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神々の選んだ錬金術師  作者: すいな
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48 「「ニーケ、鬼だ…」」

俺は、軍の奴らにお灸をすえると、まっすぐ姉さんのいる執務室へ向かった。

扉を3度叩いて入ると、姉さんがげっそりした顔で大量の資料の前に座っているのが目に入った。

「やあ、姉さん。大丈夫そう?」

俺が声をかけると、げっそりした顔のまま姉さんがこちらを向いた。

「ああ、ニーケ。おかえり…。母さんすごいね…こんな量の資料をすいすい片付けてたんだもの…」

俺はうなずいた。

慣れの問題もあると思うが、あれほどの量をあっという間に片付ける情報処理能力は目を疑う。

「その通りだよ。せっかくだし、手伝おうか?」

俺が提案してみると、姉さんは机に突っ伏して言った。

「お願いします…」


「うおぉ…やっと終わった…」

「終わったわぁ…」

仕事がようやく終わったのは、日が暮れた後だった。

たしか、おととい上弦の月だったから、今は夜7時くらいだろう。

「しっかし、半端じゃないな。この量は」

「そうよ。途中でエクセレスが来て『魔王復活を国民に告げます』なんて言ったから余計に仕事が増えたわ。彼も彼で仕事は半端じゃないはずなんだけど、流石は母さんの宰相ね…採用して正解だったわ」

姉さんも俺も机に突っ伏して雑談をした。


「あ、俺、軍のカリキュラム作んなきゃ」

俺はがばっと顔を起こして、近くにあった紙とペンを引きよこせ、カリキュラムを書き始めた。

「大変ねぇ、がんばって。私は明日の魔王復活の発表練習をしなくちゃ」

姉さんはそういうと、気合で立ち上がって執務室の椅子に座り、原稿を読み始めた。


「おはよう、ニーケ。どこにいるのかさっぱりで、結構探したのよ?ソルドと」

不意に頭上から声が降ってきた。伸びをして目を開けると、アシーナが目に入った。

その隣には、ソルドが立っている。

「ああ、おはよ、二人とも」

俺がのんびり言うと、ソルドが笑顔で返してきた。

「おはよう!ニーケ、書いていたカリキュラムは軍用か?」

「ああ。軍の奴らの堕落具合が凄くて」

俺が頷くと、アシーナが納得したように手を叩いた。

「なるほどね。ずいぶん基本的なことから書いてあるわ、と思ったらそういうことだったの」

「そういうことさ。今手元にないみたいだけど、持って行ってくれたのか?」

俺は顔を上げて二人に聞くと、二人とも頷いた。

「応!軍の位置を総理大臣兼宰相殿に教えてもらってな!」


執務室から出て、3人で並んで廊下を歩いた。

お互い、一言も喋ることがなかった。

アシーナとソルドは、何か思い詰めているような顔をしていた。


執務室から100メートルくらい歩いたところで、ソルドが深刻な顔をして俺に話しかけてきた。

「なあ、ニーケ。俺たち、お前よりも弱いよな。15柱獣に対してろくに立ち向かうこともできない」


ソルドはそういうと立ち止まった。そして、下げていた顔を上げて俺の目の前に立った。

それにならい、アシーナも俺の目の前に立った。

二人に立ちふさがされたような形で、俺も立ち止まった。

ソルドは一息大きく吸うと、思いをすべて吐き出すような勢いで、叫んだ。

「でも、それじゃあ一生お前に頼りっぱなしだ!頼む!俺たちに、稽古をつけてくれないか!?」

そして、彼らは一斉に頭を下げた。


俺はどうしてよいかよくわからず、しばらく立ちすくんでいた。

10秒ほどたっただろうか。

二人が顔を上げた。二人の目と、俺の目が合った。

その目は、物凄く真剣だった。

俺は微笑んだ。

「俺で良ければ、稽古だって手合わせだっていくらでも」

二人の顔が、徐々にほころんでいくのがわかった。

「「ありがとう、ニーケ!」」


俺は微笑みをキープしたまま、二人に向かって言い放った。

「じゃあ、俺と手合わせして10分間持ちこたえられるようにしよう。そしたらきっと15柱獣に対しても互角に戦えるようになるさ。ってことで今日は鬼ごっこをしようか。範囲はこの街全部。鬼は二人。30分以内に俺を捕まえる。これがルールだ。いいな?」

二人の笑顔が硬直した。

数秒後、ソルドが恐る恐る口を開いた。

「…ニーケ。最初の15柱獣と戦った時、お前何分で倒した?」

俺はちょっと考えた。

感覚だと1時間くらいかかった気がするのだが、実際日の傾き具合を思い出すと…


俺は笑って言った。

「8分くらいかな?」

二人が、思いっきり脱力したのが分かった。

「…そんな頭おかしい強さのあなた相手に、10分持ちこたえろと…?」

「ましてや鬼ごっこだと…?」

二人は、思いっきり非難の目を俺に向けてきた。

「「ニーケ、鬼だ…」」


二人の愚痴を聞き流し、俺は手を叩いた。

「じゃあ、20秒後開始ね!数えといて!」

俺はそう言い残すと、まだ言いたいことがありそうな二人を後目に走り去った。

最後、二人がため息をつきつつも笑顔を浮かべたのを俺は見逃さなかった。

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