「ニウム学園に進学することが決定いたしました」
「は?ニーケ、銀が作れるの!?」
姉さんは素っ頓狂な声をだした。
「うん。もっと成長すれば金も作れるかもね」
「はあ、錬金術師ってすごいのね…」
姉さんは感心している。俺もそう思う。
だからこそ、だ。俺みたいな人が錬金術師になってよかったのか…?
「ニ、ニーケ様。この銀をあなたが作ったのですか…?」
後ろから声がした。いつの間にかリンが立っていた。銀を凝視している。
「え、うん。錬金術ってすごいんだね」
俺はさらっと言った。
リンは目をまんまるくして俺を見た。
「この銀、超高品質ではないですか!」
リンは叫んだ。
「「え、そうなの?」」
エリノア姉さんと俺は同時に言った。
「そうですよ!ニーケ様、さらりと言ってのけることではないです!」
リンはもはや悲鳴のような高音で言った。
そういえば、リンは鑑定士だった。
城生まれだからメイドになっただけで、実際は結構腕のいい鑑定士になれるくらいの実力らしい。
「最近、この国では銀が枯渇気味なんです!ニーケ様、まさかこれを売ろうなんて考えてないですよね!?」
リンは俺を睨んだ。ちょっと怖い…
というか、この銀売っちゃダメって言った?なんで?
「え、ダメなの?」
「ダメに決まってるじゃないですか!」
リンは大声で言った。
「こんな銀が市場に流出してみてください!
あっという間にオークションで超高値で売れて、それを羨んだ金持ち連中が出どころであるニーケ様を探し出して、あなたを悪用しますよ!
悪用されるだけなら王国も手を打てますが、なにしろあなたは女王様に無職と診断された身!
無職と診断されたのにこんなものが作れたら!錬金術師という職業がものすごいものだとわかったら!王家の信頼も権威もがた落ちなんです!」
言われてみれば理にかなっている。
それに、そんなことが起きたら、俺は魔王討伐に行けない!
それは困る!
「わかった!じゃあ俺はこの能力を隠蔽して、無職として過ごせばいいのか!?」
俺は勢いよく言った。
リンは満足げに頷いた。
「そうです!それに、ニーケ様は作り出したものを市場に流出させちゃだめですよ!」
エリノア姉さんはちょっと残念そうだ。売ってお金に変えたかったのだろうな…
「ねえ、リンちゃん。この銀、売ったらどのくらいのお金になるの?」
姉さんが聞いた。俺も気になる!
「そうですね…。結構大きいですし、何より超高級品。うーん、それを考慮すると…
ざっと100億ルドにはなりますね」
リンはさらりと言った。
いや待て、100億!?さらりと言うことじゃないだろそれこそ!
「ひゃ、百億!?そんなにお金があったら、この国が3か月は回るじゃないか!」
俺は大声で叫んだ。姉さんは口をパクパクしている。声が出ていない。
リンがねちっこい目でこちらを見た。
「自覚持ってくださいましたか?この銀はそれほどまでに貴重なんです。
ちなみに、今この国で産出する銀の平均的な品質で、このサイズだと…1000万ルド行ったらいい方ですかね」
「いったい何桁違うんだ…」
姉さんが声を発した。よかった。声戻ったんだね。
突然、入り口の扉が叩かれた。
「誰だ」
俺は、腰の剣を抜き放って聞いた。
「城からの使いでございます…
なんちゃって。ガイアだよ!
ちょっと城の方に行く用事があって、城に行こうとしてたらさ。兵隊さんたちが街でうろうろしてて。気になって声を掛けたら、お前を探してるっていうからさ。
渡したいもの、もらってきたんだ!」
まぎれもないガイアの声だ。
俺は扉を開けた。
「やあガイア。どういうものだ?」
ガイアはズボンのポケットから紙を一枚取り出した。
王国の紋章が描かれた、金箔の入った高級紙だ。
ガイアは、その内容を読み上げた。
「えーっと、『ニーケ様、あなたは本日午前10時からの評議会において、ニウム学園に進学することが決定いたしました』って書いてある。
学園だって。よかったな!」
ガイアはニコニコしている。
俺とリンはそれどころではなかった。
学園に進学。それは、王家の中では「落第の印」を表す、極めて不名誉なことだった。




