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神々の選んだ錬金術師  作者: すいな
31/95

31 「まおうはたおされて、せかいはへいわにもどりました」か?

童話を10冊ほど読んだあたりで、部屋を探索した。

その結果、この部屋で本を読破するのはすごくたやすいことに思えてきた。

何しろ、生活に必要なものは何でもあるのだ。


大量の本はもちろん、ふっかふかの椅子もあれば机もある。ベッドも最高品質だ。

トイレも風呂もキッチンもある。

冷蔵庫を開ければ食材がたくさん入っている。

ちょっと見てみたが腐ってもいないし毒もない。

ってなわけで、俺はいつの間にかすべての本を読破していた。


「んあっ!寝てた!やばい、そろそろ出ないと心配される!」

どうやらふかふかのソファで寝ていたようだ。

時計を見ると籠ってから1週間と5日経っていた。

俺は階段を駆け上り、穴へ向かった。

もう閉まっていたが、内側からは簡単に開けられるようだ。

ドアノブがついた扉になっていた。


俺はガチャリ、と扉を開けて外へ出た。

久しぶりに見る日の光で、目が一瞬見えなくなった。

目が明るさに慣れると、窓のそばにエクセレスが立っているのが見えた。

なんでここにいるんだろう…?


「あなたがここに入って1週間ほどたった日から見張っていたのですが…ずいぶんこもってましたね」

エクセレスは、無表情のまま俺に話しかけた。

へえ、見張ってたん…ん?ってことは…

「え、5日間ずっと見張ってたの?」

「もちろん仕事はしていましたが、終わったらまた見に来ていました。死なれたら困りますから、2週間たって出てこなかったら扉をぶち破って行こうと思っていたので」

エクセレスはまるで彫像のように動かないまま言った。

3週間くらいこのままでも過ごせそうだな、こいつ…

「すごい執念だね…」

「忍耐力と言っていただきたいですね。それはともかく、そろそろ帰らないとリンさんたちがきっと心配してますよ」

「そうだね、帰るよ」

俺はエクセレスを背に、部屋を出た。


家に着いたのは昼前だった。まだ昼ご飯食べてないといいな…

「ただいま」

扉を開けると、ちょうどエリノア姉さんとリンが昼ご飯を食べるところだった。

「あら、ニーケ。ずいぶん長い間こもってたね」

「おかえりなさい、ニーケ様。ずいぶん遅いお帰りで」

二人は同じような反応で俺に話しかけた。

「自分でも思うよ。蔵書が多すぎて長居しすぎた」

「よかったじゃん、大量の情報を手に入れられたってことでしょ?」

「ま、そういうことだね」

俺は台所に行き、自分の分の料理を手早く作った。

俺が料理をテーブルに置き、三人で手を合わせた。

「いただきます」


城の蔵書をあさりつくした結果。

魔王が倒された、という出来事は、史実のどこにもなかった。

童話の中にはあるのだ。

「まおうはたおされて、せかいはへいわにもどりました」

という描写が。


確かに、俺が生まれる少し前までは世界は平和だった。

モンスターに脅かされることもなく、人々は戦乱から最も遠いところにいたと言っても過言ではない。

フェルムになった人も、ごく一握りの数となった。

しかし、俺が生まれる少し前。

突然、魔王が侵攻してきたのだ。

極端に減っていたフェルムだけではモンスターに対応しきれず、一部の地域では人間が皆殺しにされ、一人もいない状況になったらしい。

人々は、「倒された魔王が復活した」と噂した。


だが、俺が調べた限りでは、童話以外で「魔王が倒された」としている資料は一つもない。

なら、なぜ一時平和な時期ができていたのか。

なぜ今になって魔王が世界を攻めてきたのか。


それだけではない。

俺にとって最も大きな問題がある。

なぜ伝説に「錬金術師」が出てくるのか、だ。

別に魔王が復活したのは錬金術師のせいではないだろう。

なのに、なぜ「錬金術師が生まれるとき、世界が闇に包まれる」という描写があるのか。

そして、なぜ王都の人間はそれを知らず、それ以外の人は知っているのか。

資料をあさっても、確実な答えに辿り着くことはなかった。


収穫になりそうな情報があったとするのであれば…


魔王軍の紋章は、円に六芒星。

最強格である15頭のモンスターたちには名前がついていて、その名前がモロ、ケーリ、タナト、ヒュプノ、ネイロ、モース、オイジュ、ゲーラ、エリー、ピロテス、アーパテ、ネメ、アトロ、ラケ、ヘスであること。

魔王の名前が、クロトだとされていること。


円に六芒星。

モロ、ケーリ、タナト、ヒュプノ、ネイロ、モース、オイジュ、ゲーラ、エリー、ピロテス、アーパテ、ネメ、アトロ、ラケ、ヘス、そしてクロト。

そこに俺の二つ名アイテル。そして、アシーナの二つ名ヘーメラ。その二つをくわえると…


俺とアシーナの錬成陣に描いてあるものと、一字も違わず同じだということがわかる。


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