奇襲
俺たちは隊列を崩さずに中庭を出て、正門の馬車に乗り込んだ。
補給車は、馬車の隊列の中に混ざるように走る。俺とハルはその護衛のため、補給車の中に乗った。
水が入った筒に、干し肉など長持ちする食べ物が入った木箱がぎゅうぎゅうに詰め込まれていて、人が一人乗るのが精いっぱいのような有様だった。
まあ、ハルは小柄で、俺はそこまで肩幅が広い方ではなかったため、どうにか入ることができたが…
何十分馬車に揺られ続けただろう。不意に、外から殺気をわずかに感じた。
俺はそっと幌から外を覗いた。
思った通り。現在、この馬車群は細い道を縦長になって通っている。横から襲われる可能性がある、と見ていたポイントだ。横は、崖とまでは行かないが、傾斜がついた、土が剥き出しの坂。
魔物の姿はまだ見えない。だが、殺気は確かに濃くなってきつつある。
俺は、強張った顔で俺の横に座っているハルを軽くつついた。
彼は、緊張の呪縛から抜けたのだろう。びくっと体を震わせてこちらを見た。グレーの目がぱっと輝いた。
彼の耳元に口を近づけ、俺は彼に囁いた。
「敵が横の坂から近づいている。全員に連絡できるか?」
途端、彼の目が緊張の色に染まった。
驚いて声が出なくなっているのだろう。彼は目を見開いたまま、何度も頷いた。
次の瞬間、俺の頭の中に声がなだれ込んできた。
「横の坂から敵接近中、直ちに戦闘準備、警戒を」
途端、周りの馬車の気配が緊張した。
どうやら、全員に情報が回ったようだ。
俺も刀を抜き、幌から外を覗いた。
目を凝らすと、坂の上から何かが降りてくるのが見える。
再びハルをつつき、馬車を減速するように情報を回してもらった。
馬車が減速したのを感じた時には、もう魔物が迫っていた。
来ている魔物は、ざっと20匹程度。そこまで強い魔物ではない。
…一人で行けるな。
俺は刀をきつく持ち直し、馬車から飛び出した。
勢いをつけて刀を上から下に振り降ろし、手近な魔物を2匹真っ二つにする。
一瞬空白の時間が空き、そして次の瞬間、血が吹きあがった。
それに怯んだ隙を見て、周りの奴らの首をスパッと斬る。
幸いにも間合いに入らず、逃げようとした奴らも、空気を反射的に錬成して刃を創り出し、狙いを定めて投げた。
全部の体が崩れ落ちるのを最後まで見届けると、死体の下の地面を抉り、土に埋めると、俺は斜面に背を向けた。
馬車のスピードが上がり、揺れがもとに戻るまで、俺は無言で坂に向けて手を合わせた。




