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神々の選んだ錬金術師  作者: すいな
35/95

35 ニーケの意外な弱点?

「あら、ニーケ。あなたがここに来るのはわかり切ってたことだけど、いざ見るとやっぱり驚いたわ」

俺たちの視線が扉へ向かった。

灰色の制服を、返り血で赤黒く染めたアシーナが立っていた。

刀はしっかり腰に戻っている。どうやらもう戦う気はないらしい。


「アシーナ。おかえり。驚いた?やっぱ俺来ない方がよかったってこと?」

俺はちょっと皮肉を交えてアシーナに言った。

彼女は優雅に首を横に振った。

「まさか!あなたがいなくてどうしてここが特殊部隊と言えるのかわからないわ!」

優雅な仕草と言葉遣いからは考えられないほどの危険発言。

先生たちに失礼じゃないか…?大丈夫か…?

俺は恐る恐る先生たちの方を向く。

彼らは全力で首を縦に振っていた。

それでいいのか元教師と元先輩。


「それじゃあ、飲みに行こうかぁ!」

「そうだな!アシーナも来たことだしな!」

ハオラン先生とソルドは、話を180度以上変えた。

よほど飲みに行きたかったのだろう、顔のにやにや笑いが収まっていない。

「あら、私を待っていてくれたの?なら今日はいいお店を私が紹介するわ」

アシーナもそれに乗っかった。

俺はにこにこしながらそれを見ていた。が、急に恐ろしいことを思い出した。

これが本当だったら、飲みに行ったらマズイことになる…


「あ、あのぉ…」

恐る恐る発言しようとするが、3人は全く聞いていない。

「さあ!行くわよ!今日は飲むから覚悟してなさいよ!」

アシーナが言い、俺はソルドと先生に襟首をつかまれて引きずり出された。

うう、このままだと飲む羽目になる…


「さて、ニーケは何を飲むんだ!?」

あっという間にアシーナ御用達のお店に連れていかれ、俺は席に座らされていた。

ちょ、何を飲むかって急に聞かれても…

「ビール?ワイン?それとも渋く東酒?どれがいいかなぁ」

ハオラン先生まで勝手に決めようとしている。

「ニーケ、どれにするかはっきりしなさいよ。大体の酒ならここにそろってるから心配は無用よ」

アシーナ!そういう問題じゃないんだ!

心の中では絶叫しているのだが、実際に俺が悩みを口にするタイミングが全くない。


意を決して恐る恐る手を挙げる。

「ん?決まったぁ?」

「何にするんだ?」

「どんなのが好みなの?」

三人が超絶期待した目で俺を見る。

言いたくねえ…けど、言わないとやばい…

「俺、酒飲んだことないんだよ。しかも、俺の家系全員酒にめっちゃ弱いんだ。だからパスで…」


3秒間の空白。

「「「はあ?」」」

三人が、まったく同じイントネーションで全く同じタイミングに声を上げた。


そうなのだ。俺は成人してからもずうっと鍛錬をしてきたせいで、酒を飲んだことがない。

それに、俺の母さんやじいちゃんばあちゃん、叔父さん伯母さん、会ったことはないが父さんも酒に弱い。そういう家系で、俺の聞く限りで酒に強い人が生まれたためしがない。

その弱さは折り紙付きで、あまりアルコールが強くない酒だろうと何だろうと、一口飲んだらあっという間に酔う。

そういう家系だから、もし俺がそれを引き継いでいて、なおかつこいつらのノリで飲んだとしたらおそらく物凄い迷惑客になることだろう。


三人は顔を見合わせてどうするか考えていたようだが、やがて笑顔で言った。

「「「大丈夫!お前が暴れようと騒ごうと、俺私僕(全員一人称が違うせいで、音が混ざり合ってすごいことになっていた)たち三人がかりでお前を抑え込むから!」」」

これでいいだろ、とでも言いたげな笑顔だが…

そういう次元の問題じゃないんだよおおお!

俺は机をたたいた。

もうこうなったらやけだ。錬金術でアルコールを分解してやる!

そんなことを考えていたら、アシーナに

「錬金術でアルコール分を分解することは許さないわよ?」

と怖い笑顔で脅された。

きっと、ウィヨンの時の本部長もこうやって脅されたんだろうな…


いつの間に頼んだのか、俺の目の前には小さめのビールジョッキが置いてあった。

気を使ってきっと一番小さいやつを用意してくれたのだろうが、俺にとっては城の池の水を全部飲め、くらいの難題に感じる…

「乾杯っ!」

アシーナが音頭をとった。

俺は、期待に満ち溢れた3人の視線に耐え切れず、一口飲んだ。

そのあとの記憶は、消えた。


翌朝。

気が付くと俺は自分の部屋に寝ていた。

頭が痛い。俺は一体どのくらい飲んだのだろうか。

横を見ると、お粥が置いてあった。頭痛薬も置いてある。

ちなみに、手紙付き。

「ニーケ、おはよう。昨日はごめんなさい。あなたほんとに酒に弱いのね。一口飲んでぶっ倒れてびっくりしたわ。次からはソフトドリンクで手をうつわ。」

アシーナの字体だ。

恐らくお粥を作ってくれたのだろう。

俺を運んでくれたのはきっと残りの二人だな。


お粥をすすり、頭痛薬を流し込んで飛び起きた。

頭は痛いが、動けないほどではない。それに、薬のおかげで3倍マシになった。

恐らく今日は、久しぶりの出陣だろう。

「よし、がんばるぞ!」


俺は着替え、部屋を飛び出した。

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