24 最前線に出陣
さて、ひと騒動あった後俺たちは本部にある寮で暮らすことにした。
荷物はたしかに学園長が送ってくれたようで、ベッドからカーペットまでそろっていた。感謝!
さあ、モンスターよかかってこい!一網打尽にしてくれる!
1週間たった。
俺はとぉっても規則的でかつ健康的な生活をしていた。
寝て、食べて、ちょっと勉強して、素振りして、寝る。
寝て、食べて、ちょっと勉強して、素振りして、ちょっと戦って、寝る。
寝て、食べて、ちょっと勉強して、素振りして、寝る。
寝て、食べて…
「ひまなんじゃあああ!」
俺の堪忍袋は1週間で切れた。
寮を飛び出して、受付に訴えに行った。
「あの!ものすごく暇なんですけど!どうしたら戦いに行けますか!」
怒りを抑えつつ(それでも多少は怒りが出てたと思う)俺は勢いよく聞いた。
受付嬢は、俺たちが入隊したときの小生意気な奴だった。
「あと2週間はダメですよ?隊律で、新人は3週間の鍛錬が必要になっているんですから」
ツーンとしたような表情で受付嬢は言った。口元はわずかに笑っていた。
こいつ!俺が何も知らないことを馬鹿にしてやがる!
お礼を言って(もちろん怒ってたけどね)、寮に戻った。が、暇すぎて本当に発狂しそうになる。
こうなったら、本部長に例外を求む!
俺は再び寮を飛び出し、今度は本部に乗り込んだ。
「本部長に会わせてください!」
一番立派な部屋の扉の前に来ると、俺はすごい勢いで扉をたたいた。
1分間くらいずっと叩いていたのだろう。
うるさくてかなわん、という顔で本部長の秘書だと思われる人が出てきた。
「本部長は部屋にいらっしゃいます。失礼のないよ」
最後まで聞かずに俺は部屋に入った。
「で、要件は?」
本部長はつまらなさそうな顔で言った。
「はい!早いとこ出陣したいんです!つまらなさすぎて発狂しそうなので!」
俺は怒りを抑えつつ、やる気に満ち溢れた声を取り繕って言った。
本部長はため息を一つ。姿勢を直して俺を見た。
「そういうことを言う新人は何人もいるんだ。が、慣れないうちに出陣させると死亡率がとても高くなる。人員はいつでも不足気味なんだ。たとえ新人だろうと死なれちゃ困る。だからだめだ」
何回も説明してるのだろう。だるさが全面に出た口調で言った。
なるほど、理にかなっている。
が、俺はもう一週間も待った。素振りも恐らく50万回くらいやった。戦ったりもしたけど全員相手にならん。これはもう退屈以外の何物でもない!
「鍛錬は十分に積んでいます!学園でも先生と手合わせして勝っていますし、ここにいる人たちとも何回か戦いましたが相手になりません!」
俺は堂々と言った。
本部長は俺の話を聞いてため息をひとt…
「待て、学園で先生と手合わせして勝ったといったな?君はどこの学園卒業だ?」
急に身を乗り出し、早口になって本部長は言った。
「え、ニウム学園ですが…」
俺は今までのペースを崩され、素に戻った。
「に、ニウム学園のどの先生に…」
本部長、冷や汗を大量にかいている。
俺は事情を呑み込めないまま言った。
「ハオラン先生です。フェルムの教育を担当す」
「はいわかりました!では出陣お願いします!」
本部長、手のひらをかえすように態度を変えた。
「わ、わかりました。どこに行けば…」
「今から受付に行ってきてください話は通しておくので!」
超早口の本部長は冷や汗ダラダラになっていた。
俺はもういたたまれなくなって、そっとその場から退散した。
「あなたに行ってもらうのは今状況が急激に悪化しているウィヨンです。出陣速すぎますよ?まあ、本部長から直々のご指名なので何も言いませんが」
受付嬢は相変わらずの小生意気な態度で言った。
出陣速すぎ、と言われ、俺がまた彼女に怒りをぶつけるのかも、と思ったのだろう。早口で付け足した。
「はい、では行ってらっしゃい。交通機関はもう用意してあるのでそれに乗ってください」
入り口に用意されていたのは、殺風景な馬車だった。
戦場に行くんだからしょうがないよね。
俺は後ろの荷台っぽいところに乗り込んだ。
中も殺風景。匂いもきつめ。ウィヨンまで耐えきれそうにない。
俺は馬車を錬成しなおすことにした。もちろん外側じゃなくて内側だけ。
「錬成」
ボロボロになっていたベッドの穴をなくし、中の綿をふわふわに戻す。
木の椅子も、背もたれとひじ掛け付きの椅子に変える。
クッションも用意したいけど原料がない。無理そうだ。
機能していない消臭剤を強力なものに直す。匂いが良くないのは一番つらいからね!
高速で錬成して、愛刀の具合を確認して(刃こぼれもなし!)どんなモンスターが出るか想像を膨らませていたらいつの間にかウィヨンについていた。
馬車を降りる。
生々しい死臭と血の匂い、腐った汚物の匂いが入り混じったひどい環境だ。
新人が死ぬ理由も納得。こんな環境で戦う気が起きるとは思えないからね。
俺は、幼いころからフェルムの奴らと一緒に最前線に出てたから慣れているっちゃ慣れている。
最近は嗅いでなかったからちょっときついけど…
「あ、増援ですか!助かりました!が、送られてきたのはあなた一人…?」
松葉杖をついた人が俺を見つけて笑顔になる。一人でも人手が欲しいのだろう。
「はい、俺一人です。戦場はどこですか?」
俺は答えた。
人が少しでも増える、というのは意外と影響が大きい。
俺たちはまだ見放されてない!まだ戦える!
増援があるとそういう気持ちになる。
つまり、増援が来ると士気が上がるってことだ。
「前線はあっちです。今は敵が襲ってきてないので人は少ないですが…」
松葉杖の人は、東の方向を指さした。魔物の巣窟がある、と言われてる方向だな。
「わかりました。じゃあ、行ってきま…」
突然、笛の音が鳴り響いた。
「敵襲!戦闘可能なものはすぐに前線へ向かえ!」
場の緊張が高まる。
ああ、心地いい緊張感だ。
久しぶりの戦闘だ。
俺はパッと地面を蹴った。
周りを置いていく勢いで走る。
最前線。
モンスターたちが迫ってくるのがよく見える。
俺は刀を抜き放った。
キンッと甲高い音がした。
右手に持ち、左手で錬成の用意をする。
顔が自然とほころんだ。
「期待にこたえられるように頑張んないとなあ」
モンスターが防壁に迫る。
俺は防壁の門から飛び出した。




