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終章 終わりの少女

 終章 終わりの少女


 消えていた意識が蘇った。

 薄い意識の中で捉えたモノはただの暗闇。

 どんな光も捉えて離さない、ブラックホールのように絶望的なまでの深淵。

 光なんていうモノが元から存在していないかのように冷たく、淋しい暗闇。

 暗黒の中に唯一人、絵里が取り残されていた。

 寝そべっていた躰を起こし、何処かへ向かおうと立ちあがる。

 足の裏には冷たい地面の感覚が伝わってくる。

 二歩、三歩、歩いた時、腕に何か妙な違和感を感じさせるモノが刺さっていたので、引き抜き、歩く。

 鋭い痛み、血が流れるのを感じる。

 それでも動かしていた脚を止める事はしない。

 暗黒の壁に触れながら、黒しか存在しない世界の中を導かれるようにして歩き続ける。

 階段に似た段差を登り、ドアノブのようなものを捻り、開け更に進む。

 すると、吹き抜けた風に髪がなびいた。

 どことなく薬臭い世界から、心地の良いモノへと一変した。

 風の音だけが耳を伝う暗黒の世界、だが、その世界の中に別の音が生まれ、絵里の耳へと届いた。

 何処かで聞いた事のある音。

 とても懐かしくて温かい音。

 音のする方へと躰を向けてみた。

 すると、そこには二人の影が合った。

「絵里」

「えりっち」

 二つの影が語り掛ける。

「ナナ、ユミ」

 何だかとても懐かしく聞こえてしまう二人の聲、それに引かれるようにして影の方へと歩き始める。

 ざらついた地面を踏みしめながら、腰ほどの高さのある障害物を乗り越えた。

 吹き抜ける風が更に強いモノとなり、心地よかった。

 もう、手を伸ばせば届く程すぐ近くに在る二人の影。

 あと、一歩踏み出せば彼女たちの元へと迎えられる。

 そして、その一歩を踏み出した刹那。

 世界が翻った。

 全身を包む浮遊感、頭を下にして、何処かへと下り続ける。

 そして、


 ――ドンッ、


 土嚢を地面に思い切り打ちつけた時のように、重量感のあるものがアスファルトに叩きつけられた。

 どれが痛みなのかわからない程の痛みが全身を駆け巡った。

 聲を上げようとしてみるが、喉は開いてくれない。

 躰を動かそうとしてみるが、指先すら動かせない。

 徐々に消え入る意識、そこに二人分の声が降ってきた。

「「いつまでも、いっしょでしょ?」」

 いつか交わした約束、その言葉に胸中で答える。

〝いつまでも、いっしょだよ〟

 何もない暗闇、それが更なる闇へと包まれる。

 もう何も感じる事の敵わない、死の闇へ。

 頭部から紅い華を咲かせた、絵里の元に。

 病院の屋上から飛び降りた、絵里の元に。

 優しくも残酷な幕が下りたのだった。

 …………


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