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17 死者の占有?

 教会を出て方法を模索しながら街を散策する。教会は西道路と第三環状の交差点の南東に位置している。教会西口を出て第三環状道路を南へ向かってみた。南西道路を過ぎたころから徐々に寂れていき人通りも疎らになってきた。


 まだターニャ本人と意思疎通は図れないがその内出来るかな。たまに聞こえた悲鳴はターニャのだったのだろう。


 中世ヨーロッパのような光景は最早消え去りスラム街の様相を呈し始めている。

 そろそろ引き返そうかと考えていると横道から二人の男が飛び出して来て南の方へ走り去った。

 二人が出てきた横道を見ると誰かが倒れているのが見える。


 近づいても大丈夫だろうか。

 死んでいるのか。

 その場合、第一発見者は犯人と疑われる。特に科学技術が発達していなければ衛兵も第一発見者を犯人と決めつける可能性がたかい。科学技術が発達した元の世界でも第一発見者は疑われ真犯人が見つからなければそのまま有罪となる事さえあるのに、科学技術未発達の世界では尚更だ。

 ここは触らぬ神に祟りなし。

 触ってしまえば神も役に立つが・・

 見て見ぬふりをして通り過ぎることにした。


 すると倒れている男が動いた。

 図らずも男の元へと駆け出していた。

 助けよう。


「大丈夫ですか。」


「助けてく…」彼は声を振り絞り助けを求めて来た。


『鑑定』で状態を確認する。


 ――――――――――――――――――――――――――――――

 名前 : アレックス・ペント

 性別 : 男

 体力量: 3/155

 魔力量: 0/0

 ステータス:腹部を刺され重傷

 スキル: 『貼付』

 ――――――――――――――――――――――――――――――

 腹部を刺され重傷と表示されてるだけで、『鑑定』のレベルが低い所為か詳細不明だ。

『スキャン』とかの魔法が使えれば体の中を見て傷がどの程度まで達しているのか解るのだろうけど。

 解ったとしても治療できるかどうかは別だ。

 多分出来ないだろう。『ヒール』だけしか治癒魔法を使えない。


 そう言えば盗賊50人以上倒したのにレベルが全く変わっていない。さすが経験値補正100分の1だ。

 涙が出そうになる。

 そう言えば、彼はスキルを持っていた。

『貼付』と言うスキルだ。

 注意を向けると詳細が表示された。《事理を張り付ける》

 これがあれば自分のスキルまで相手に張り付けることが出来るのだろうか。

 などと考えながら『ヒール』を使った。

 全く回復しない。

 更に使う。『ヒール』。

 やはり回復しない。

 これが最後だ。もう魔素が残っていない。最後の『ヒール』を頭の中で唱える。

 もう彼の体力は1hpしか残っていない。

 決心した。

『アブストラクト』>『貼付』と念じ、自分のステータスを確認する。

 スキル欄に『貼付』があった。

 急がないとこの人が死んでしまう。未だ目的は達成されていない。

 その前に出来る事を願って『貼付』<『獲得経験値10分の1』『必要経験値10倍』と念じる。

 自分のステータスを確認すると、二つのスキルは消えていた。

 そして彼のステータスを確認するとスキル欄にあの最悪スキルコンビが表示された。


 やった、これで普通にレベルが上がる。


 これで、夏休みが終わるまでに夢のハーレム生活が叶えられるかもしれない。

 嬉しさで小躍りしそうになった。


【この、屑がぁ・・】


 何か聞こえた。気のせいかな。


「あのー」恐る恐る問い掛けてみたが返事はなかった。このままでは彼女と意思疎通を図れる日は遠そうだ。意思が近づくどころか離れて行っている気がする。ハーレムの件は考えない方が良いな。


 しかし、本当に『貼付』のスキルは自分のスキルを他人に貼付すること迄出来るスキルなのだろうか。

 もしかしたら、魔力無限大ですべての魔法が使えるチート能力がスキル『貼付』の能力を底上げしたのかもしれないな。


 スキルは魔法を覚えなくても『スキル』を持つことで魔法を発動出来る様になる能力だし、『貼付』のスキルが、そのスキルが有ることで『貼付』の魔法を行使出来る様になる能力であるのなら、魔法が想像力の具現化である限り、『貼付』スキルで行使された魔法を魔力と魔素で強化し、想像した『貼付』の効力を得ることが出来るようになったのかもしれない。


 そして、スキルの行使に魔素ではなくスキルポイントが関与する事に鑑みれば、スキルポイントで魔法を行使し、その強化部分だけに魔素を使ったとすれば少ない魔素でもより大きな効果を狙った『貼付』の魔法の行使が可能になったのではないだろうか。


 でも、これでレベルを上げることが出来る。

 冒険者ギルドへ行こう、行って登録しよう。


「どうした、大丈夫か!」そこへ衛兵がやって来た。


 しまった。嬉しさのあまり逃げるのを忘れていた。このままでは犯人にされてしまうかも知れない。

 しかし誰が呼んだんだ?

 もしかしたら二人組の真犯人が俺を犯人に仕立て上げる為に呼んだのかぁ?仕方ないからきちんと説明して無実を信じてもらおう。


「二人組の男がこの人を襲って南の方へ逃げて行きました。」


 俺の顔を見た衛兵は目を見開いて驚いたように俺に向かって敬礼した。


「ターニャ様でしたか。ご無事でしたか。いえ、ターニャ様なら相手の方が可哀そうですよね。」衛兵が言う。

「特徴だけ教えて頂ければ、後は此方で犯人を捜しますので。」もう一人が言う。


 どうやらと言うか、確定的に、ターニャは偉い役人かその娘の様だ。

 仕事はしなくても良いのだろうか。

 状況を説明した。


「では後の事はよろしくお願いします。『ヒール』を掛けて治療したのですが魔素が枯渇してしまって眩暈(めまい)がするので帰ります。」


「魔法が使えるようになったのですか。それは喜ばしい事ですね。では、お気をつけてお帰り下さい。」


「はい、あなた達も。」


 ふー、犯人にされなくて良かった。

 でも仕事サボってるのだろうし、何者か聞くのが怖いな。

 あ、忘れてた。夕方盗賊のお宝の売却金が貰えるんだった。

 今から行っても大丈夫かな。


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