プロローグ~新たなる歩みへ~
「ねぇ、平和のために私は戦う、だけど私だけじゃ力不足なの… 実現するには、親友の貴方の力が必要なの。」
久しく懐かしい声で言われたその言葉には、はっきりとした意思が感じられた。
その意思を親友、川澄九狐はしかと受け止めた。
だが不安な点もいくつかある…彼女はそういう人だった。だから口を開く…。
「巧ちゃん、わかった 協力する… で、具体的なプランは?」
「…無い」
聞き間違いだろうか?その言葉に疑問を持ちもう一度続ける。
「えっと、なんて言ったの?」
「無いっ!そのまま突き進む!!目の前の壁はその時打ち崩すのよ!!」
多少考えていないなとも思いつつも、そんな言葉や性格、考え方も懐かしく思う九狐。
(やはりいつもと変わらないな…この人は)と心の中で思う。だからこうやって私だって惹かれ突き動かされる。
こういう人、昔からこういう人だった。私を知らない世界へ連れて行ってくれる。一人では出て行く勇気もない私を動かす。彼女は。
私は彼女の手を取り強く握りしめる。
「わかりました…、了承します。」
そして二人で歩み始める。この先どんな苦難も悲しみが待ち受けているのかもわからない彼女達はひたすら前に進んでいく。
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文乃宅での事…
「ふ……のちゃん……みの…ん!……文乃ちゃんてば!!!」
ダレですか、私の安眠を妨害する人は…もう……Zzz
「文乃ちゃんってば!!ねぇ、何かすること無いの?!」
「う~ん、これが依頼が来ないから無いんだよね……Zzz」
眠気の限界です…無理、寝ちゃお…。
「そこっ!寝ない!!」
他愛もなく繰り返される、親友同士の会話。拠点となるのは私の家。別の拠点を作りたいがそこまで階級が上がっていないため支援金も出ない。
平和のために戦うと私は言った、しかしいざとなると平和のためになる事って何なのだろうと考えてしまう。
住民を脅かす人を退治撤退?迷子捜索?町の清掃?人生相談? 実際そんなに目に見えて浮かばないものである。
発足したのは良いがこれといって依頼や仕事が流れてこない…人員が少ないせいか回ってくる仕事の優先度が低いらしい…。
「文乃ちゃん~何かしようよぉ。なにか…」
こう今私の体を揺する人が私の親友川澄九狐
いつも黒のローブを身にまとう銀短髪の女の子、同姓でも惚れ惚れする体つき…
頭脳も優秀、身のこなしなども手慣れているもの…、まぁ私と同じ彼処で育ったのだから。
ただ昔と同じで若干物事に対しては悲観的、自分で動こうとはとうていしない…。
私は竜騎文乃ごく一般的で普通の女の人。
私は普段服(セーター、フリルスカート)のままの金長髪、頭脳は普通…、身のこなしは…九狐より遙かに良いはず。何故かね。
どうして自分がこんな身のこなしができるのか自分自身でもわからない。幼い頃に何かを習ったか?そんな記憶はない。
ただ、そういう動きができると確信したのは、あの事件…、あの事件のせいで九狐と一回別れてしまったのだから。忘れられるはずはない。
あの事件のことは思い出したくもない。絶対に、だけど今こう平和のためにと志すのはあの事件があったからだ。
だが、そう志すのも空しく、仕事が入ってこない。
「することといっても…ねぇ?」
会話の間を挟むようにテレビの音声が耳に入る。腕時計で時刻を見るとニュースの時間か、テレビ画面に大きく映し出されたのは石タイルにこびり付いた大量の血と『またもや角谷公園で殺人、犯人目撃証言あらず』というテロップ。
普通の量じゃない…何人もの血が流れているなと即座に察す。こういう光景はあの事件のことを思い出してしまうからあまり見たくない。
『男子高校生4名が昨夜、公園で何者かに複数回刺される、斬りつけられるなどされ病院へ搬送されましたが出血多量でまもなく死亡しました…その男子高校生は…』
そのテレビの画面やキャスターの声を聞き九狐は口を開く。
「物騒な事件だね…最近公園でこういう関係多いよね…仕事仕事って探してるけどこれはさすがに…」
「…これだっ!!!」
「えっ!」
意外な横やりに九狐は驚く。さすがに九狐はこれには応じられない。危険すぎると察知する。
「これは無理だって。これ最近流行の【角谷公園の殺人鬼】でしょ?。私たちが手を出したって勝てないって。」
【角谷公園の殺人鬼】
最近この公園で無差別な殺人が行われていると聞く。それもいつもじゃなく、気まぐれのように。だから余計タチが悪い、犯人を捕まえるのにも苦労する。
ある程度予測しなくてはならない、が実際に殺人を犯しているところは誰にも見られていない。この犯人に何人犠牲になったか、両手どころか両足の指すら数えるのに足りない。
一度も見られていないというのが妙だ、なぜこんなにも人が殺されているのに誰も見ていない。
普通は被害者が声を上げて人が集まって逃げていく犯人の様子がわかるはず。
複数人の事件もある。そうなると一人犠牲になるのに他の人がいて声を上げるはず。
なのに犯行時間時、その公園の近くにいた人に話を聞くと『声など上げていなかった』と皆声をそろえて言うらしい。
十中八九、嘘ではないだろう。皆がその犯人の手回しな訳がない。
ではなぜそんな手際よく且つ声を上げない間に…、方法はなくはない。
都市伝説化しているため興味を持って行っている人たちもいるらしい。そういう人たちも犠牲になっていると報道されていたのも思い出した。
文乃は戸棚に向かってモノを探す。
「言ったでしょう。突き進む、目の前の壁はその時打ち崩すのよ。私たちだって丸腰な訳ではないのだからね。」
といいつつ戸棚から双剣を取りだし小さく振る。
私の所有している双剣は銀製、あの事件でなくなったある人の形見。手入れもしているので当時の輝きを失ってはいない。
これであの事件を乗り切った、いや、無理矢理切り開いた。良くも悪くも馴染みのある双剣。
私たちが拠点としている町、美英《みはな》町は一部の人たちに武装が許可されている。ただし本当にごく一部の役職しか権利がない。
[警察]、[治安管理集団]…その他諸々あるけど割愛。
私と九狐は一応[治安管理集団]、二人でも立派な集団です。そういう役職に位置するので武装は許可されている。
ただしあくまで自衛手段とする、武装したモノで殺人などをすれば当然捕まる。役職でない者が武装しても捕まる。
「絶対被疑者は殺さない。それが私たちのモットーでもあるからね。」
「本来の武装の定義に反してるけどね。本来人を傷つける目的のモノだよね。」
本来武器は人を傷つけたり殺すモノ。使い方を誤ればそういう事態も起こす。
「それを言っちゃおしまいでしょ。九狐だって日本刀持ってるくせに。」
双剣をくるくる手のひらで回し鞘へ戻す文乃。それと入れ替わるように九狐が日本刀を取り出す。
「だって武装は任意でしょ?仕方ないじゃん…持っていた方が何かの役に立つと思うもん。本当は実力行使せずとも相手が降伏するのが一番良いんだけどさ…」
「そんなのが100%成功するようなら武装許可されてないよ。」
「むぅ…」
一見普通の仕込み刀に見えるが実は業物らしい九狐の日本刀。仕込み刀な為日本刀独特のあのちょっとした反りが無くまっすぐな刀身。どこで手に入れたのかは教えてくれない。ケチ…。
「さて、サクッと殺人鬼さんをやっつけてきましょうや、いや捕縛ね、縛りプレイ。」
「そんなに生やさしい相手じゃないと思うなぁ…絶対」
そして二人は武装し治安管理集団である証票を掲げ、事件のあった公園へ向かっていく…
Cypher《サイファー》という治安管理集団名を掲げ…
初投稿 いや文章が()
今回は挿絵なしでいきました。次回から色ありか白黒をいれていこうと思います。
絵が上手かは知らない!!
はい 主要メンバー二人の登場 文乃と九狐 親友同士ですよ
前半の話はまた追々 なぜ名前が違うのかとかもね。