ソラを見上げて
いつもとは雰囲気の違う作風にチャレンジ。
沈みつつある夕日に向かうアスファルトの黒い道がキラキラと輝く。
パラパラとはじけるソラの雫が輝いている。
僕はユエと一緒に、ヒカリの先に向かう。
下ろしたての靴は、少しかかとが痛い。
でも、僕たちを呼んでいるような道の先は、背中の重苦しいカコよりも明るいものじゃないかなと思う。
「ねぇ。どこに行くのさ」
隣を歩くユエは、不満げにウサギ耳の帽子を触りながら僕を見上げる。
「さぁ……僕は道の先に行きたいだけだよ」
「道って、ただのアスファルトの道路だろ」
「そうだねぇ……」
「傘もささずに何考えてんだか」
やれやれと言いたげに自分のウサギ耳から雨粒を飛ばす。
キラキラとヒカリが散った。
「……夢を探しに行きたいんだ。僕の夢……どこかで迷子になってるみたいだから……」
「夢?」
「……うん、僕の夢……どこに行ったんだろうね」
僕は迷っている。
折角見つけた夢は、背中を向けた過去には見つからなかった。
元々物をなくす癖があり、その度にビービーと泣いた僕は、
「無くなったものは、きっとイタズラ好きな妖精さんが家にいて、隠しているんだよ。大丈夫。すぐに見つかるから」
と頭を撫でてもらった。
その人の面影はもう忘れたけれど、僕には、きっとカコには夢はないと思った。
過去には後悔しかない……悲しみ、苦しみ、怒り……フの感情だけ。
だから僕は過去と決別する。
未来を見る……。
「あ……」
ふと見ると、道の途中から虹の橋が架かっていた。
「……ミライに行こうかな……虹の先には海が見えるから、そこに降りようか」
「溺れるなよ」
「泳がないよ。泳ぐならソラを泳ぎたい」
「まーた、夢物語」
ユエに笑いかけ、手を引く。
「虹が消えちゃうよ。行こうよ」
ミライは僕の夢を守ってくれてる。
心も身体も弱っている僕を、無理はするなと笑っている。
さようなら……弱い僕。
明日は少し強くなった僕が笑えますように……。




