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姉妹の愚痴〜心身障害者への理解を〜  作者: 七宝しゃこ
もう疲れた、もう眠りたい、もう諦めたい
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パニック障害に、涙にスマホ

 最近睡眠が良くない。

 ストレスが増しているのか眠いからと睡眠導入剤を飲んで、意識が半分飛んでも、満腹なのにごそごそ冷蔵庫を漁る。

 朝起きると食べた残骸に涙する。

 ちゃんと寝たつもりなのに……。


 今日も涙を拭き、いつものようにスマホを確認し硬直した。


『LINEに〇〇さんがお友達に登録されました』


 えっ……。


画面に書かれていた文字に手が震える。


 ちょっと待って……。

 前にタブレットでLINEしていたけれど、そっちは削除してる。

 スマホのは一応、なろうが縁で知り合った方とLINEのやり取りをしたけれど、あとは近所のスーパーの特売の情報とかくらいで……使っていないも同然で……友達登録になるという意味も、わからない程なのに……。

 それに……、


「なんでぇ……」


泣きじゃくる。


「もう、もう、忘れて欲しかったのに……忘れたかったのに……」


 その名前は、私のパニック障害が悪化し、不眠症も酷くなった……主治医に距離を置きなさいと言われた相手……。

 ぐるぐると……薬を飲んでいないので目が回る。


 どうしよう……。

 どうしよう。

 連絡が来たら……。

 ううん、その前にスマホの番号を変えようか……。

 LINEを削除したほうがいいのかも。

 でも、知人の連絡先を消すのはできない。


「どうしよう……どうしよう……」


 呟きながら病院に行こうと準備をする。

 薬を飲んで、動けるようになってから病院に向かう。

 でも、一人で行けない。

 テディベアを抱きしめて、玄関に向かう。


 扉が、ぬりかべのように立ち塞がるような感じがした。

 元々敏感で、外の音や隣、上の音に怯える私は、普段外に出るという行動すら、かなりのパワーを消耗する。

 特に今日のように衝撃を受けると、出て行けなくなる。

 もう、三度も引きこもった。

 今日引きこもってしまえば、薬が無くなり、また病気が悪化するかもしれない。


 震える手で鍵を開け、チェーンを外し、扉を開けた。

 そして、病院に向かった。


 バスの停留所まで、向かう時に思い出す。


「さ、サングラスに帽子……マスク忘れた……ど、どうしよう、どうしよう……」


 うろたえるものの、今更戻るのも人が多い。

 バス停にたどり着き、そして涙目でベンチに座る。

 バスの時刻はあと8分。

 脂汗と涙をぬぐい、緑茶ではなく麦茶を飲む。

 カフェインは興奮剤のため、なるべく控えているが、パニックの時に服用するとますます悪化しそうだったから。


 テディベアの頭を撫で、目を少し閉じ、乱れた息を整える。


 大丈夫、大丈夫……。


 バスが来たので乗り、病院に行くと相談。

 すると、


「ブロックしなさい」

「で、でも、向こうが怒ったら……」

「距離を置きなさいと私も含め、先生方に言われたんでしょう?その連絡で、貴方の病気が良くなることはないよ。ますます悪化する。その人との距離を置きなさい。今ですら青い顔で、泣きながら来たのにどうするの」

「……は、はい……でも、ブロック方法が……」

「うちの看護師に聞きなさい。……君は頑張っているよ。余計なものを背負うことはないよ」


 先生の言葉に涙がまた溢れる。

 泣きながら、仲のいい看護師さんにブロックの方法などを聞いた。

 怖くて看護師さんに頼んで操作をして貰った。

 これで、もう一度、自分の心が平穏になるのか……。

 ブロックした相手の名前を忘れたいと電源を切った。


 さようなら……。

 もう、道は一つにならない。

 ごめんなさい……さようなら。

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