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27 アニメ映画なんか観ちゃった(アマゾンプライムだけど)

 夏だというのに風邪でくたばっている優美香です。やあやあ皆さん、お元気ですか(戦国時代の合戦のアレか/汗)。

 八月から新しい職場に通っておるんですが、土日祝日あんまり関係ないところで。まあ、それはいいんですが。この職場はシフト休日を上長が決めて、あとから被雇用者が意見を言った上で稼働人数を調整するというところで。

 そんなところで、上長がお盆休み後半に金曜土曜と連休を入れてくださっていた。ちなみに木曜日は近畿やら中国四国に、台風上陸していたとき(これはこれでネタっぽいから、後日に)。

 でもわたしは水曜に、体調不良で早退させてもらっていたのでした。木曜は出社したもののフラフラ。まあ午前十一時に、帰社指示が出たから良かったんですが。

 帰宅してからは何もせずに、ずっと寝てました。

 明日からは仕事なんですけれども、ちょっとばかし復調してきたら途端に「ヒマだ! 何かしないと連休なのに勿体ない!」と思えてきてしまったのです。

 かといって電車で梅田に出て通い付けのジムに行く気には、ならない。あんな動きしたら死んでまう、マジで。

 では以前に、ちょっと気になっていたけど忘れかけていることをしよう。そう考えたわけで。

「ホントは山田孝之さん主演の『あの映画』が観たいんだけどなあ」

 とか考えつつ。それは後の楽しみにしよう。

 じゃあねえ、なにかしながらでも。なんとなく流しておけばストーリーが、わかる感じのがいいなー。とにかく病み上がりなので、難しく突き詰めたり論理的に筋道立てたりしなくてもかまわんようなのがいいなあ。

 そう思ってチョイスしたのは、2016年公開作品「この世界の片隅に」でした。

 終戦の日から二日経った日付での、このチョイス。

 余談ですが。わたし、どうにもジブリ作品が苦手な人間でして。生理的にダメ。でもジブリ好きな人は否定しないし嫌いじゃない。作中に使われる曲も素敵なものばかりだと思う、けど、ストーリーとかキャラクターが「どん!」と目の前に出てくると顔を覆って避けちゃう感じ。

「この世界の……」にも、それっぽい匂いがしたら即、視聴を止めるつもりでいたんですが。なんだか最後まで一気に観てしまってました。

 それでなくても脚色された反戦映画とか反戦ナントカが非常に苦手な分野なんで。そんな人間が、よくまあ最後の最後まで二時間超の映画を観たなあ。

 ちなみに。原作が漫画だとか映画の感想などの予備知識が、一切ない状態での鑑賞でした。


 女性の主人公は、すずさん。昭和九年から、ストーリーがはじまる(後で、あらためて調べてみたんですけど映画アニメーション版は昭和八年のクリスマスシーズンからのようです)。

 ちいさい頃に「この前、こんなことがあったんだよ」って。妹にせがまれていたのかな、人さらいの背中にある大きな籠のなかに「ぽいっ」と入れられる話を描いてあげる。

 その籠の中には先客がいた。膝を抱えている男の子が、後にすずさんの夫になる人だ。

 すずさんと未来の夫・周作さんが人さらいから逃亡する手法は、幻想的でいいなあと思った。お祖母ちゃんのお家に行って浴衣を着せてもらったり、西瓜を食べたり。兄妹と昼寝をしたりする光景も、なぜか胸の奥がキュッと痛くなった。

 ……ここまでで気になっていたのが、すず兄が暴力的なことだ。なにかというと、妹のすずに暴言を吐いて拳で殴りつける。両親はそんな兄に対して叱ることなど、まったくない。

 ちょっとでいいから諫めるくらいしようよ、親なんだからさ……。そう思ってしまって、そのあたりは全然まったく、気合い入れて観てない。

 正直言って「こんな暴力キャラが延々と出てくるストーリーだったら、イヤだな。次にすずさんが殴られるシーンがあったら、きっぱり観るの止めよう」と思っていたんだけど。いつのまにか兄は死亡退出していた。ちょっとラッキー。

 アウトレイジの類いの映画だったら、目上が目下にバイオレンスかます場面なんかは平気なの。ぜんぜっん平気。でも血縁関係(それも間柄が近ければ近いほど)で、上の立場が下の者に対して意図的に殴る蹴るは見たくないんですよ。

 個人的に「ひえええ」とビビりつつ、手に汗を握ったのは。小姑に当たる径子さんが出てくる場面ぜんぶです。はい。

 径子さんは娘を連れて実家に帰って来ているんだけど、すずさんがメチャクチャに気遣いしているのがよくわかる。昭和初期の価値観だものね、家の中での身分なんて最下位だもの、嫁なんて。けど径子さんは径子さんなりに、嫁に歩み寄って行こうとする。

 その情緒の「かたち」が濃やかに表現されていて、いいなあと思った。とはいえ、日常は少しずつ少しずつ不穏な要因が積み重なっていく。そう、物語の舞台は広島県呉市。すずさんの実家は、広島市内。

 ……観る側にとっても蓄積されていた不安要因が一気に爆発するのが、姪の晴美ちゃんと手をつないでいたときに遭遇するアレ。アレですよね?

 あのシーンの見せ方も、ただただ凄い……と思った。圧倒された。ああいう表現もいいんだ! と、素直に感じた。

(ここらへんは、すずさんと晴美ちゃんの親目線で観ていたから感じたことを率直に、尚且つ簡潔に書くのは難しい……)

 意識は一瞬消えて、弱く点滅しかける。散らばったままだ。真っ暗闇の中で、記憶だけがよみがえる。着物を裁断してもんぺに作り直そうと試みる。晴美ちゃんとつないでいた手が左手だったら、と考え直す。もしも、左手だったら自分が粉々になっていただろう。

 ――待って。

 目覚めると径子さんが激しく責めてくる。どうしようもない絶望が、それぞれの立場で交じり合う。

 すずさんの目が覚めたとき、彼女の世界が終わりを告げる。失くしてしまった右手の意味を問い続ける。原爆の閃光、爆風。

 ここまで歩きついた被爆者が、壁にもたれて座り込んで絶命している。おそらく広島市内から飛ばされてきた障子の枠内ひとつひとつに、今まで当たり前に過ごしていた様々な光景が浮かび上がる。

 このあたりの演出は、ざくざく心に突き刺さってきた。これでもかこれでもか! と悲惨さを訴えるでもなく、イデオロギーに溺れることもなく。淡々と「すずさんの世界」を教えてくれる。

 胸の芯から痛くなったのは、すずさんが家の中に落ちて来た焼夷弾を消そうとするところ。それと、消火のために水浸しになった布団を径子さんと、お義母さん(径子さんと、お義母さん、ですよね?)が、絞っているところ。

 焼夷弾をみずからが消そうとしたときには、既に「ぼんやりした空想好きな、いつも誰にでも笑っている」やさしいすずさんは亡くなっていたのだろう。

 周作さんとすずさん夫妻は、広島市内で女の子に懐かれる。原爆で母親を亡くした幼い子供を、ふたりは呉の家へと連れて行く。

 その子にお裁縫を教えて、作ったワンピースを径子さんが着ている。余った生地を使ったお洋服を、すずさんも、その子も着ているところも泣いてしまった。いのちを次世代に繋ぐ……という暗喩だろうけれども、こういうのも「これでもかーーーー! ワイの悲しみ、観とけコラー!!!!」的な、あざとさがなくて好きです個人的に。

 あとね。

「あっ」と声が出たのは、最後の最後ですね。エンドロールじゃなくて。本編最後の方ね。

 相生橋に佇む、周作さんとすずさん。ふたりの後ろを、人さらいが通り過ぎる。夫婦二人ともが「あれは!」と顔を向けると、人さらいの背中にある籠から緑色のワニがひょっこり出てくる。ワニは頭にピンクのリボンを付けていてね。籠の中から周作さんとすずさんに笑って、大きく手を振るんだよね。

 なぜワニ。

 ……ともあれ、奇妙な爽快感があった映画でございました。しかし、なんでワニなんだろう。




※何回か、見直してみたいです!






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