34 顔合わせ
「ありがとうございます…。では、特殊部隊専門の部屋がございますので、そちらに…」
本部長は中途半端に何度もペコペコし、本部長室の隣の方を指さした。
相変わらず額には汗が浮いている。
俺は視線を指に向け、もう一度本部長に戻した。
「わかりました。他のメンバーの人は…」
「アシーナさん以外は全員来てますので…顔合わせ会をしてください…」
へこへこした態度で、本部長は額をぬぐった。
俺は一礼して、部屋から出て行った。
「わあ、ニーケ君だ!やっぱり入ると思ってたんだぁ。当たってたね」
「何年ぶりだ?ニーケ、久しぶりじゃないか!」
部屋の扉を開けると、もうハオラン先生とソルドが二人で手合わせをしていた。
俺が来たことに気が付いたようで、手を止めて俺に手を振ってくれた。
「ハオラン先生!3か月ぶりですね!ソルド!元気そうで何より!」
俺も大きく手を振り返す。
「アシーナちゃんは今出陣中かな?できれば全員でこの後飲みに行きたかったんだけどなぁ…」
先生は手合わせを中断し、こちらを向いた。
「そうですね…。手伝いに行きますか?」
「応!飲みに行きたいならそうするべきじゃないか?」
ソルドは、当然だ!とでも言いたげに剣を振った。
「じゃあ、本部長にアシーナちゃんがどこに行ったか聞いてくるねぇ」
相変わらずのんびりした態度の先生は、扉をぱたんと閉めて、出て行った。
部屋に残ったのは、俺とソルドだけになった。
ソルドは俺より2個年上だ。
錬金術の練習に付き合ってもらっただけだから、そこそこ話せるくらいの仲だったはずなのだが、いつの間にか普通に話せるようになっていたようだ。
どうやらソルドの方でもそれは同じらしい。俺が近づくと遠慮のない笑顔を向けてきた。
「それにしても、だ。部屋にお前が入ってきたときから思ってたけど、ずいぶんかっこよくなったよな、ニーケ」
ソルドは俺の肩をばんばん叩きながら言った。痛い痛い…
さりげなくソルドの手を止める。
「そんなことないって。てか、やっぱソルドは相変わらずイケメンだな…。そういや彼女とかいるのか?」
彼は、軽く目を見開いた。
「彼女?いないに決まってるだろ。職業柄いつでも死ねるし、なによりこんな不安定な仕事じゃ女も寄ってこないし」
「へえ、そういうもんなのか」
俺がそっけなく返すと、急にソルドがニヤニヤしだした。
「なんだ。お前言い寄られたのか?もしかして」
「んなわけないだろ?」
「なんだよつまんないなあ…」
ひょっとこのように口をとがらせ、ソルドはそっぽを向いた。
…なんか、覚えているソルドとキャラ違う…
ちょうどそのタイミングで、先生が帰ってきた。
「あ、おかえりなさい」
「ただいまー。アシーナちゃん、今から帰ってくるってぇ。早いね、やっぱり」
うんうんと先生はうなずく。
ソルドも感心したように息を一つついた。
「アシーナ、もう戦闘終わらせたのか…やっぱあの子俺より強いですよ」
「うん、僕よりもきっと強いよぉ。それより強いニーケ君はすごいなあ」
「ほんとですよね」
二人してものすごい勢いで首を縦に振る。
そんなに褒めないでくれ!体のあちこちがくすぐったくてしょうがない!
「じゃ、じゃあ俺たちこの後飲みに行ける感じですか?」
俺は一生懸命話題を変えようと頑張る。
「うん、そうだねえ。それならせっかくだし、そのまえに一回手合わせしてもらおうかぁ」
先生はどうやら俺の話題変更に乗ってくれたようだ。
「そうだな!でも、おそらく1対1で俺たちがニーケに勝てる確率は0だ!なら、2対1でやらせてもらうぞ!」
ソルドは剣を一振りして、俺に向けて構えた。
先生もそれにならう。
「ええ、マジで2対1でやるんか…勝てるかね…」
俺は愚痴りつつも、刀を構えた。
互いの陣営から、火花が散った。




