41 女王様がっ!
辞表を書いて、2週間がたった。
ついに、ソルドが復活した。
「やあ、ニーケにアシーナ!心配かけてすまなかったな!もう大丈夫だ!」
彼はびっくりするくらい明るい笑顔で俺たちに言った。
「戻ってきてくれてうれしいよ、ソルド」
「ええ、嬉しいわ!」
俺たちも、彼に満面の笑みを返した。
ソルドが復活したお祝いに、俺たち三人はアシーナ行きつけの店に行った。
俺はソフトドリンクで、二人はビールの大ジョッキで乾杯する。
ソルドは、久しぶりの酒で嬉しそうだ。ものすごい勢いでジョッキを空けると、すぐに2杯目を頼んでいた。
ソルドが3杯目を頼んだころ、俺は本題に入った。
「退院早々衝撃的な話になるんだけど、いい?」
「全然かまわないぞ!なんだ、話してみろ!」
ソルドは全然酔った様子もなく、俺の話を聞く姿勢になった。
「お前が入院している間な、俺とアシーナで話し合ったんだよ。このまま魔王討伐軍に入っていたら一生魔王討伐が終わらなさそうだから、辞めて自由に討伐に行こうって。で、お前も一緒にどうだ?」
軽めのノリで、俺は提案した。
ソルドは数秒考え込んでいた。
が、すぐにいつもの笑顔を作った。
「応!俺もそうするぞ!アシーナが計画を立てているのだろう、きっと。じゃあ大丈夫だ!」
アシーナはにっこり笑った。
「決断速いわね。いいことだわ。じゃあ、明日にでも辞表を提出しに行くわよ!」
「そうしよう!よし!今夜は俺がおごる!」
俺はグラスを掲げて叫んだ。
二人は大きく拍手した。
「「ニーケ、流石!よーし、飲むぞお!」」
翌日、俺たちは本部長のもとへ辞表を持って行った。
ちなみに元気なのは俺だけで、残りの二人は羽目を外しすぎたせいで二日酔いだ。
すごく顔色が悪い。
まあ、俺も身体的には元気だけど、財布が空になったせいで精神的にやられてるけどね…
本部長は、同時に突き出された3枚の辞表を見て、目を白黒させている。
「え、ええと、3人同時に辞表提出、ですか…」
「「「はい」」」
俺たちは、氷点下に近い声のトーンで言った。
「わ、わかりましたぁ…受理しますね…」
本部長は恐る恐る辞表を引き出しにしまい、きょどりながら俺たちを見た。
「ええ、ええと、あの…では、部屋から荷物を全部持って、出て行ってください…」
「「「わかりました、失礼します」」」
もはや視線まで氷点下に達した俺たちは、一礼すると部屋から出て行った。
最後、本部長が大きく安堵のため息をついていたのを俺は聞き逃さなかった。
3人分の部屋の荷物を全部俺の無限収納に突っ込み、俺たちは本部を出て行った。
出ていく前に、リンにはちゃんと連絡した。
リンは俺たちと一緒に行きたそうだったが、流石に仕事をほっぽりだして行くわけにもいかないだろう。
2人はどうやら俺の家に行くのが楽しみらしい。にこにこしている。
「さて、じゃああなたの家に行かせてもらうわよ、ニーケ」
「応!どうやって行くんだ!?」
にこにこ笑顔のまま二人は俺に聞いた。
俺は答えた。
「屋根伝いに行く。一番速いからな」
「「わかった!」」
即答。
一斉に飛び上がると、屋根に着地。
俺たちは軽やかに走り出した。
およそ30分で家に着いた。
俺は、扉を開けた。
エリノア姉さんはいつも通り、洗濯物をたたんでいた。
「あら、ニーケおかえり。友達も連れてきたんだ。リンちゃんは?」
動揺せずに、平然と姉さんは笑った。
やっぱ、肝が据わってるよね。
「ただいま。リンは仕事場。俺たちとは別行動だから、おいてきた。それから、この二人、今からここに住む」
俺は姉さんに言った。
姉さんの顔がぱっと輝いた。
「いいじゃん、シェアハウス的な奴!部屋はわんさかあるから好きなとこ使ってね」
俺の後ろに構えていた二人も、にっこり笑って姉さんに答えた。
「「はい!」」
「いやあ、しかしニーケの家は馬鹿でかいな!さすが王子、と言ったところか!」
「これ見つけたのは俺の友達だけどね」
「どんな友達よ…」
「この家を見つけたのは、俺の3個下のアリ。今度紹介するよ」
各自部屋を決め、俺たちはリビングでお茶会をしていた。
横でその話を聞いている姉さんも、とても楽しそうだ。
やっぱり大人数のほうが楽しい、っていうのは必然だな。少なくとも俺にとっては。
突然、扉がものすごい勢いで開いた。
入ってきたのは、アリだった。
「やあ!噂をすればアリじゃないか!何の用…」
言葉が途中で切れた。
俺は、彼女の顔を見て驚いた。
3年前の面影がわずかに残っているが、それ以外の顔立ちが大きく変わり、物凄い美人になっていたからだ。
…それよりも、俺は彼女の表情に驚いた。
アリは、その美しい顔を引きつらせて叫んだ。
「ニーケ兄っ!た、大変だ!女王様がっ!」
悪寒。
後ろの二人も同じような心境だったらしい。顔の血の気が引いていた。
俺は必至で上ずりそうな声を抑えて、聞いた。
「母さんが、どうした」
アリは、心臓が傷んだ時のように顔を歪めた。
「女王様が、崩御した!」
俺は、倒れそうになるのを必死で抑えた。
「アシーナ、ソルド…」
真っ青になった顔で、二人を振り向いた。
「ええ、あなた、かなりヤバい立場に立たされたわね…」
「ああ。お前が魔王討伐に行けるかどうかは、次期女王の対応次第だ」




