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13 勇者召喚

「ようこそいらっしゃいました。勇者様方。」


 その言葉で目を開けると沢山の中世ヨーロッパ風の鎧や祭服を着た人達や、貴族のような恰好やドレスを着た人が周りを囲んでいた。

 その中にいた真っ赤なドレスを着た20代前半位の明るい金髪を長く伸ばしたこの世の者とも思えないほど綺麗な女性が青い瞳でこちらを見つめる。


「勇者?何ですかそれ?ここはどこですか、全く把握出来ないんですが。俺は部屋で寛いでいたんですが拉致されて連れて来られたんでしょうか。」


 私の左横にいる二十歳くらいの茶髪でカジュアルな格好をしているイケメンが尋ねる。


「いえ、拉致ではなく召喚です。来て頂いたのです。ここヌサルーフ王国に、勇者として。私はこの国の第二王女アリエノール・ド・ヌサルーフです。私があなた方を魔術で召喚しました。」


「あのぉー。」私も恐る恐る尋ねた。


「返してもらえないでしょうか。これから明日の合宿に備えて買出しに行かないといけないんです。」


「今は不可能です。私共の願いを叶えていただければそれも可能となります。」


「どういう事でしょう。叶えなかったら帰さないと言う脅迫ですか。」イケメンが問い掛ける。


「いえ、脅迫ではありません、懇願です。私共の願いを叶える事と勇者様方の帰還とは両立関係であり、いわば観念的競合の様な関係で、一つの行為によって私共の目的も勇者様方の帰還も叶えられるという事です。」


「良く解りません。」イケメンはどうやらおつむが弱いらしい。


「つまり、私共の目的である魔王打倒が叶えば魔王の持つ宝珠によって勇者様方の帰還も可能となると言う訳です。宝珠とはそれを可能にするほどの魔素を蓄えた玉です。魔王はそれを世界を征服する目的の為に所持していると言われています。」


「なるほど、テンプレという事ですか。」私の右横にいる黒髪長髪メガネで学生服の男子が言う。高校生だろう。

「お食事をご用意しておりますので、その時に詳細をお話しいたします。食事の間に勇者様方のお部屋を御用意いたします。暫くはそちらで生活していただきます。」


 召喚された人は全員で五人。女性二人に男性三人だった。

 私達は初老の男性に連れられて階段を下りて行く。石造りの床と壁と階段で全てが中世ヨーロッパの城を連想させる造りだ。出来て100年は経っているのではないかと思わせるほど苔生(こけむ)し古めかしい。建物は外から見てないので良く解らないが階段が螺旋(らせん)状であり塔ではないかと推測させる。


 五分ほど階段を降りるとやっと地上に到着したようだ。更に廊下を歩かされる。

 廊下は床も壁も石造りだったが階段とは違いまだ新しく数年しか経っていないようだ。


 廊下は建物と建物とをつなぐ外の廊下でその突き当りに扉がありそこから別の建物の中へ入る。目の前の建物は王城の居住区だろうか?そもそも城なのだだろうか。


 中へ入ると廊下には上部が半円形になっている天井近くまである幅一メートルほどの窓がほぼ隙間なく取り付けられ外部の光が差し込みかなり明るい造りになっている。


 二十メートルほど進むと広いホールに出た。


 左には別の入り口があり外には整えられた芝の庭が見える。

 ここが正規の玄関のようだ。

 そこを右へ曲がり突き当りの部屋へと案内される。そこは食堂で既に料理が並べられて辺りには食欲を刺激する様な匂いに満ちていた。


 私達は適当に席に着いた。皆不安なのか無言だ。

 しかし、何かがおかしい。普通不安だからこそ情報を得ようと他者との会話を求め行動する者がいるものだ。

 私も聞きたい事も話したい事も有るのになぜか話せず黙っている。

 もしかしたら、魔法で他者と情報を共有し何らかの行動を起こす事を妨害しているのかも知れない。


 王女が何かを話し始めようとテーブルの前に立った。

「勇者の皆様、どうぞお食事をお召し上がりください。そして食事をしながらお聞きください。この世界にはマー大陸と言う大陸があり、そこに魔族と言う人類の亜種が帝国を築いています。彼らは魔力が高く様々な魔術を駆使し人類を駆逐しこの世界を支配しようと企んでいます。今、マー大陸以外への勢力拡大を何としてでも阻止しなければ人類に未来はありません。勇者様方お願いです。魔族を倒してください。マー大陸にいる魔族を殲滅しなければいずれは人類はこの世界からいなくなるでしょう。勇者様方は我々より能力が優れています。現在の能力、つまりステータスは数字としてみることが出来ます。ステータスと唱えれば目の前に存在するように表示されるそうです。」


「誰でもステータスを見ることが出来るのですか。」


「いえ、普通の者は自分のステータスを見ることが出来ません。ですので魔道具を使用して調べます。ただ、『鑑定』のスキルを持っている者は自分のステータスだけでなく他人のステータスも見ることが出来ます。しかし、『鑑定』のスキルを持つ者は多くはありません。まず、現在の能力をお確かめください。その後質問をお受けいたします。勇者様方は互いに面識がないでしょうから自己紹介もお願いします。」


 まずは、言われた様にステータスと唱えてみよう。

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