23 入隊決定です…
「俺が、世界最強?」
あまりにでかすぎる真実を、俺は飲み込み切れなかった。
「もちろん、魔王と比較できるかはわからないよぉ。あくまで、人間界最強ってことだからね」
先生は軽く修正を入れるが、それでもこの真実は大きすぎる。
「え、っと。じゃあ、この学園の人たちがここまで弱いのは…」
「違うよ、君が強すぎるだけさぁ」
ばっさり切り捨てられてしまった。
ああ、なんかもう、この事実を飲み込む方法を誰か教えてくれ…
「じゃあ、学園長つれてこよっか。学園長の実力を計ればわかるんじゃないかなぁ」
先生は俺の心理を読んだかのように言った。ふらっと立ち上がる。
「いえ結構です。衝撃が増えるだけだと思うので」
俺は盛大に身振りをつけて言った。
「さて、と。ニーケ君はずっとここにいても暇でしょ。どうするの?」
先生は再びすとんと座って俺に言った。
「魔王討伐軍に入ってきます」
俺は即答した。アシーナもいつの間にやら隣に立っていた。
「私も同じ道を進みます」
彼女は言った。
先生はその回答を聞いてにこっと笑った。
「君たち二人がいれば、魔王討伐軍も心強いねえ。学園長に言ったら、すぐにも出発していいよぉ」
俺たちは顔を見合わせて、頷いた。
「失礼しまs…」
学園長室に入ろうとしたら、学園長が飛び出してきた。
「おうおう聞いたぜ!魔王討伐行くんだってな!しかも世界最強だろ!?おめでとう!」
手を握ってぶんぶん振られる。やっぱり力は恐ろしいくらいに強いな…
「はい、行ってまいります」
「行ってきます。リンは、また在学して、終わったら家に帰るように、と伝えてください」
俺とアシーナは学園長に握られていない方の手で敬礼しながら言った。
「リンか!よしわかった!伝えておくよ!じゃあ、行ってこい!荷物は後で本部に送る!」
そういうが早いか、俺たちは外に放り出されていた。
学園長、そんなに早く行ってほしかったのかな?
「さて、行こうか」
俺たちは魔王討伐軍本部に向かった。
俺たちは本部に着くと、希望者受付に並んだ。
やはり希望者は多かった。魔王を倒す、という夢を持っている人は多いんだなあ…
順番が回ってきたから俺たちは素直に履歴書を出した。
受付担当の人は、履歴書にざっと目を通すと、
「へえ、あなたたちみたいな若い人が…。ほんとに大丈夫なんですか?」
と言った。
そして、俺たちに疑惑の目を向けた。
「あら、技術力の心配?ならここで試してみましょうか。今ここにいる人たち全員を、私たち二人で30分以内に倒してやるわ。それでわかるでしょう?」
アシーナは余裕たっぷりに言った。
俺もそれに頷いた。30分もあれば100人程度、余裕で倒せるだろう。
受付嬢は俺たちに哀れみと軽蔑の目を向けた。
…こいつ、ぶん殴っていいかな。
「そうですか、じゃあやってみてくださいよ。30分、しっかり計ってますからね?」
「了解。30分以内に全員殺さず床にのびてもらうことにしよう」
俺は自信と皮肉と怒りたっぷりに言い、刀を抜いた。
どうやら俺たちのやり取りをしっかり聞いていたらしい。
その場にいた奴ら全員が臨戦態勢を取った。
「はじめっ!」
受付嬢が手を上げると同時に、全員が俺たち二人に襲い掛かってきた。
結果。
18分で全員が床にのびた。
数えていないが大体130人くらいだろう。そんな人数が床にのびているのだから一種の壮観だ。
「ほら、技術力は証明できました。ほかに何をすればいいのですか?」
俺は受付嬢に言った。
受付嬢は恐ろしいものを見るのかのような目で俺を見て、しかしまだ皮肉たっぷりの様子を必死で保とうとしながら言った。
「そ、そうですね。じゃあ、軍に入る代金として10万ルド、出してください」
最後の方には調子を取り戻したのか、再び小生意気な態度に戻った。
そして、バカにしたような笑みを浮かべた。
こいつ、どんだけ俺たちを軍に入れたくないんだろう…
10万ルドもあったら、一般人なら6か月裕福な生活ができるだけの値段だ。
庶民なら音を上げるだろう。だが、俺は王家の人間だ。金や銀を錬成して売ることだってできる。だから、アシーナの分も合わせて20万ルドくらいならすぐに出せる。
無限収納をあさり、合わせて20万ルド、じゃらんと出す。
「俺とアシーナの分、20万ルドだ。何か文句あるか?」
俺は威圧しながら受付嬢に迫る。
受付嬢は20万ルドを不審な目で見ている。
「まさか、盗んだんじゃないでしょうね?」
爆弾発言。
アシーナの堪忍袋の緒が切れた音がした。
あ、受付嬢さん、ご愁傷さまです。
「おい、貴様。ニーケが誰かわかっての発言か?え?20万ルドを盗んだだあ?ばかばかしい。こいつは、次期女王補佐ニーケ・ラドニクス様だぞ?不敬罪でてめえを牢屋に突っ込むことだってできる立場だ。阿保なのか?履歴書見ればわかるだろうがよ」
アシーナ、口調変わってる…
言葉だけを聞けばそこまで怖いものじゃないのだが、何しろ言葉の一つ一つに物凄い怒りが込められていて、なおかつこの場にいる人たちの中で俺を除けば最強の立場に立つ彼女だ。威圧も殺気もけた違いに強い。
受付嬢は縮み上がった。
「わ、わかりました。疑ってすみませんでした。では、入隊決定です…」
こうして俺たちは魔王討伐軍に入った。
…本部を歩いているとちょくちょく戦いを申し込まれるのには参ったが…




