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神々の選んだ錬金術師  作者: すいな
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錬成痕

次に目が覚めた時、外はまだ日の出前の闇を湛えていた。

もうひと眠りしようかとも思ったが、昨日寝たのがかなり早かったこともあり、眠気はやってこなかった。

「しょうがない、起きるか」

自分に気合を入れるため、ぼそっと呟くと、俺は毛布をはねのけて起き上がった。

クローゼットを開け放ち、着る服を探すためにハンガーを脇へどかした。


不意に、後ろに気配を感じた。

思わず近くの刀を手に取り、柄に手をかけながら振り返った。

そして、動きが完全にストップした。

全く音をたてることなく、イシュハがするりと部屋に入ってきていたからだ。

柄に手をかけたまま、しかし警戒は一応解いて、俺はイシュハを見た。

「なんの用?まだ朝早いけど」

俺の問いかけにイシュハは答えず、無言で俺を手招いた。

自分の服装を見れば、昨日のままだ。乾いた血がついているが、外には出れる程度の量。

俺は上着をさっと羽織り、イシュハについて行った。


イシュハが進んだのは、城と真逆の方向。

かなりのスピードでイシュハが進むため、俺は朝から全力で走らなければならなかった。

複雑に入り組んだ王都の道を迷うことなくすいすい進み、そして途中から入った森でも、何かの目印があるかの如く全く迷う素振りを見せなかった。

…一体俺は、どこに連れていかれているんだろう。

気が付けば朝日が昇り、東の地平線を明るく染め上げていた。

要するに俺は、かなりの時間を走らされていることになる。


やがて森を抜けた。

辿り着いたのは、荒れ果てた野を見下ろす崖だった。

イシュハがようやく進むスピードを緩めた。

俺はそれに従い、上がった息を整えながらスピードを緩めた。

イシュハは、ついに俺を振り返った。

「私が見せたかったのは、ここの様子だ。無言で連れてきて悪かった。が、言っても慌てるだけだろうと思ってな」

俺は深呼吸を一つして息を完全に戻すと、イシュハに向かって口を開いた。

「ここが魔王領?ずいぶん荒れたところなんだな」

彼女は首を縦に振り、下を指さした。

俺はそれに従い、下を見下ろした。

そして、思わず息をのんだ。


眼下に広がっているのは、無数の動物の骸だった。


俺はゆっくりとイシュハを振り返った。

彼女は暗い顔で、口を開いた。

「知ったのはつい最近だ。この国の軍の奴らに捕まる直前だったな。理由は忘れたが、あの空間に迷い込んだ。あの動物たちは全くの無傷で、体格が大きく強そうな者たちだ。そんな骸が、偶然ここに集まるはずもないだろう。それに、こんなところに人間が入ってきたらそれこそ瞬殺だ。だから、これは魔王軍の何者かの仕業。そして、魔王の手の者だろう。思わず鳥肌が立った。なぜこんなに骸が大量にあるのかわからなかったからな」


…確かにこの様子を間近に見たら、鳥肌が立つだろう。同時に、不気味さと少し歪んだ好奇心も浮かぶ。

恐らく、イシュハはこれにショックを受けたせいで人間の領域に出てきたときに捕まったのだろうな…

俺は口を開いた。

「わからなかった、ってことは、今のお前にはわかっているってことなんだな」

イシュハは肯首した。

「ああ。お前らに会って、錬金術を使うのを見てからだな」


なんとなく悪寒がした。

それでも、俺は続きを促した。

「私は錬金術を見て、どことなく既視感を覚えた。で、自分の体を隅々まで調べてみたんだ」

そういうと、彼女は洋服を軽くめくった。

俺は思わず目をつぶった。

それを認識したのだろう、イシュハが慌てた声で言った。

「目をつぶられるとわからない。目を開けてくれ」

俺は恐る恐る目を開けた。


それを見ると、イシュハは自分のわき腹を指さした。

「ここをよく見てくれないか」

俺は首を傾け、イシュハが指さしたところを凝視した。

…わずかにだが、何かの痕が残っている。なんとなく見覚えがあるような…

そこまで考えた瞬間、稲妻に打たれるように俺の中で思考が完結した。

いままで欠けていたパーツが音をたてて組みあがるような、はっきりとした感覚。


どうやら俺の思考に気が付いたらしい。イシュハは満足げに微笑を浮かべ、服を戻した。

「気が付いたな。そうだ、この痕は…」

俺はその言葉にうなずき、言葉を引き取った。

「この痕は、錬成痕だ。つまり、お前は、少なくともお前の体は」

「私の体は」

「「魔王に錬成されて、作りだされたものだ」」

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