用意
翌日。
俺は朝早くから起きて、外に出た。準備体操をするためだ。
流石に何も用意しない状態で出陣するわけにはいかないからなぁ…
薄い青色と橙色の空を眺めながら、俺は伸びをした。
朝のひんやりとした空気を孕み、風が俺の頬を軽く撫でた。
両足のコンディションを入念に整えると、俺は地面を蹴った。
疲れすぎないよう軽くジョギングをして帰ってくると、姉さんはもう朝ごはんを作って机に並べているところだった。
アシーナ、ソルド、イシュハももう椅子に座っている。
「ごめん、遅くなった」
靴の泥を落としながら、俺は姉さんに謝った。
全く気にする風情を見せず、姉さんはにっと笑った。
「今日出陣なんでしょ?その準備に行ってきたならとやかく言えないさ。ほら、冷めるよ」
姉さんの言葉に従い、俺は席についた。
出陣を意識してかはわからないが、朝から豪勢に豚肉だ。
俺たちは手を合わせると、勢いよく食べ始めた。
食べ終わると、俺は刀を整え、軍服に袖を通した。
部屋を出ると、目の前にアシーナが立っていた。
制服ではなく、昨日買った服を着崩している。
「ニーケ。私たちは行かない方がいいよね?この前は他のところを討伐してくるって言ったけど、ニーケがいないとなんか落ちつかなくて…」
髪を軽く束ねた姿で彼女は言った。
赤面しそうになるのを精神力で必死で抑えながら、俺は頷いた。
恐らく、彼女たちが来たら兵の仕事がなくなる。
どうやら俺が言わずとも彼女はそれを察したらしい。にこっと笑うと、自分の部屋へ戻ろうとした。
「あ、ちょっと待って」
咄嗟に、俺は彼女を呼び止めた。
驚いた表情で振り返った彼女の近くに顔を寄せ、俺は囁いた。
「今回行くのは、現在の最前線だ。今まで軍が出陣するようなところに15柱獣が出てきた例はなかったと思うが、今回はわからない。兵の仕事がなくなるのは少し困るけど、いざ出てきたときに俺一人でそれに対応できるとは思えない。だから―――言い方は悪くなっちゃうけど―――保険的な感じでついてきてくれないかな?」
彼女は少し考えたのち、頷いた。そして、俺に視線を合わせた。
「任せて。精いっぱいのバックアップをするよ」
頼りがいのあるそのセリフに、俺は微笑んで頷いた。
「今日の出陣場所はレアネ。君たち三人がその近くの戦場に加勢してきてからこちらに来ても、時間はあると思うよ」
俺のセリフに、彼女は頷いた。
「それじゃあ、行ってくるね」
俺がそう言って離れると、彼女はふわっと笑って手を振った。
軽く手を振り返すと、俺は家を飛び出した。
城へはあっという間についた。門の前には、エクセレスと姉さんが人待ち風情を漂わせて立っていた。
どうやらエクセレスの方が先に俺に気が付いたらしい、姉さんにこそっと耳打ちしたのが見えた。
姉さんはそれを聞いたうえで初めて俺を認識したようだ。元気に手を振れているあたり、昨日ちゃんと休めたようだ。
「あー、ニーケ!昨日はありがと!おかげで仕事がさっさと済んだわ!」
ぶんぶん手を振りながら、姉さんは元気よく言った。
温度差が半端ではなく、なんとなく白けながら俺は答えた。
「…そっか。よかった」
「今日は出陣の用意に来たのよね!イシュハとソルドとアシーナちゃんは連れてこなかったのね?」
テンションを下げることなく、姉さんは言った。
「まあ…あの二人連れてきたら絶対軍の仕事なくなるし…」
俺も同じテンションのまま答えた。
「それもそうね!じゃあ、軍の駐在地に行ってきてね!準備が整い次第、連絡しに誰かを向かわせるから、それまで作戦とか説明してて!」
「わかった」
俺は軽く頷くと、中庭に向かった。




