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二人の姫君  作者: 南雲司
17/20

癒しの海

難渋しております

[戦車炎上]

『貴軍、貴軍団は小さなダンジョンの領土を侵犯している、している、いる』

 山彦が掛かったかの様な、重なった音声でイバーラク軍に、警告がった。

『直ちに、直ちに、転進し領域を離れよ、なれよ、れよ』

『さもなく、さもなくば、侵略の意思ありとして、実力で排除する、除する、する』

 地表に降りた雲に覆われたかと思えば、それは白い靄で、周りの様子が判然としない。兵達に動揺が走る。エルフが、森人が敵と為るかも知れないとは聞いていた。しかし、この様な大掛かりな魔術を使う相手だとは知らなかった。勝てるのか?


「構うなはったりだ!前進」

 横隊に展開したままで隊列は進軍を再開した。

 突如、無数の火箭かせんが走った。

 その火擶は、戦車を穿ち爆散させ、転覆させた。

 無数の戦車が紅蓮の炎を纏う。

 次いで、闇雲に撃ち始めた対空火砲を

 ことごとく沈黙せしめると、

 森人は再び同じ警告を発した。


 数年前、当時空軍と親密な関係にあった森人が、空軍府に侵攻して来た諸国連合軍に対峙した。

 その時何が在ったのか、将軍は理解した。

「撤退する」

 唇の血の気は退いていた。とても勝てる相手ではない。


[キーナン公国]

 自領に戻った公爵は、主力を領境の砦に留め、百騎ばかりを率いて公館に帰った。出迎えた軍務卿に、早速指示を出す。

「[車椅子]をもう百騎、早急に手に入れよ。あれは戦を変えるぞ」


 盾として展開された戦車を軽々と飛び越え、

 敵陣を蹂躙出来るのだ。

 いや、適当な兵装があれば、戦車をこそ蹂躙出来るだろう。


 何より、訓練の足りてない筈の、後から投入した部隊でさえ、

 一撃離脱を徹底させればしたる被害もなく

 多大な戦果を引っ提げて、戻って来たのだ。


 軍務卿には砦に敵が迫ってきた時の援軍の手配を重ねて指示し、

 同じく出迎えに出ていた財務卿の戦費の出入り報告を聴いた。

 これ等は執務室に早足で向かうごく短い時間で行われた。


 執務室の前で打ち揃って臣下の礼を取る、侍女達の間に、客人である二人の姫君の優雅なカーテシーを見付けると、公はにこやかに声を掛けた。

「中で待っていて貰っても良かったのだぞ」

 それは親族と見なすとの宣言でもあった。


[外壁拡張]

 小さなダンジョンには、未だ、イバーラク軍の撤退の報は届いていなかった。プヨは増築していた外壁の作りかけの部分の撤去を何時始めればいいのか、計りかねていた。

 森人との(打合せ)担当はドロシーではあったが、今はキーナンに出向いていて、いない。新しいデュプリケイトのキャシーは、新参の事とて内向きの差配を任せてある。

 木目シャオ様が相手なのだから、直接訊いても良いのだが、気後れが在ってはばかられる。

 そこへ、当のシャオ様から念話が来た。

「イバーラクの排除に成功した。外壁の拡張は切りの良いところ迄進めて良い」

「了解しました」

 ならば、継いでの事、もう一周り外壁を足そう。


[虎治の嫁達]

 ワルキューレ一個と、投降した鷲型部隊の二個中隊は、空軍からの強襲に備え神樹の森に展開していた。

『此方ユグダ、アサミ小隊、そちらへ鷲型二機が向かっている。対処せよ』

「了解」対処せよとは曖昧な指示だが、可能なら戦闘は避けよとの内意がある。


 森全域を管理下に置いた所以で警戒領域は無闇と広がっているが、程なく、森へと侵入しつつある空軍機を捉えた。アサミは第二分隊に上空占位を命じた後、隠蔽を解いた。


「貴編隊は神樹の森領域を侵犯している。速やかに退去せよ」

 鷲型二機はバンクを振ると回頭して去った。サルー司令が良く遣っていた、緊急発進の錬度を探る為の物だろう。

 態々見付かり易い高度で来た。


「え?もう回復したの」A

「三日は掛かる筈」B

「森のラインで、神樹のアーカイブに転送されてたぽい」C


 肘から先を吹き飛ばされると言う、ショック症状で即死しても不思議ではない重症を負った三娘Cは、その日の夕方には、五体満足で復帰した。

 そう言えば、事故で膝から下を削り取られた時も、

 大量出血に耐えた。

 不死身かも知れない。


「まじかー」AB

「それより謎が一つ」C

「?」AB

「あたしら、未だに虎治の嫁扱いされてるぽい」C

「やぶさかではない、つか帰りたい」AB


 三人娘は優先度が色々と、可笑しかった。


[敗残]

 負けてはいない。そう思いたいのだが、どうにも、敗走にしか見えない。将軍は水車搭載の自動車から周りの自軍を観察して思う。兵達は、誘爆の際の煤煙を被って煤けている。

 遠巻きに太守の軍らしきゴーレム達が見え隠れしていて、領境を越えれば、襲ってくるのだろう。此方からの攻撃は封じられているとは言え、反撃であれば正当防衛が成り立つ、となれば、森人からの制裁の火擶は太守の軍にも降り注ぐことに為るのだろうか。

「知りたいとは思わんがな」

 境を越えた部隊に陣を敷かせる。反撃の構えを見せなければ、敵は機動力を利して後方から蹂躙してくるだろう。盾となる戦車部隊を失ったとは言え、まだ、此方の方が数は多い。敗残とは呼ばせない。


[歌姫の思い]

「歌を歌いたいのです」

 アリスは、そう言う。

 其れしか出来ないのだから、

 其れこそが私なのだから。


「姫の歌は私も聴きたい」

 公は言う。

 ささくれだった心を癒して貰うのは悪い事ではない。

 もしかしたら、今、一番必要な物かも知れない。


 アリスは歌った。

 柔らかな優しさが流れだし、

 染み渡り、

 公館を越え、

 空に広がり、

 大地に降りそそぎ、


 癒しの海となった。


アイディアって、出すだけなら、いくらでも沸いてくるんですよね。三題噺ってあるじゃないですか。あれを一月ひとつき位練習すれば直ぐにコツが掴めますから、お勧めです。

問題は、そのアイディアをどう組み合わせて、物語をでっち上げるかで、まじで苦手です。どうも、此ればかりはコツとか関係ないみたいで、ひたすら、うんうん唸るしかないのかも。


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