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神々の選んだ錬金術師  作者: すいな
37/95

37 白金のドラゴン

ドラゴンたちの背に影が落ち、次の瞬間。

6つの白い弧が光った。

翼が地面にバサバサと落ちた。

一瞬の空白。

ドラゴンたちの絶叫。

俺とアシーナはドラゴンの首に飛び乗り、

「分解!」

断末魔の悲鳴が上がることのない静かな死が、谷に満ちた。


俺たちは飛び降り、ソルドたちの真横へ降りた。

「3頭討伐完了だ」

前を見たまま、事務的に告げる。

「ああ!わかっているぞ!」

腕組みをしたソルドが言った。

アシーナは刀を持ち、警戒を緩めなかった。

「でも、恐らくドラゴンはこれだけじゃないわ。巣に帰ってくるドラゴンが来ると見て間違いない」

「そうだねぇ。何頭くらい来るかなぁ」

ハオラン先生も緩い口調のまま、剣を両手に握りなおした。


上空に影が落ちた。

一斉に上を見上げる。

10数頭のドラゴンたちが、俺たちの上空を旋回していた。


5周ほど回った時だった。

一頭が頭をもたげ、悲痛な声を上げた。

それに呼応するように、ほかのドラゴンたちも長々しく悲痛な声を上げた。

死んだ仲間を悼むような声。

どうやら仲間たちの死亡を確認したようだ。

そして、仲間を屍に変えたのが俺たちだということも。

黄色がかった20数個の目が、一斉に俺たちを見据えた。


周りより一回り大きく、鱗の艶が並外れて良いドラゴンが、ひと声叫んだ。

刹那、赤い旋風が巻き起こった。

ドラゴンたちが一斉に襲い掛かってきたのだ。


間一髪のところで躱す。

躱したと思った次の瞬間。俺たちに向かって鈍く光る鋭い爪が繰り出された。


反射的に、俺はドラゴンの両腕を斬り落とした。

苦痛の呻き声。

猛烈な勢いで血が噴き出す。

俺はようやく思い出した。ドラゴンのもう一つの弱点が腕であることを。

ならば、ほかのドラゴンの腕も斬り落とす。


ついさっき腕を斬ったドラゴンに飛び乗り、首を掻き切る。

その勢いのまま、アシーナの背後から襲い掛かったドラゴンの腕を斬り落とし、首を掻き切った。

2頭の断末魔の悲鳴が聞こえ、倒れた瞬間、衝撃で地面が揺れた。


俺はそれを背にしながら、さらに襲い掛かってきた3頭のドラゴンを一閃。

そのまま走り、先生とソルドが二人がかりで相手をしている奴の首を刈り取る。

悲鳴が上がることはなく、そのかわりに血柱が立った。


残り5頭。


開戦の合図をした、周りよりでかいドラゴンはまだ上空にいる。

それを守るように2頭。

残りの2頭をアシーナとソルドがあしらっている。

…先生は、どこだ?


辺りを見渡す。

姿はない。

なぜ…?


不意に風を感じた。

反射的に避け、直撃をかわす。

地面に接触するすれすれで、3頭のドラゴンが態勢を立て直し、俺を睨んだ。


一斉に襲い掛かってくる腕を一閃、その勢いで飛び上がって翼を斬り落とす。

どうやら一番大きいドラゴンの腕は斬り取りきれなかったようだ。血が吹きあがる。

他の2頭にとっては致命傷だったらしい。動きがあからさまに遅くなり、そして倒れた。

それを後目に、俺はボス格に突っ込んだ。


斬っ!

俺は刀を猛スピードで振った。

すれすれのところで、ボス格が避けた。

俺が振った刀は、ボス格の首の下側を軽くかすった。


さっき襲い掛かってきた時よりは、動きが遅くなっている。

何より、腕を斬った時の出血でふらふらしている。

行ける。


勢いをつけ、高く跳ぶ。

重力に従いながら、ボス格に向かってキマイラの爪を放ち、目を潰す。

痛みに泣き叫ぶような声が響いた。


「錬成っ!」

虚空から刀を数本錬成し、ドラゴンへ飛ばす。

刀は重力のままに落下し、首へ突き刺さった。


ようやく俺が上空にいることに気が付いたようだ。

だらだらと目から血を流し、こちらを睨んだ。

俺はもうすでに、あと数秒でドラゴンの背にぶつかる位置まで落ちていた。


刀を構え、そして

一閃。


ドラゴンの首が、地に落ちた。

数秒後、体が崩れ落ちた。

地鳴り。

そして辺りに静けさが満ちた。


遠隔錬成で地面をふかふかに変え、俺は着地した。

一瞬でアシーナとソルドが駆け寄ってきた。

俺は土埃を払いながら、二人に聞いた。

「先生は?」

二人とも、首を振った。

「わからないわ」

「ああ、何かに連れ去られたのだろうか」


不意に、空気が重くなった。

一斉に武器を手に取り、最大限警戒しながら気配を探る。

圧倒的な強者の気配。

今さっき倒したドラゴンの集団が全部束になっても敵わない、残酷なまでの強さ。

居場所はわからない。いったいどこに…


美しい、しかしどこか狂気じみて気持ちの悪い叫び声がした。

一斉に振り向く。

刹那、土煙が俺たちを襲った。

不覚にも目をつぶらされた。


鳥肌が立った。

殺気。そして、一陣の風。

ほとんど感覚で避ける。


土煙が収まった。

俺は目を開けた。

赤黒い液体が、最初に見えた。

ばっと顔を上げる。

左腕に傷を負い刀を取り落としたアシーナと、足の肉をえぐり取られたソルドが目に入った。

まさか、という思いがまず浮かんだ。

この二人がここまでに深い傷を負うなんてことが…?


再び気持ちの悪い叫び声がした。

俺はそちらを振り返った。


日光を浴び、美しく光る白金の鱗。

限りなく銀に近い、艶やかな目。

理性的な立ち振る舞い。

他のドラゴンたちよりも一回り小さく、そしてどんなものよりも美しいドラゴンがそこにいた。


鈴を震わせるような美しい、しかしやはり狂気じみてどこか気持ち悪い声が発せられた。

「あら、私の攻撃を受けても傷一つ負わない人間を見たのは初めてだわ。褒めてあげましょう」

品定めするような目で、俺を高慢に見つめる。

圧倒的な強者の前に、俺は震えていた。

今まで出会ってきた者より、数次元違う強さ。


畏怖の震えが、徐々に歓喜の震えへと変わっていった。

刀を再び握りしめる。

口角が自然と持ち上がった。


こいつだ。

俺はこういうやつと戦いたかったんだ。


「お前の名前は?」

俺は一歩踏み出し、刀を構えて聞いた。

ドラゴンは、相変わらず高慢な姿勢で立っていた。

「私の名前なら、冥途の土産として教えてあげましょう」


「私は魔王クロトに忠誠を誓う者、そして魔王を支え、人間どもを殲滅する15本の柱の一角。

白金のドラゴン、ケーリ」


15本の柱。

「やはりお前は15柱獣だな」

俺は心中狂喜しながら聞いた。

ケーリは、恐ろしい笑みを浮かべた。

「ええそうよ。せっかく名前を教えてあげたんだから覚えておくといいわ。冥途で私に殺されたんだって自慢できるようにね」


火花が散った。


猛スピードで、俺に爪が迫った。

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