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神々の選んだ錬金術師  作者: すいな
43/95

43 いざ、参る

戴冠式が終わるや否や、姉さんが俺に近づいてきた。

顔が怖い。それに加えて結構な速さでつかつか近づいてくる。

げ、怒られるのかな…

俺が体を硬くして待ち構えていると、

「ニーケ、今までいじめたりしてごめんなさい!」

姉さんが、頭をものすごい勢いで下げた。

冠はもう外してあったから無事だった。

隣で冠を持たされている少年が、わたわたした顔をしていた。

…ん?てか今俺、謝られた?あの超プライドの高い姉さんから?


「な、なんで謝るの姉さ…じゃなくて女王様!みんな見てるよ!女王様が人前で頭下げるってどうなの!?」

俺は慌てて小声で姉さんに言った。

そりゃ慌てるさ。この国において女王様の言うことは絶対、ってくらいに女王様は家臣と超越した存在なのだ。謝ったら権威に関わるようなことだ。しかも、一応無職認定の俺に謝るなんてとんでもない。


俺がそう言うと姉さんは顔を上げたが、表情はしょげたままだった。

「私、子供のころから、教育係の大臣に偏見を植え付けられてたの。『ニーケ様は王家にあるまじき人だ。王家の者なのに茶髪で、なおかつ勉強も手伝いもせずに遊びまわっている。』って具合にね」

姉さんは俯いたまま、そう言った。


おい、姉さんにそんなこと刷り込んだくそやろ…失礼しました。教育担当は誰だ。

…確か、姉さんの教育係の大臣は国の軍事を担当していたはずだ。

でも、今その座は俺が射止めた。

…なるほど、きっと歯をぎりぎり鳴らして悔しがっているだろう。

というか、王家の人だと茶髪はダメなのか?初めて聞いた。

まあ確かに、今まで見てきた肖像画の中に、金髪以外の髪色の人を見たことがないな。


姉さんの反省の言葉はまだ続く。

「ニーケが学園に行ってから、あなたの教育担当に無理言ってあなたの成績を見たの。正直に言うとあなたを馬鹿にするために。でも成績を見たら、ニーケが凄く優秀だってわかったわ。私、あんな問題であんな成績とれないもの。さらにね、学園の方からうわさが流れてきたのよ。風の噂。『王家出身の落ちこぼれのはずなのに、物凄く強くて物凄く優秀な生徒がいる』って。私、それを聞いて反省した。人の言うことを鵜呑みにしたらいけないって」


姉さんはそこまで一気に言うと、もう一度頭を下げようとした。

俺は慌てて手を出して、それを防いだ。

これ以上頭を下げさせたら俺の立場がなくなるよ!


姉さんが立ち去ると、今までこのやり取りを見ていた野次馬(大臣や各国のお偉いさん)もわらわらと立ち去った。

4人を除いて。


「なあニーケ、あ、失礼しました。新エレメント王国軍総司令官。本当にこの地位についてよかったんですか?大丈夫ですか?もしよろしければ私たちがサポートいたしますが」

薄ら笑いを顔に張り付け、俺に憎しみの視線を向ける兄さんと大臣が近づいてきた。

話しかけてきたのは長男、ジェロ兄さんだ。

兄さんたちは思っていたより、ずっと背が低く見えた。

昔は俺、背が低い方だったから致し方ないか。


俺は今や兄さんたちより高くなった身長と、死線をくぐってきて身に着けた殺気をうまく使い、絶妙に脅しながら堂々と言った。

「いや、俺の実力で十分だ。申し出はありがたいけど、辞退させてもらう」

立場上としても、人間としても格下の奴らに敬語を使う気はない。


どうやら兄さんたちにとって、俺の態度はずいぶん癪に障ったようだ。

眉間に青筋が立っていた。

「ほう、それならその実力とやら、見せていただきましょう。それほどまでに自信があるなら、私たち4人くらい、殺さずに動きを仕留められますよね?」

次男、アロガンが嫌な笑顔で言う。

それを合図にするかのように、残りの3人は剣を抜いた。

俺はため息をついた。

「わかった。それほどまでに実力差を見たいなら、俺は素手で戦うよ。それで文句ないだろ?」

あきれた声音で言うと、兄さんたちの怒りは最高潮に達した。

「馬鹿にするんじゃねえよ!ああ、お前なんかぶっ殺してやる!」

そう叫ぶと、一気に俺に襲い掛かってきた。


どうやらあっさりと本性を出してしまったようだ。

見下げた奴ら。俺よりこいつらの方が王家にふさわしくないんじゃないか?

それにしても、遅すぎる。

こいつらも学園に行ってしごいてもらった方が強くなるだろう。


ひょいと避け、俺は首筋を軽く叩いた。

4回ともクリーンヒット。

兄さんたちはばたっと倒れた。

恐らく何が起きたかわかっていないんじゃないだろうか。


「…帰ろ」

あくびを一つすると、俺は家に帰ろうとした。


不意に、空気が重くなった。

…この感じ、ケーリの時の。

「まさかとは思うが…王都に、それも城の中に15柱獣が出てくるとかは、無いよな?」

俺は冷や汗を流しながら、虚空に呼び掛けた。

「そのまさかだ。錬金術師」

虚空から返答があった。


透明な奴と戦うというわけにはいかない。

俺は気配でなんとなく把握できるから俺だけの時ならいいが、この城の中には15柱獣に太刀打ちできるはずのない人たちがたくさんいる。

俺は交渉を持ち掛けた。

「姿を出さないか?もともとの戦力差が半端じゃない上に、俺は人々を守らないといけない。さすがにアンフェアすぎる」

ワンテンポ間があった。

「…お前にとっては残念なことに、拙者はこの姿で完成形、透明なのは元々なのだ。よって、姿を見せるのは不可能だ」


「じゃあ、お前の得物だけでも教えてくれないか?」

俺は提案した。それだけなら許してくれるだろう。

思った通り、動く気配がないまま、虚空から声が返ってきた。

「それだけなら良い。拙者は、魔王クロトに忠誠を誓う者、そして魔王を支え、人間どもを殲滅する15本の柱の一角。二刀流の最凶刀使い、オイジュだ。お前に、拙者に匹敵するくらいの実力があることを期待しているぞ、右手刀の錬金術師」


ぞわっと鳥肌が立った。

ケーリよりも数段上の実力。

恐らく俺より少し上だろう。

それだけなら、錬金術を使って勝てる。

だが、ここは城の中。守る人が大量にいる。

それに加え、相手は透明で姿が見えない。

「…これはヤバいぞ」


殺気が増し、刀を抜き放つ甲高い音がした。


「いざ、参る」


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