帝国END
「オレは貧乳に興味はない。女は胸の大きさと、頭のよさだろう?」
面白いことを言ってくれるのは、探りを入れたかの国の王子。そこまで正面きって胸のことを言われたのは初めてだ。まあ、確かにスタイルは女らしいだろう。性格が自覚できるほどに暗いが。
姉に勝っている数少ないところだ。姉に心酔している攻略対象者達でさえ、ドレス姿のときは目で追っているのだ。
かの帝国のやる気のない王子が帰還した。
戦好きで巨乳好きを公言する彼が妻として生涯一人だけを娶った。彼を満足させるほどの見事な肢体を持つ彼女は、気品があり、かといって堅すぎることもない柔軟性を持っていた。何より、彼女は努力をする人間を重用した。結果が出なければいけないが、そういった人間が周囲に広げるよい連鎖を好ましく感じていたのだ。
努力しなくても出来ることもあるけれど、努力をしなくてはよりよい明日は自分で手に入れられませんから。と彼女は言う。
彼女は臣下や国民から見ても、完璧な王妃であった。ただ、惜しいのはその気品のある口元はきつく結ばれることが多く、他国からの輿入れに環境になれないせいだとみんなが必死で彼女の心を安心できるように工夫した。
さらに、夫の結婚しても続く執拗な求愛に辟易しながらも、少しずつ笑顔を見せるようになった。
彼女は常に口にしていた。夫は有言実行の人だと。どんなに酷くても見放す人ではないのだと。
「女は笑ってるほうがいいだろ」
ぶっきらぼうに珍しく皇帝が呟き。そのまさか、部下たちは信じられない上司が照れているという事実を飲み込みきれずにのた打ち回ったと伝説が残るほどだ。
冷酷非道の帝国としての評判は彼女ののろけとともに収束し、永年帝国といわれるようになった。
帝国から幾つか国をはさんだ国では、どの歯車がぬけたのか、経済が停滞し、急落を辿ることになった。




