22 君は世界最強だよぉ
俺たちが入学して早2年がたった。
ソルドは卒業して、もうここにはいない。
黄の授業内容だけでは飽き足らず、俺はカームとかアールムとかの先生からも授業を受けたりした。
その結果か、まあどの職業についても最低限は太刀打ちできるくらいの実力にはなった。
錬成で戦う練習も1年の時からしてるから、結構上達してると思う。
純粋な戦闘能力だけでも、俺に勝てる奴は学園中の生徒の中にいなくなった。
アシーナも俺には勝てなくなった。やっぱり男女の差はあるんだなあ…
あとは先生だけだ!
「ハオラン先生、手合わせお願いしていいですか?」
「ああ、ニーケ君じゃん~!いいよいいよ」
ハオラン先生は、俺の唐突な申し出に快く応じてくれた。
1年の頃、「僕を余裕で凌駕する強者になるよ」と言ってくれた先生だが、どうなるだろう…
俺らは第1道場に向かった。最も広くて最も頑丈な道場だ。
使う武器は木刀。先生も同じだ。
ちなみに、先生は俺が錬金術を使えることを知っている。また、相手の実力を見ただけで計れることも知っている。だからだろうか、
「今日は錬金術封印してねぇ。それに、僕の実力を調べるのもダメだよぉ」
と言われてしまった。
審判はアシーナ。
「両者前へ!」
空気が引き締まるような、驚くほどメリハリのついた、よく通る声で彼女は言った。
先生と俺は三歩ずつ進み、ラインに立つ。
蹲踞。指示を待つ。
「はじめっ!」
先生の雰囲気が急に殺気を帯びたものになった。
暗に「全力で来い」と言っているのが分かった。
答えてやろうじゃないか!
間合いを一定距離取り、打たれることのないように牽制しあう。
不意に先生の気配が揺らいだ。
風の動きでわかる。背後に回るつもりだ。
高速で半回転しながら木刀で先生が来るであろう位置を打つ。
一気に間合いを取る。
キィィンッ!
防具にクリーンヒットした音がする。
「一本!」
アシーナの声が道場に響いた。
えっ、こんなにすぐに一本取れるの?
「両者戻れっ!」
驚きを隠せないまま、指示通り元の位置に戻る。
そして再び蹲踞。
「はじめっ!」
そして、またアシーナの声が響いた。
俺は、全力で先生に向かって攻撃を放った。
「やー、完敗だよぉ。言ったでしょ?僕を余裕で凌駕する強者になるよって。僕当たってたねぇ!」
結果。
3-0で俺の勝ち。5回戦までやったがすべて同じ結果に終わった。
負けたはずなのに、先生はどこか楽しそうな笑顔を浮かべていた。
「あのぉ、先生。もう実力計らせてもらっても…?」
俺は遠慮がちに聞いた。
「いいよいいよぉ。見て驚いちゃって」
先生は、実に軽いノリで言った。
正直度肝を抜かれるほどのノリだった。まあ、許可をもらったんだし、せっかくなら見てみよう。
観察眼を開放(?)して、俺は先生を見た。
先生の実力は、俺の数段下になっていた。
「ふぁっ?」
思わず変な声が出た。
俺から変な声が出たことで、どういう風に実力が出たのかわかったのだろう。
先生は面白そうに笑った。
「ね?僕を余裕で完敗させられたのにも納得でしょ?」
「ま、まあ納得しますけど…」
正直めちゃくちゃ狼狽えた。
2年で俺、こんなに強くなったのか…?
「あのね、ニーケ君。僕、今からもっと驚くべきこと教えるよぉ」
先生は内緒話をする女子のように口元に手を当て、小さなささやき声で俺に言った。
俺は先生のそばに耳を寄せる。
「実はね、この学園では、様々な分野において、人間の世界で一番の猛者が教師をやっているんだ。
ディアさんは学力が世界一。
アールムの教師は魔法が世界一。世界大会で何回も優勝してるんだ。
カームの教師は商売で大成功した商人。おそらく世界一。
そして、フェルムの教員を担当してる僕は、武力世界一なんだ。
学園長も、僕と同じくらいの猛者で、なおかつ学力も商才もある、っていう人なんだ」
話を飲み込むのに30秒かかった。
えっと、つまり、だ。
俺は武力世界一のハオラン先生に勝ち、
アールムの教師と魔法談議で盛り上がり(魔法について気になったから本で調べて、アールムの先生と意見交換してたんだよ)、
ディア先生が最高難度と言っていたテストで合格点以上を取った。
カームの先生とも商売の広げ方について協議した。
えっと、ということは…?
ダメだ、驚きすぎて頭が回らない。
先生は俺の混乱を見抜いたようだ。
言葉をつなげる。
「ニーケ君は、俺たち最強の猛者たちのレベルと同じくらいの実力になってるんだ。つまり、」
間が空いた。
俺は息をするのも忘れ、先生が言葉をつなぐのを待っていた。
先生はにっこり笑った。
「君は世界最強だよぉ」




