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二人の姫君  作者: 南雲司
9/20

離別

[進化する斜め]

 六本の足が滑らかに動きステップを踏む。

 人形達の付き出す棒を

 交わし交わし交わし、

 交わしきれない物は

 前足で受け流す。乗っているのはカーシャだ。

 特に操作している様にも見えない処を見ると、

 自動で人形達の棒を避けているのだろう。


「良く出来ているでは有りませんか、何が不満なのです?」

 ドロシーが問う。

「だって、老師が乗るんだぜ、何が有っても良い様にしたいじゃないか」

「成る程、それなら掩体代わりに成る物が必要ですね」

「エンタイ?」

「はい、突然、兵が乱入してきて捕らえられたと聴きました。場合に依っては銃器の類いでの狙撃も有るかも知れません。ナノセコンドで展開出来るシールドは必須でしょう」


 出来る事なら筆者はカーシャに伝えたい。

 相談する相手間違ってると。


[同盟破棄]

 イバーラクが一枚板では無い様に、空軍にも様々な思惑しわくが渦巻いている。女性士官や女性兵士達は、品行方正で知られる空軍士官達を目当てにしている者が多い事もあり、あまり政治には興味を持たない。

 が、一方では派閥力学には敏感に反応する。将来の良い人には出世コースに乗る者を選びたいのだろう。


 その為にある種の雪崩現象が起きる。有利となった派閥に女性達が付き、情報の流れに偏差が生まれる。気が付いた時には手遅れに成る程に急激な変化もある。


 カヌーベは執務室が一夜の内に孤立している事に気が付いた。気が付けたのはこれまで潜り抜けてきた修羅場のお陰だろうが、最後に判断を誤った。

 政治的に中立である、理想的な副官に側近を集める様に頼んだのだ。その女性副官は拡張派の首魁に報告した。


 翌日、間諜である事が発覚し逃亡を企てた空軍司令一味が銃撃戦の末射殺されたと、空軍府から布告があった。

 神樹の森はイバーラクとの同盟を破棄し、森からの即時退去を命じた。と同時に森全域を管理下に置いたと宣言した。

 歪なダンジョンとの分断を防ぐ為だと思われた。


[マッチ治癒魔法]

 オルファとアリスは兵達が作業している所に出向いてちょっとした怪我や風邪、二日酔いなどを治癒して回った。士気はいやでも上がる。

 張り切りすぎて怪我をする者も出る。二人の姫君はニコニコと治療する。winwinなのか、高度なマッチポンプなのか良く分からない情況が出現した。


 この情況はドロシーが二人を夕げに呼ぶまで続いた。


[強くなって]

「アマーリ君は何故魔法学を学びたいと思ったのかな」

 それについては、願書にも一筆いれてあるし、面接の時語ってはいる。だが、グル師が訊いているのは建前ではなくて本音だろう。


「俺…私の国は貧しい島国なんです。国主も人格者ではあるんですが、理想主義っていうかお人好しで、まあ、あと数年持てば良いんじゃないですかね」

 片眉をあげるグル師。

「本人もそれは分かっているらしく、俺を留学させたって分けです。卒業しても帰ってくるなと、言われました」

「成る程、事情は分かった。だが訊いたのは君の事情ではなくて[思い]なのだが」

 グル師には政治をどうする事も出来ない。出来るのは教育、伸びようと足掻く若者を手助けする事だけだ。


 頷いてアマーリは語る。

「ええ、それでも俺は…私は帰ります。誰も手出しが出来ない程に強くなって」

「ふむ、それが魔法学と言う事か」


 では、君は、とでも言うようにグル師はトムオスの方を向いた。


[マリーの不満]

 マリーは不満である。取ってこい遊びをしてくれるのは良いのだが、サルーが楽しんでくれなければ、マリーも楽しくない。

 ふしゆーふしゆー言ってるだけでなんだか良く分からないが、ツノウサも多分同じだ。


 リュウコに相談してみよう、マリーはそう思った。


[トムオス]

「私ですか」

 トムオスも、その島国の事は知っていた。貧しく価値がないと直近の国々からの侵略を免れていたが、水車機関発達で地勢的価値が変わった。海賊からの保護の名目で取っていた海上通行税がそもそも海賊行為だと難詰される様になり、しばしば徴税船が他国の軍船に討伐された。

 アマーリはその国の首長の息子だったんだな。そんな事を思った所以でグル師の視線に反応するのが遅れた。頬が赤らむ。

「私は、アマーリ程強烈ではありません。名誉と誇りです」

 名家に生まれ神童と期待され続けたトムオスの原点は単純明快だった。


[あれ?]

 斜めに為った発射台の上に試作ミサイルが載っている。

 何故こんなに早く出来たかと言うとエンジンに

 火薬式のロケットエンジンを使ったからである。

 数分だけ飛んでいれば良いのなら

 ロケットエンジンで十分だと気付いたのだ。


 機体の方は、構想を聴いたシャオが興味を持ったのか

 十分程でチャチャッとでっち上げた。

 硝子繊維の構造体の表面を

 樹脂でコーティングしただけなので頗る軽い。

 弾頭には降下布が仕込んであって、

 機体を回収できるようにしてある。


「発射するよ!三、二、一、今!」

 白煙を曳いて飛び出した試作ミサイルは、

 遥か上空で白い花を咲かせ、ゆっくりと降りてきた。

「あれ?成功した?」A

「派手に空中爆発とかは?」B

「失敗は成功の母、では成功は失敗の父?」C


 三人娘が思っていたのと違う結果に為った様だ。


ロケットエンジンに使われた火薬は綿火薬の燃焼速度を更に落としたものです。

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