一話 山城遥斗と間宮裕司
次上げられる暇があったら、こっちか、テンプレ回収かどちらかを上げたいと思います。
「山城さん。本日の異変件数です。」
俺はその報告書を飛ばし飛ばしに眺める。
異変は昨年の春に始まった。
電車内で起きた自爆テロ。全六十七名が命を落としたその事件は連日報道され、一年程経った今でも記憶に新しいが、その事件を担当した俺、山城遥斗は大衆とは違う意味でその事件を覚えている。
そう。爆発した車両に搭乗していた被害者の中で死体、もしくは、その鱗片でも見つかったのは六十五名。
事件現場周辺を探し、地域住民にも呼びかけたりしたが、その二名、野口隼と、太宰慎太郎の遺骸は見つかっていない。
ただ、それだけならまだ良かったが、その後も立て続けに被害者の遺体が消失したり、東京都だけでも、十四件の行方不明者の存在が発覚した。
防犯カメラには、被害者の遺体が灰になってしまったかの様に四肢の先から崩れ、最終的にはその灰の様なものもその場から無くなっている。
「はぁ。」
考えるだけでも頭が痛くなる案件だ。
それに加えて、最近になってからは、異様に触手の発達した海月等の、不特定多数の地球外生命体や、これまた地球には存在しない言語を使う出身地不明の不法移民の出現が世界中で後を絶たない。
住民の生活を守る警視庁の人間には本当に辛すぎる。
「お~い。山城はいるかね~」
「おぅ。入って来ていいぞ~」
「そんじゃ、お邪魔します。あ、そこの君、コーヒーくれない?」
今この部屋に入ると同時にコーヒーをお強請りした図々しい奴は、間宮裕司。俺の幼馴染でも有り、割かし有名な研究者・・・だった気がする。
「今日、異変起きたか?」
「あぁ。なんでも、長野県と新潟県の県境辺りにある山に背中に水晶の様な鉱物を付けた熊が出たそうだ・・・ってそっちはなんかこの騒動の事分かったのか?」
俺の質問に間宮はコーヒーを飲みながら答えた。
「ふぅ。まぁな。相手は恐らく今まで人類が対面した事の無い事例だ。今まで色んな事をしたさ・・・」
「それで?」
間宮は笑みを浮かべながら言った。
「それでよ、現場周辺に超音波やら、赤外線を飛ばしてみたら、突如、空気中で歪んだり、曲がったんだ。」
「それだけ?」
「それだけ。」
俺の疑問に笑顔で頷く間宮。
「ふふふ、これで、例えば、空間に何らかの歪みが生じた事が原因だ!とか、色々仮説が立てられる様になったんだ。そんでもって、俺が胸を張ってお勧めする説は、これまでに現れた動物や、人間。そして、消失した被害者達は異世界、もしくは、パラレルワールドだったり、他時間軸とこの世界?この時間軸?との間を移動したものではないか。という説で・・・」
間宮が誇らしげにお勧めの説を俺に説明する中、俺はそれを適当に聞き流し、”今日も今日中に帰れなかった”と我が家の方向を眺めた。