後悔
本当に浅はかだった
後悔しかない
君は何も言わなかった。
君は何も教えてくれなかった。
だけどわかっていたんだ。
無理していたのくらい。
次の朝、動かない君を見て僕は血の気が引いた。
紫色の唇。
昨日無理させなければ。
後悔が頭の中を駆け巡る
救急車で運ばれる君。
車内に動きのない音が響いた。
彼女から話される僕。
機械によって波打つ君の体。
病院に着く。
彼女が運ばれていく。
誰もいない個室
眠る君。
目に涙が伝っていた。
機械もすべて外され
いつもどうりの君だった。
ただ、温かさはもうない。
笑う顔も見れない。
これが何処ぞのりんご姫なら、僕の涙と口付けで目覚めるのに。
目覚めない。
君は煙になって
僕にまとわりつく。
高く登る煙は本当に君なのだろうか。
小さな箱になった君
石になった君
君は笑って僕を見てる
僕は泣いて君を見てる
後悔しかない。
僕のせいだと責める僕と
君のせいもあると思う僕
自己嫌悪に浸りながら
いく年が過ぎたのか。
君じゃない人と過ごし
君じゃない人と子供を成し
君がいない世界を生きていた。
もう耐えられない。
生きてる自分が憎い。
貰った君のカケラを手に持ち屋上に立つ。
カケラを天に掲げ僕は言う
我が一生に一片の悔い無し!
足を上げ
息を呑む
落ちる
君じゃない人が僕を見ながら泣いている
助かってしまったのか。
医師の説明によると
君のカケラは僕の体に刺さってしまった。
その一部が僕の体の中にある。
ただ、命に関わりがある訳では無いとの事で
現状維持となった。
ひとつになった。
本当にひとつになった。
僕は君じゃない人に別れを告げ
1人田舎に住んだ。
いつも腕の傷をさすり僕は言う
我が一生に一片の悔い無し。
「ねえ、ママ?」
「ん?」
「パパってどんな人?」
「パパはね、本当に好きな人とひとつになったのよ。」
「ママのことじゃないの?」
「実際は マ マ よ」
「じっさい?」
「気にしないで。ただ、パパはママと誰かの1部を勘違いしてるだけだから。」
「ふーん。
ママ、小指痛くない?」
「今も温めてもらっているからね。」
「そっかぁ。」
子どもは爪のない母の小指を握って歩いていた。