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二人の姫君  作者: 南雲司
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罅割れる世界

世界は優しくないようです

[目処]

 鉱床に幾許いくばくか踏み込んだ処で、プヨはまた難問に直面した。温度が上がり過ぎるのだ。酸化アルミを混入してみてもさほど成果は上がらず全体的に劣化の傾向がある。

 ペースを落とせば良いのだが深く為るに連れこの傾向は高まるだろう。冷却するにも熱を逃がす処がない。


 木目シャオが解決した。

「分散させる」

 断熱効果の高い繊維構造体の熱伝導率を引き上げ地表まで熱を持ってくる。当然付与魔法を使うのだが、燃費もシャオの術式ならかなり低い。それでも魔素を使う。

 無視できない程に使う。


「此処から調達する」

 地面に描いた簡単な図面を小枝で指す。鉱床だ。

「含まれている硫黄の所以で魔素が滞留たいりゅうしている」

 吸い込みきれていない分の魔素だ。

 魔素を調達するにはその鉱床にも、繊維を走らせなければならない。

「そこの部分は構造体である必要はない」

 魔素を拾えれば荒くても良い。

 目処が立った。


[世界の糸]

 カーシャは、世界に無数の糸のようなラインが走っている事に

 気付いた。

 プロシージャ達が検索ラインと呼ぶ物だろうか。

 眼に見える分けでは無いがそこに有るのが微かに分かる。

 そんな感じだ。


 老師に聴いてみようか、いや寧ろ小さなダンジョンに行った時

 プロシージャ達に聴こう。


[剥がれた皮]

「断る、貴官に命令権はない」

 空軍の持つ戦闘隊六個中隊の内ワルキューレ一個中隊は早々と離反し、森に向かわせた三個中隊は一機も帰って来ない。なのでモブ中佐は飛空艦隊に出動を命じた。

 その答えがこれである。


 この頃には皆、何が起きたのか把握し始めていた。元帥代行を名乗るモブ中佐にしても、その権限を与えることの出来る、エーアス執政官が拘禁されていて、とても信頼が置けない。更には同じ憲兵隊からも疑いをもたれつつあった。

 そして、森の憲兵隊が全て拘束され、カヌーベ司令が指揮権を取り戻した事で、事態は一変した。

『諸君、これはクーデターの一翼を我が空軍憲兵隊が担ってしまった恥ずべき事件である。我々は首謀者を速やかに捕らえ、国府を奪還しなければならない』

 モブ中佐は逃げようとした所、尻を撃たれ確保された。


 翌日、国府を襲った陸軍部隊は陸水空と騎士団の連名で反乱軍と認定された。

 翌々日、空軍飛空艦隊が派遣され、反乱軍は一発の反撃もせず投降した。エーアス政権の重鎮達はエーアスを除いて全て殺害されていた。目的は達したと言う事なのだろう。

 首謀者十数人は空軍陸戦隊と同乗していた陸軍特殊部隊に拘束された後、即日裁判が行われ翌日に死刑が執行される事になった。

 犯人の中でただ独りモブ中佐だけが取り乱し「話が違う」と喚き散らし空軍の恥を晒した。


[蜜月の終わり]

 歪なダンジョンでは、ミーティアがワルキューレを集めていた。

「残念だがイバーラクと三つのダンジョンの蜜月は終わった。同盟は有効だが、互いに警戒しあいながらとなるだろう。君達も身の振り方を考えていてくれ」


 ミーティアがこの様な話をしたのには分けがある。

 ワルキューレは空軍に属してはいるが、

 イバーラク、

 神樹の森、

 歪なダンジョン

 の混成部隊なのだ。

 神樹の森兵学校自体が、イバーラクと森の共同で運営されている事を考えればその複雑さは分かる。

 卒業後十年の任期が義務付けられるが、それは必ずイバーラク空軍へと決まっているのでは無いのである。


「歪なダンジョン一択でしょ」

 意外な事にイバーラク人の娘達から理解しがたい希望が出た。

「眷族は間に合ってるわよ」

 虎治の嫁達が警戒する。

「虎治さん一千人まで増やすって言ってましたよ?」

 まじで眷族狙いの様だ。なぜ虎治がもてる。


[二人の姫君]

「初めまして、オルファと申します」

 ドロシーを視るアリス。

「ご挨拶なさい」

「私、アリス」

 シャイな子だ、知恵が足りないのかしら、とオルファは思った。

 でも、この子はダンジョンマスターだ。

 身分としては、父の次、多分、公と同じくらいのはず、失礼の無い様にしなければ。


 こうして、アリスとオルファは出会った。


[罅割れる世界]

 その日、逆ナン目的で農作業に参加していた三娘ABCは、

 見付けては行けない物を見付けてしまった。

「げっ、木目シャオ!」

「なぜ此処に?」小首を傾げてシャオ。


「し、支援の一環としての移籍で、あります」A

「み、身分は歪なダンジョン空軍、小さなダンジョン駐在武官であります」B

「……ぁ、であります」Cは台詞を考えている内に手番が来たようだ。

貴官等あなたたち天馬は乗れる?」

「一応、一通りの訓練は受けているであります」A

「空戦はダメダメであります」B

「……あります」Cは諦めて、天丼要員に為る事にした様だ。


「そう」木目シャオはそう言って去って行った。

「ヤッバー」A

「また、研究班遣らされるかと思ったしー」B

「天馬乗せられるなら、偵察?全然楽、どんと来い」Cは緊張の元が居なくなって、いつもより台詞が長い。


 次の日、木目シャオから新型天馬の書きかけの図面を渡された。

「任せる」

「自分等で作って、自分等で試験しろと?」A

「まじ最悪~」BC

 この世界は、才能を遊ばせる程優しい世界ではない様だ。


いっそ三人娘を主人公に…マテ

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