28 人たらしの男は仕事が出来る
なんだこのビジネス書籍みたいなタイトルは。
けど、しょうがない。コミュ力が、そこそこあって合理的に考えられて、おまけに「他人にも『自分の考えや遣り方を、嫌味なく要領よく』伝えられる男」は無条件に素敵なのだ。
今の職場に入って、初日のとき。あわあわしながら、片付けを全部済ませて終業チャイムが鳴ればいいだけ……のとき、どうしていいかわからなかった。
そんなときに、にこにこ笑って手招いてくれた男性がいた。
「こっちに来て、(退出可能時間チャイムが鳴るまで)座っていたらいいよ」
彼はわたしよりも明らかにかなり年下で、だけどね、そのタメ口がちっとも不愉快ではなかったんだよね。
不思議な人だなあと思った。
左手の薬指には銀色の指輪がある。そういった「自分自身に対する余裕」が言動を作っているのかと思ったら、そうでもないみたいだ。
飄々としててさ、余計なオバサンたちひしめく周りには関心ありませーん的な雰囲気にも見える。けど、こっちが言ったことは確実に覚えている。
あるとき、職場の某リーダーが話しかけてきた。
「ゆみかさん。今、架電してませんか」
「あ、はい」
「よかったら〇〇さんの隣でヒアリングしてみませんか。あと事務処理の仕方も見てみませんか」
へぁ?
「やだあ恥ずかしい!」
すると〇〇くんはケラケラと笑った。
「なんもせえへんからw」
仕方がないから隣に座って手順ぜんぶ見てた。
芸術的手さばきの数々でした、わはは(全日本ぶきっちょ選手権に出場したら三位以内に入賞する自信があるワタクシ)。
人懐っこい笑顔で、山本五十六さんだったかの名言を彷彿とさせてしまう。
ええと。
「やってみせ、言って聞かせてさせてみて、ほめてやらねば人は動かじ」
これだよ、これ。
これって真理だと思う、褒めてもらわないと自分以外の人間なんか動くかバカヤロー。ですよね。
ナイス五十六。
〇〇さんが、五十六さんの言葉を知っていたかどうかは問題じゃない。ごく自然に体現できていることが凄い。




