言いたいことを伝えることにした。

「今から、出陣前に言ったように2組と精鋭に分かれて、魔物の軍を横から切り崩す。ただ、これは基本の策だ。陣形が変化していたり、横側からでは攻めにくそうな場合、副司令官と参謀に指示を一任する。右側から攻める人たちに指示を出すのは副司令官、左は参謀だ。だから指示が必要な場合、この声での指示を待たないこと。ここまでいいか?」

ハルにそこまで伝えて連絡してもらうと、全員が強張った顔で頷いた。副司令官と参謀の連絡を担当する通信士の声もそれぞれの組の全員に把握してもらった。もともと連絡を出す訓練もしていたから、混同対策はとれたと思う。


「次に、精鋭部隊。そこには司令官も行く。連絡はこの声で行う。脇から迂回するのは時間のロスになる。ど真ん中を突っ切っていくつもりでいるが、いいか?」

俺がそう伝えると、わずかにではあるがどよめきが起きた。無理もない。危険な作戦だ。

説得になるかはわからないが、俺はさらに付け足した。

「先頭は俺が進む。血路は俺が開くから、ついてきてくれ」

本来、司令官という中枢に値する人物が先頭を進むのはナンセンスだ。中枢が崩れれば、軍が崩れる危険性が増す。

しかし、この場合は俺が進んだ方が圧倒的に早く、兵の士気も上がる可能性がある。「中枢が戦っているのなら、俺だって」という具合だ。

…正直うまくいくかはわからないが、やらないよりはマシだ。

どうやら兵たちも、この一言で意志が固められたらしい。俺を見て、全員が深く頷いた。

それを見て、俺は作戦の解説を止めた。


「何度も言うが、ここの戦況は俺たちの働きにかかっている!全員が全身全霊で戦おうじゃないか!今、できる限りのことをやるぞ!」


ハルの声ではあるが、俺は刀を掲げ、彼らに向かってそう言った。

彼らもそれに応え、各々の武器を天に向けて掲げた。

全員の意志が一つになったのを確認すると、俺たちは3つに散った。

一つは右から、一つは左から、そして一つは正面を。


さあ、行くぞ。


戦場を前にした昂ぶりをそのままに、俺たちは砦から飛び出した。

戦闘までがえらく長くなりました、すいません。

次回、本格的に戦闘が開始します!

楽しみにしてくださるとうれしいです!

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