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神々の選んだ錬金術師  作者: すいな
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躊躇い

勢いを活かし、思いっきり飛び上がって敵の頭を踏みつける。

それに怯み、歩みが止まった瞬間に広域錬成であたりを串刺しにした。

どうやら一番前に歩兵として投入されたのは、普通のゴブリンのようだ。

ほとんど手応えのないままあっという間に薙ぎ払う。

その後ろに控えていたクイックゴブリンも同時に串刺しにされていたようで、もう息はなかった。


錬成を続けながら敵の大群の上を駆け、めった刺しにする。

…正直、錬金術で敵をほとんど全部倒せるから、刀を振る必要はほとんどなかった。

数えられないほどの大群は、俺とアシーナの広域錬成とソルドの二本の大剣によって倒され、あっという間に戦闘不能へ陥った。

慌てふためいて逃げようとする魔物が、イシュハによって吹き飛ばされているのは見えたが、あとは知らない。

時折こちらに跳ねる血を拭いながら、俺は一番奥の参謀を狙って走り続けた。


驚くほどのスピードで俺は大群を抜けた。

拍子抜けして、反射的に後ろを見た。


…死屍累々とはこのことを言うのだろう。

まさにそれは死体の山だった。

大剣によって真っ二つに斬られた死体もあれば、俺たちの錬成にあってめった刺しにされている死体もある。

死因も様々、種別も様々、そんな魔物の屍が俺たちの背後にびっしりと並んでいた。

鼻をつく死臭が漂ってくる。

思わず、俺は左手で顔を抑えた。


突然、後ろから殺気を感じた。

首筋が粟立つ。

反射的に下ろしていた右手を遠心力と共に思いっきり振り、相手の首筋のあたりへ刀を押し付けた。

殺気はそのままに、相手の動きがびたっと止まったことが分かった。

「誰だ」

俺は低い声で言うと、冷たい目で相手を振り向いた。

宝石のように澄んで輝く水色の瞳をぎらつかせ、薄い羽根を持つ人間のようなモンスターが、俺の首筋を正確に狙っていた。


「俺は、15本の柱モースに仕える参謀、名はシルヴァンだ。人間風情がなぜここに来る」

俺の問いに、彼は恐ろしく冷たい声で答えた。

俺は刀を首筋に当てたままシルヴァンに向かって口を開いた。

「お前らが人間の生活圏を脅かすためだ。お前らこそなぜ人間の生活を脅かすんだ?」

シルヴァンは馬鹿にしたように俺を鼻で笑った。

「そんなもの決まっているだろう。魔王クロト様の(めい)だからだ。クロト様の命こそ俺たちの生きがい。そこにいる、薄汚い女狐と違ってな」

そういうと、彼はイシュハを思いっきり軽蔑した目で睨んだ。

イシュハの方も、彼を思いっきり哀れみの目で見降ろしていた。


「言ってくれるな、思考が停止した負け犬。お前らと違って、私は思考がちゃんと働いている。ただ一人の命を生きがいと感じる様な思考停止野郎に女狐とは言われたくないぞ、シルヴァン」

思いっきり辛辣な言葉を投げ、イシュハはシルヴァンを見下した。

シルヴァンの眉間に青筋が浮かび、次の瞬間、シルヴァンの姿はイシュハの目の前にいた。


あまりのスピードにイシュハが対応できていない。

シルヴァンはイシュハめがけ、狂気を孕んだ目で苦無を振った。

俺は刀を振りかぶった…


頭ではわかっている。彼を殺さなければイシュハが死ぬと。

が、わずかに躊躇いが残った。

彼はイシュハの同僚だ、という事実が俺の動きを一瞬鈍らせた。

イシュハの首へ、苦無の先端がまっすぐに打ち込まれる寸前まできていることを認識しながらも、俺はその動きの鈍りを治すことができなかった。


甲高い音がして、シルヴァンの苦無が叩き落された。

驚きに目を見開き、状況を把握できていない彼の首を、正確な弧を描く白い光が断ち切った。

躊躇いなく刀を振り、シルヴァンの首を斬ったのはアシーナだった。


次の瞬間、シルヴァンの首は地に落ちた。

宝石のように輝いていた目の光が鈍くなり、そして消え去った。

とさっ、という軽い音を立て、草原に彼の体が横たわった。

後に残ったのは、血の付いた刀を持ってシルヴァンの屍を眺めているアシーナの姿と、静まり返ったイシュハとソルドの姿だった。

…刀を硬く握っているアシーナの手が、僅かに震えていた。


俺はシルヴァンの屍に近づき、無限収納に仕舞った。

顔をあげ、俺はアシーナとソルドを見た。

感情が全く読めない黒い目と、動けなかったことに後悔を残した青い目が俺を見ていた。

「討伐完了。帰るぞ」

俺は機械的に告げると、刀を腰に仕舞った。

「「「了解」」」

アシーナとソルド、イシュハも機械的に答えた。


背後にある大量の屍の下の地面を錬金術で一気にえぐり、屍を土の中に埋めた。

そこまで済ませると、俺たちは無言のまま草原を去った。

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