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神々の選んだ錬金術師  作者: すいな
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俺が、補佐?

部屋に入ると、目の前には赤く、美しい刺繍の施された絨毯が母さんの座る椅子に向かって伸びている。

俺はそこに足を踏み入れた。ふかふかしすぎて、足が沈んでいくようだ。


母さんの前にたどり着くと、俺は左ひざを折り、絨毯につけた。両手は右ひざの上に重ね、背筋を30度に傾けて首を折り顔を下に向ける、最大限の敬意を示すお辞儀をした。当然だ。母さんはこのエレメント王国の女王なんだから。


「母上、おはようございます。これからも今と変わらずこの国の未来を照らしてくださる「プラチナム」であることを切にお祈りしております」

「ええ、ありがとう。今日は遅れることもなくてよかったわ。さあ、顔を上げて周りに挨拶なさい」

俺は背筋を伸ばし、顔を上げた。豪奢で美しいアンモン織のドレスを身にまとい、頭には女王の証、プラチナの冠をのせている。そんな派手な格好にもかかわらず、格好に負けないほど美しい母さんが俺の一段上にある椅子に座っていた。


俺は母さんの言う通り、立ち上がって周りの大臣や官僚たちに挨拶をした。

彼らは俺に軽い会釈しかしてこない。まあ、第三王子であんまり優秀じゃない俺だし当り前だろ。


一通りのあいさつを終え、俺は母さんに一番気になっていたことを聞いた。

「ところで母上、今日俺…じゃなかった。私を呼んだのにはどのようなわけがあるのですか?」

「そうね。それはお前の兄弟がそろってから話しましょう」

母さんは俺を品定めするような目で言った。声もきれいだし笑顔も優しいんだけど、目が怖いんだよ…

それに、俺の兄さん姉さんがらみかよ。兄さんたち俺にすごい冷たい目浴びせてくるから嫌なんだよなあ…

どうせ王位を誰に譲るかとかだろ?俺には無理なんだから呼ばなきゃいいのに。


「第一王子様、第一王女様、第二王子様の御成りです」

部屋の入り口で衛兵が言った。俺たちは、一斉に最敬礼のお辞儀をした。

兄さんたちは開けられた扉から威厳たっぷりに入ってきた。


相変わらずの美男美女だ。俺の家族ながら惚れ惚れするほど美しい。

父さんもイケメンだったそうだ。母さんも美人なんだから、その二人から生まれた俺も美しく生まれていいと思うのだが、俺は兄さんたちほどは整った顔にはならなかった。どっちかというと、気品漂う王家の血ってよりちょっと意地悪そうなカッコいい街の男の子、っていう風貌だって乳母に言われた。

俺は王子より街の男の子に生まれたかったよ…そっちのが俺ににあってるさ。


「母上、ただいま参りました。遅くなって申し訳ございません」

兄さん姉さんは最敬礼の姿勢を取り、母さんに言った。声に反省の色がないんだよなあ…

「ほう?お前らは王の子供だから約束の時間を破っていいとでも思っているのか?あまりに思い上がった所業ではないか。え?」

母さんは笑顔のまま兄さんたちに言った。笑顔の裏に怒りの猛烈な顔が見えるよ…

しかも、母さんはプラチナムだ。女王の中の女王、という運命にある『プラチナム』に選ばれた人は、魔力、戦闘能力、知能、すべてが向上するらしい。もともとの水準が高かった母さんだから、その人にこう迫られると、ものすごく怖い。

事実、普段は横柄な兄さんたちも小さくなっている。

兄弟や能力でこういう時の態度を差別しないところが俺の母さんのいいところ。ほかのやつら、兄さんたちが失敗してもものすごく甘いのに、俺が同じことやると物凄く怒るんだ。


「今度から反省して、その性根叩き直してこい。さて、本題に入るとするか。」

「私は老いてから相続云々のことでもめるのはごめんだ。だから、王位をこのうちだれに譲るかを今この場で発表しようと思う」

ほらきた。俺の予想的中だ。兄さんたちは軽蔑と哀れみの視線をこちらに向けてきた。

ほっとけ!もともと俺はこういうのに興味はないんだよ!


「文書を持ってこい」

母さんが言うと、近くに待機していた宰相が手に持っていた巻物を母さんに差し出した。

この宰相も人によってひいきをしたりしない。この国がこの代で大きく成長したのは彼の功績も大きい。


宰相エクセレスが文書を開き、母さんに目配せした。母さんはうなずいた。読め、ということなのだろう。エクセレスは朗々と響く声で文書を読み上げた。


「王位継承権を持つものは、第一王女、インドルチェとする」

姉さんの顔が誇らしげに輝いた。兄さんたちは歯ぎしりしている。へん、ざまあみろ!

まあ、姉さんにもそこそこいじめられてきたりはしたんだが、兄さんたちより性格はマシだ。成績も最もよい。妥当な線だ。


周りの人たちはざわざわしていた。もう会はお開きだろうな。俺も帰ろうとした。

「待て、まだ発表は終わっていないぞ?」

母さんが威圧しながら俺らに言った。だから怖いんだってば!

周りのざわざわが収まった。


「エクセレス、続きを」

「はい。それを支える役割として、第三王子ニーケを指名する」


周りが突然ワッとうるさくなった。

俺は理解にたっぷり20秒かかった。



俺が、姉さんの補佐?

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