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篝(かがり)  作者: 涼玉兎
四 炬火(たいまつ)
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28/29

定めた心

「朝桐殿・・・よう、ご無事でいてくださいました」

 露香は涙ぐんだ目で、夫の近侍を見つめた。隣で、景雪が、二人を見守っている。

「許せとは申しませぬ。さぞ、お怨みのことでしょう」

「お方様」

 八雲は、困ったように微笑した。

「私は、良いのです。こうして、生き延びております。・・・護りたかった者も、なんとか、護り切ることが出来ました」

 濡れた瞳が、見開かれる。

「・・・朝桐殿は、人が好すぎます」

 八雲と景雪が、同時に苦笑する。

 口元を引き締め、八雲は静かに、露香御前を見返した。

「お方様。・・・私を襲った者たちは、皆、命を落としました。術者の男も、獣を縛った報いを受け、命を落としました」

 露香は瞑目し、頷いた。

「承知しております。・・・わたくしの業は、深い」

 再び開かれた目には、真摯な光が灯っていた。

「朝桐殿。どれほどの時がかかるとも知れませぬが、わたくしは、苑枝と金門の仲を、善きものにしていきたい。そのために、尽力したいと思います。―――樟井景雪の、妻として」

「まあ、三男と傍流の姫では、出来ることなど限られようがな。こういうことは、少しずつだ」

 景雪が、闊達に笑う。

「八雲。よくやってくれた。・・・本当に、よくやってくれた。ありがとう」

「もったいないお言葉です、景雪様」



    *****



 向かい合って正座する息子を見据える。灯台の火が、端正な顔を照らし出している。良い面構えになってきたな―――と、頭の隅で、ちらと思う。常盤は、ゆっくりと口を開いた。

「覚悟は決まったか」

「はい」

 八雲が背筋を伸ばした。

「継ぎませぬ」

「なに?」

 潔く言い切られ、常盤は目を見開く。

「お許しください、父上。私は、家は継ぎませぬ」

 八雲は、うっすらと微笑した。

「ですから、隠居なさるのは、竜樹が元服するまで、待っていただけませんか」

 息子の思惑を悟って、常盤は声を上げて笑った。この清々しい目をした若者が、自分の子かと思うと、心が朗らかに広がっていく気がした。

 ・・・八雲の目は、常盤に、懐かしい人を思い起こさせる。

(我らの息子は、なかなか面白い男に育っておるぞ、美鶴(みつる)

 左様でございますね、と笑う妻の声が、聞こえるようだった。

「お前を頼りにするであろうな。支えてやってくれ」

「はい。・・・それから、父上。もうひとつ」

「何だ。申せ」

「妻を娶りたいのですが」


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