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7 世界には似てる人が三人いる

 辺りは(ようや)く静かになった。

 見回すと盗賊は跡形も無く骨さえ残っていなかった。人を殺害したと言うのに何の感情も後悔も無かった。余りにも現実離れした光景に現実感が持てなかったのか、あまりの衝撃に感覚が麻痺している所為かもしれない。


 だとすれば、今後徐々に後悔や懺悔の念が出て来るのかも知れない。


 しかし、絶対に後悔もしないし懺悔の念も持たない。やらなければやられていたのだから。でも相当性が認められず、過剰防衛だな、こりゃ。


 捕虜五人組は生き残った様だ。護衛は此方を見ているが他の四人は気絶していた。


 俺は護衛の補助魔法で上手く危機を脱する事が出来た。


「しかし、女の身で良く頑張ったものじゃ。いや眼福眼福。」って、見て喜んでんじゃねぇー、って俺は女じゃねぇーし。でも否定したら確実におかしいと思われるな。


「あなたの魔素が使えたからですよ。でもこの世界では商人の護衛でもかなりの魔素を持ってるんですね。だってあれかなりの上級の魔法で魔素量がかなり必要だったのに。魔法使いでもないのに凄いですね。」


「たまたまじゃ、たまたま(;^_^A アセアセ・・・」


「たまたまなんだ。」


「発音が変じゃ、最初の『た』にアクセントをつけるんじゃない。」


「って、なぜ日本語?あんた神様だろ?もうバレてるよ。」


「ナンノコトカナァー。わしゃただの護衛じゃ。」


「そのしゃべり方!バレバレ。ってなぜ俺は女になってる!?」


「異世界に神のサービスじゃないのか?」


「はぁあ?それじゃ俺のハーレムの夢は?異世界に来た意味ないよぉー!!」


「君、一体異世界に何しに来たの?そんなこと言ってるから異世界の神がおぬしを女にしたんじゃないのか。異世界の神は女神じゃからの。まぁ、異世界の神に聞いておいてやる。」


「もう、仕様がないなぁ。でもありがとうございました。何とか生き残れました。こんな異世界にまで来て頂いて。」


「なに、それもサービスじゃ。それではそろそろ商人たちを目覚めさせるぞ。話す為に気絶させておいたんじゃ。デカい魔法使うもんじゃからシールド張って守っておいたぞ。感謝するのじゃ。」


「サービス(ついで)に街まで送ってくれませんか。」


「商人が街まで行くから乗せて行ってもらえば良い。では達者でな。何かあれば教会へ来るのじゃぞ。」


「今、今話があるよ、このスキル・・って、護衛も気絶してるし・・」


 逃げたな、神様。





 商人たちが目を覚ました。


「どうなった?」周りを見回しながら商人が聞いて来た。


「全員倒しましたよ。」


「本当か?しかし、物凄い事になってるな。森が無いじゃないか。しかも、溶岩の様に溶けてるぞ。本当に死ぬかと思った。良く生きてたな。盗賊より怖かったぞ!あんた一体何者だ。」(かつ)て森であった場所を見回しながら問い掛けてくる。


「嫌だなぁ、偶々(たまたま)ですよ、偶々(たまたま)。護衛の人から魔素借りられたからですよ。」



 しかし、なぜ女になった?確かに細いとは思ったけど、鍛え抜かれたデカい大胸筋だと思ったのに、デカいおっパイだったとは!

 しかし、それはそれで・・(*´σー`)エヘヘ


【嫌ぁぁぁぁ・・・!!!】


 何か声が聞こえた気がしたけど・・、誰か盗賊に襲われてるのかな?それわてでんがな(T_T)。


「ところで、どこかに盗賊が宝を隠しているはずだ。盗賊のお宝は倒した者の所有物になるのは知っていると思うが、いらない物が有ったら買い取るぞ。荷物もおれのアイテムボックスに入れて王都まで持って行ってやれるがどうする。」商人が親切な申し出をしてくれる。


「大丈夫です。『亜空間収納』のスキルが有りますので。不要物の買取だけお願いします。」


「『亜空間収納』か。それはアイテムボックスの上位版だな。さすがにあれだけの魔法が使えると凄いスキル持ってるな。国に知られると利用されるかもしれないが、お前なら大丈夫だな。」


 そうか、魔法で身を守れるから利用されないという事か。


「でも、魔法もあんまり使えないから難しいんですよね。」


「ん?そ、そうか。」


「お宝はアジトにでもあるんですかね?ここに連れて来られる時に『アジトに連れて行く』って言ってたので。ちょっと建物でも無いか探してみます。」


 周りを見回したが只の焼け野原、否、野原でさえない、焼け溶岩。もしかしたら燃えてしまったのだろうか?


 そうだ!『ぐるぐる異世界』だ!建物が見つかるかもしれない。


『ぐるぐる異世界』と頭の中で唱えると地図が表示された。


 その前に此処がどこか気になった。神は地球のパラレルワールドとか言ってたし。

 縮小してみる。すると、元の世界で言うヨーロッパのような地形だった。

 さらに縮小すると元の世界の地図アプリ「グルグル地球」で表示される様な球体の地球が表示される。それをぐるぐる回すと、ほぼ元の世界と同じ地形だという事が分かった。


 たった一つの大きな違いを除いて。


 太平洋が元の世界とは違っていた。そこに広大な大陸が広がっていた。地名は元の世界で言われていた様にムー大陸か?と思ったらマー大陸と表示されていた。


 まさか、そこに魔族が居るのか?魔族が居るから魔大陸でマー大陸になったとか?もしかしてこの世界の女神様、安直女神?そんな訳ないな。


 そこには、リサンタット帝国と言う国があるようだ。


 でもこの文明未発達の世界で地球の反対側に行くことは絶対にないな。


 ん?もしかしてフラグですか?いや、絶対に行かないし、行きたくないし・・・そもそも夏休みの二カ月だし。


 目的をすっかり忘れていた。『ぐるぐる異世界』に夢中になり過ぎていた様だ。


 地図を拡大しよう。


 拡大していくとここは元の世界で言うパリの南東約100kmにある山の中の様だ。さらに拡大すると自分の周辺が表示された。

 森が焼けて無くなっている部分も情報が更新されている。さすが魔法だ。元の世界の「グルグル地球」ではこうは行かない。詳しく見ると焼けてない部分に建物を発見した。更に拡大すると図面の様な表示に変わった。


「建物を見つけましたよ。多分そこがアジトですね。」


「どこにある、と言うか、どうやって見つけた。ずっとここに居ただろ。」


「『ぐるぐる異世界』と言う『世界地図』のスキルで見つけました。」


「なんと、『世界地図』のスキルを持ってるのか?話には聞いた事が有る、それが有れば海も森も迷うことなく進むことが出来ると言う伝説のスキルだ。持ってる者を初めて見たぞ。」


「そうなんですか?前にいた所では皆さんお持ちでしたので特別感が薄いんですが。」


「お前の国はそんなに魔法が発達していたのか。そのスキルは隠蔽魔法が使えるなら隠しておいた方が身のためだな。」


 なるほど『ぐるぐる異世界』がチートだったんだな。


「一緒に行ってみるか?」


「はい、先導します。」


 既に暗くなっている森の中を数分歩くと建物を見つけた。幸運なことに建物は焼けずに残っていた。建物には鍵が掛かっておらず難無く入れた。


 しかし、中を探したが、残念な事にお宝は無かった。


 もう一度『ぐるぐる異世界』を確認し建物の間取りと部屋の配置を比較してみた。

 すると隠し部屋を発見。巧妙に隠されていた。

 その所為でドアがなかった。


「隠し部屋を発見しましたよ。だけど入り口が無いんですよ。」


 開け方が分からない。開錠の魔法とか、破壊する魔法とか、破壊する膂力でもあれば開けられるのだけど・・

 扉は壁に偽装されている様だ。

 商人と護衛も、更に女性三人も全員で探すが見つからない。


「そう言えば商人さん、お名前を伺っても。僕はターニャと言います。」


「俺はイサドヌインだ。」


「じゃあ、長いのでイサドさんで。」


「かまわんぞ。ところで、俺とどこかで会った事は無いか。」


「いえ、絶対ありません。今日遠くから来たばかりですから、他人の空似でしょう。」


「そうか、この世には似た人間が三人いると言うからな。」


「へー、こっちの世界でもそう言うんですね。」


「こっちの世界?」


「いえ、この国という事です。僕の故郷でも同じように言うんです。」


「そうか、それはどこだ?」ん?なぜかにやけてるし。


「東の方ですね。それはそうと一緒に街まで乗せて行って貰えませんか。」


「いいぞ、馬車は焼けずに残っていたからな。・・・おっ!!あったぞ!」商人さんが叫んだ!


「こんなところに掛金が有って開かない様になってたぞ。」


 掛金を外して扉を開けた。


 ガチャ、ぎぎぎぎぎいいぃいっぃ・・・

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