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二人の姫君  作者: 南雲司
3/20

イバーラクの争乱

避けては通れないので、イバーラク崩壊の序曲部分が暫く続きます。

[死者の呟き]

「俺、死んだと思ったんだけど」

 寝起きの様な幾分ボンヤリした頭でサルーは呟く。

「虎治の死に戻りをコピーして貼って置いた」

 シャオの答えは明快だ。

 神樹のウロである。


 執務室に憲兵隊がやって来て逮捕すると言うから、

 容疑はなんだと訊いたら、いきなり撃たれた。

 憲兵隊のボスはなんとか中佐とか言う、

 旧防空隊から、総務部に押し込んでやった

 使えない指揮官であった筈だ。

 こんな事をする度胸があるとも思えないのだが、

 なにがあったんだ?


「カヌーベとケナイは無事かな?」

「わからない」


 暫く話して、オアシスに避難する事にした。

 そろそろ取って来い遊びをしてやらないとマリーが拗ねるし。


[発動]

「導師、発動に成功しましたよ」

 トムオスが得意気に報告する。

 弾速はひょろひょろで的には辛うじて届いた物だったが、

 発動は発動だ。


 グル師も、そうかそうかと嬉しそうだ。

 本人としては理解が進んだ事で発動できたと言う

 感触が嬉しいのらしい。

 魔力の消費が少なくて済むのだ。


[参謀長]

 カヌーベは、憲兵隊の動きを掴んではいた。しかし、こうまで急速に動くとは予想できずシャオに連絡するのが遅れた。しかも、まさかサルーに迄手が伸びるとは考えてもいなかった。

 なので憲兵隊が踏み込んで来た時、標的は自分だと判断したのだ。


 直ぐに窓から脱出し、連絡艇迄走った。森迄逃げ込めば隠れる場所の宛はある。森に到着すると憲兵ではなく森人に拘束された。

 一体、誰が画策したのか不明であるので可能性のあるカヌーベを確保したと言う事らしかった。


 簡単な尋問を受け、疑いが晴れた後、サルーとケナイが射殺されたと聴かされた。


[執政官]

 エーアスに取って最悪の事態となった。

 彼が出したのはシャオに対する出頭命令だけである。

 処が、空軍憲兵隊が動き、そこから報告が来た。


 シャオが武力を持って抵抗、逃亡した。

 また、逃亡を扶助し、頑強な抵抗をした空軍高官二名を

 やむを得ず射殺した。

 その中にサルーの名があった。

 これはエーアスに取って背景となるべき武力の殆どが

 消失したことを意味した。


 水軍は先の反乱の後弱体化し、

 またエーアスへの不審をあらわにしていた。


 陸軍はマーガタが老齢で元帥を退いて以来、

 若手将校を抑える者がいない。


 騎士団は、航空隊以外、再編が滞っており


 空軍は股肱と恃むサルーが死んだ。


[背景]

 少し、この事件の背景を説明しなければならない。

 官営の不効率を嫌い、執政府は紡績工場の大半を民間に払い下げた。

 効率が上がり生産力が上がったが、国内の需要は飽和した。

 貧富の差はそれで縮まるとの世評とは裏腹に、寧ろ拡大加速された。

 娘を身売りする小作農、首を吊る小店主。


 水軍と陸軍の士官には平民の出が多い。

 政府への不信が広がった。

 一方、せっかくの工場を手に入れた富裕層は、販路の拡大の為、

 または安い賃金の労働力を手に入れる為、

 拡張政策を取る様に政府に圧力を掛けた。

 勿論金貨の袋が飛び交った。


 この拡張政策は青年将校達に取っても起死回生の策に見えた。

 邪魔になるのが、意固地にも専守防衛を堅守する、

 空軍首脳と弱腰外交のエーアスである。

 金貨の袋が空軍憲兵隊の中佐の許へ届けられ、

 執政府には陸軍の一個大隊が向かっている。


 エーアス逃げて~。


[投降]

 空軍の元帥執務室に座っているのは元帥閣下に名前すら覚えて貰えなかった憲兵隊のモブ中佐である。本名かどうかは知らない。モブだからモブである。

 そのモブ中佐は、シャオの出した質問状を鼻で笑ってゴミ箱に捨てた。空軍は最強である。野蛮人のエルフ如きに何が出来る。即座にエルフ討伐令を出した。


 森では、全ての憲兵隊員の拘束が終了し、

 カヌーベが神樹の森空軍府の指揮を執ることになった。


「ワルキューレですか?予備戦力として[歪]にいて貰いましょう」

 戦いになるとしたら相手は、同国人、しかも同じ空軍になる。

 多感な少女達には距離を置いていて貰いたい。


 エルフ討伐の先陣として来た鷲型一個中隊十二機が、

 即座に降伏して森空軍に合流した。

「後の連中は分かりませんよ、うちにも結構拡張派いますから」

 指揮官の中尉の弁。


[案の定]

 二番手で来た二個中隊の指揮官はバリバリの拡張派だった。

「貴編隊は森人の領域を侵犯している、直ちに回頭せよ」

「裏切り者、エルフの手先に成り下がったか」

「裏切りはそっちだ、神樹の森は同盟国だ。何の権有って侵犯する、エーアス執政官の指示か」

「惰弱なエーアスは解任された。これはイバーラクの意思だ」

「サルー元帥を殺し、建国の英雄エーアス執政官を逐うか、ならばイバーラクは我らの敵だ」

「謀反人め!」

「同じ釜の飯を食った誼だ、発動機を切り、降下布で降りろ。命ばかりは助けてやる」

「ほざけ」


 意外な事に約半数が降下した。

 戦意があると見なされた残り半数は即座に撃墜された。

 森人の丸太が上空で待機していたのである。


[うつかりシャオさん]

「えと、俺、死んだ事になっちゃってる分け?」

 うっかりさんなシャオはみんなにサルーが生きている事を

 言うのを忘れていた。


本とは、此処でサルーは死んじゃう筈だったんですけどね。

オアシスのダンジョンマスターは、マリーが引き継いで、リュウコにしがみついて空中戦とか考えてました。それも、捨てがたい。

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